チリ次期大統領がエルサルバドルの巨大刑務所を視察
CECOTは中部テコルカに位置し、最大4万人を収容可能な世界でも類を見ない規模の刑務所として知られる。
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チリのホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast)次期大統領が30日、中米エルサルバドルを訪問し、同国の巨大刑務所「テロリスト監禁センター(CECOT)」を視察するとともに、ブケレ(Nayib Bukele)大統領と安全保障対策について協議する意向を示した。CECOTは重罪を犯したとされるギャングメンバーを収容する刑務所であり、国際的に人権侵害の懸念が指摘されている。
カスト氏は視察に先立ち、ブケレ政権の高官とともにヘリコプターで現地に到着した。自身のX(旧ツイッター)アカウントに投稿した写真では、収容施設への移動の様子を公開し、「チリは組織犯罪、麻薬取引、テロに強力に立ち向かうための優れたアイデアと提案を取り入れる必要がある」と述べた。
CECOTは中部テコルカに位置し、最大4万人を収容可能な世界でも類を見ない規模の刑務所として知られる。各収容棟は複数の囚人を収める大型ブロックで構成され、受刑者は面会や屋外活動がほとんど認められていないという。国際的な人権団体は拷問や厳しい収容条件、適正な法的手続きの欠如が常態化しているとして批判を強めている。
この視察とブケレ氏との協議は、チリ国内の治安不安の高まりを受けたものである。カスト氏は昨年の大統領選挙で治安対策の強化を公約に掲げ、有権者からの支持を集めて初当選を果たした。チリは比較的治安が安定している国として知られていたが、近年はギャング暴力や組織犯罪の増加が市民の不安を掻き立てている。こうした背景から、ブケレ氏が推進する強硬な治安政策に注目が集まっている。
ブケレ政権は2019年以降、ギャング対策を強化し、CECOTの建設や武力を伴う摘発を進めてきた。これにより殺人事件など主要犯罪の発生率が激減した一方で、国際人権団体からは「基本的人権の侵害が常態化している」と批判されている。エルサルバドルでは非常事態宣言の下、法的手続きの簡略化や大量逮捕が行われ、人権擁護団体の報告では収監後に多数の死者が出ているとの指摘もある。
カスト氏はブケレ氏と会談し、治安政策や刑務所管理の経験を共有する見込みだ。新政権の閣僚候補も同席し、エルサルバドルの手法がチリの治安政策にどの程度応用可能かについて意見交換する計画だという。カスト氏は「エルサルバドルのモデルをそのまま持ち込むわけではないが、参考になる部分を学びたい」と強調している。
一方で、今回の訪問は政治的にも論争を呼んでいる。人権団体や野党はCECOTの運営とブケレ政権の治安強化策が国際的な基準から逸脱しているとして強く批判。カスト氏がそのモデルを評価する姿勢を見せることに懸念を示している。また、中南米各国でも治安対策を巡る議論が高まっており、各国政府の対応は地域の政治動向に影響を及ぼしている。
カスト氏は3月に大統領に就任する予定、今回の訪問はその外交・安全保障戦略の一環と位置付けられる。エルサルバドルとの協力が今後どのような成果を生むか、地域の治安対策と人権保護の両立をどう図るかが注目される。
