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チリ、ラテンアメリカ向けオープンソースAIモデル「Latam-GPT」を発表

Latam-GPTは国立人工知能センター(CENIA)が8カ国以上の機関や大学、研究機関と連携して2年以上かけて開発した。
南米チリ、首都サンディアゴ(Getty Images)

チリ政府は10日、ラテンアメリカおよびカリブ海地域向けに開発したオープンソースの人工知能(AI)言語モデル「Latam-GPT」を正式に発表した。Latam-GPTは米欧中心の既存AIモデルでは十分に反映されない地域の文化や言語的多様性を取り入れたAIとして開発され、地域の技術的主権と応用力強化を目指すものだ。

Latam-GPTは国立人工知能センター(CENIA)が8カ国以上の機関や大学、研究機関と連携して2年以上かけて開発した。モデルはラテンアメリカのデータを基にトレーニングされており、スペイン語とポルトガル語を主要言語としてサポートするほか、将来的には先住民族の言語も組み込む予定である。トレーニングに用いられたデータ量は8テラバイト以上に上り、地域に根差した情報を反映させることで既存のAIシステムに見られる文化的偏りを軽減する狙いがある。

このプロジェクトは米国や欧州で開発されたAIモデルが英語データを中心に構築されているのに対し、ラテンアメリカ固有の社会的・文化的文脈を十分に捉えられていないとの批判を背景としている。開発者らは地域内の多様な言語表現や文化的ニュアンスをAIが理解することが不可欠だとしており、Latam-GPTはその解決策の一つだと説明している。

Latam-GPTは商用の大規模AIモデルと直接競合することを主目的としていない。むしろ地域内の企業や公共機関、研究機関がローカルニーズに応じたアプリケーションを開発できるよう、オープンな基盤として提供される点が特徴だ。たとえば、地方自治体のデジタルサービスや病院の業務効率化、地域固有のカスタマーサービスなど、地域社会の課題解決に直結するツールとして活用される可能性がある。

資金面では、主にCENIAとラテンアメリカ・カリブ開発銀行(CAF)からの支援を受けて進められ、初期段階の開発には約55万ドルが投入された。Latam-GPTはクラウド上でトレーニングされた後、チリ北部に新設された450万ドル規模のスーパーコンピューターでのさらなる訓練も予定されている。こうした設備投資により、モデルの能力拡張と将来的な多言語対応が進められる見込みだ。

ボリッチ(Gabriel Boric)大統領はLatam-GPTについて、「ラテンアメリカが未来のデジタル経済において主導的な役割を果たすための重要なステップ」と述べ、地域全体の技術的自立を強調した。また、「AIが地域社会の文化と価値を正確に反映することは、単に技術の問題ではなく、アイデンティティの問題だ」とコメントした。

専門家はLatam-GPTの公開が地域内のAIエコシステム育成に寄与すると指摘する一方で、技術的成熟度や持続的なデータ収集の仕組み、倫理的な利用ガイドラインの整備など、課題が残る点も指摘している。Latam-GPTがラテンアメリカにおけるAIの未来像をどこまで刷新できるかは、今後の応用事例の広がりや国際的な協力の進展が鍵を握る。

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