チリ新大統領が宣誓、民主化後初の右派政権、中東情勢が市場を揺るがす中
カスト氏は選挙戦で規制緩和や財政支出の抑制、投資促進などを掲げ、経済成長を重視する政策を打ち出した。
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南米チリで10日、大塗料就任式が行われ、右派のホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast)大統領が宣誓した。カスト氏は好調な経済環境の中、昨年の大統領選を制したが、現在は中東情勢などを背景とする世界経済の混乱が市場を揺るがしており、新政権の経済運営にも不透明感が漂っている。
カスト氏は1966年生まれの弁護士、保守政党を率いている。昨年の大統領選決選投票では共産党系候補を破り、民主化後のチリで右派政権への再転換を象徴する勝利を収めた。任期は2030年までの4年間、左派のボリッチ(Gabriel Boric)前大統領から政権を引き継いだ。
カスト氏は選挙戦で規制緩和や財政支出の抑制、投資促進などを掲げ、経済成長を重視する政策を打ち出した。選挙当時のチリ経済は比較的安定し、銅やリチウムなど資源価格の上昇が成長の追い風となっていた。こうした状況の中で、同氏は市場寄りの経済政策を訴えて支持を拡大した。
しかし、就任のタイミングで世界経済は急速に変化している。中東での戦争拡大を背景に金融市場は大きく変動し、原油価格は一時、1バレル120ドル近くまで上昇した。エネルギー価格の高騰は世界的なインフレ圧力を強め、輸入エネルギーへの依存度が高いチリ経済にも影響が及ぶ可能性がある。
チリは世界有数の銅生産国で、リチウムの主要供給国でもあるため、国際商品市場の動向に大きく左右される経済構造を持つ。銅価格の上昇は政府歳入の増加につながる一方、資源価格の変動や世界市場の不安定化は通貨や株式市場に直接的な影響を与える。実際、これまで好調だったチリ通貨ペソや株式市場は、最近の世界的な不安定化を受けて下落圧力にさらされている。
政府には燃料価格の急騰を抑えるための燃料安定化基金(MEPCO)などの制度があるが、米イラン紛争の長期化によって輸送コストや物価が上昇すれば、インフレ圧力が一段と強まる可能性がある。金融機関の一部はすでにチリのインフレ見通しを上方修正し、経済政策のかじ取りは一層難しくなるとの見方が出ている。
また、カスト政権は議会で過半数を持たないため、政策実行には中道勢力や他党との協力が不可欠である。経済改革や財政政策を進めるには政治的調整も必要となり、政権の手腕が試される局面となる。
経済の上昇局面で選出された新大統領が、世界的な市場の動揺という逆風の中でどのように政策を進めるのか。資源輸出国であるチリの経済運営は国際市場の動向とともに今後の焦点となりそうだ。
