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チリ新大統領、「国境の壁」建設に着手、不法移民対策


カスト氏は16日、北部のペルー国境に近い砂漠地帯を訪れ、「国境シールド」と名付けた計画の開始を宣言した。
2026年3月16日/チリ北部、「国境の壁」の建設現場(AP通信)

南米チリで先週就任したホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast)大統領が不法移民対策の柱として掲げてきた国境障壁の建設に着手した。就任から1週間足らずという異例の早さでの工事着工となり、同政権の強硬な移民政策を象徴する動きといえる。

カスト氏は16日、北部のペルー国境に近い砂漠地帯を訪れ、「国境シールド」と名付けた計画の開始を宣言した。この計画は溝やフェンスなどの物理的障壁を設けるほか、ドローンや軍による監視を組み合わせ、不法入国や麻薬取引、組織犯罪の流入を阻止することを目的としている。現地ではすでに重機が投入され、砂漠地帯に溝を掘る作業が始まっているが、現時点ではブルドーザー数台による小規模な作業にとどまっている。

それでもカスト氏はこの着工を「チリにとっての重要な一歩」と強調し、「不法移民や犯罪に対して明確で具体的な措置を取る」と述べ、遅滞なく計画を進める姿勢を示した。また就任直後から大統領権限を用いて複数の政令を発出し、国境警備の強化や不法入国者の強制送還の加速にも乗り出している。

背景には近年の移民増加と治安不安の高まりがある。チリでは2017年から2024年にかけて外国人居住者が倍増し、30万人以上の不法滞在者が居住すると推定される。その多くは政治・経済危機を逃れたベネズエラ出身者であるが、一部では外国系犯罪組織の流入も指摘され、誘拐やカージャックなど従来少なかった犯罪の増加が国民の不安を招いている。

カスト政権の強硬策はトランプ米政権の移民政策とも比較されている。実際、カスト氏はトランプ(Donald Trump)大統領と政治的に近い立場を取り、国境管理の強化を国家安全保障の中核に据えてきた。

今回の措置は1990年の民主化以降で最も右傾化した政権の誕生を象徴する政策でもある。カスト氏は治安回復と移民抑制を最優先課題に掲げ、国境障壁の建設はその象徴的政策と位置付けられる。一方で、人道面や実効性を巡っては国内外で議論も予想され、今後の進展が注目される。

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