チリ大統領選決選投票、右派のカスト氏が勝利、26年3月就任
選挙管理委員会によると、カスト氏の得票率は58%、左派のジャネット・ハラ前労働・社会保障相は42%であった。
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チリで12月14日に行われた大統領選決選投票の結果が確定し、右派のホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast、59歳)元下院議員の勝利が確定した。
選挙管理委員会によると、カスト氏の得票率は58%、左派のジャネット・ハラ(Jeannette Jara、51歳)前労働・社会保障相は42%であった。
ハラ氏は敗北を認め、選挙結果を受け入れた。カスト氏の勝利は1990年の軍事独裁後の民主化以降で最も右寄りの政権誕生を意味する。
カスト氏は共和党の指導者、長年にわたって強硬な保守路線を掲げてきた政治家である。今回の選挙戦では治安悪化への不安や移民問題を中心に訴え、刑務所の増設や治安部隊の強化、不法移民の大量送還など法と秩序の強化策を打ち出した。このような厳しい姿勢は都市部を中心に支持を集め、ハラ氏を支持する左派層を大きく上回る結果となった。
カスト氏は15日の声明で「安全なくして平和はない。平和なくして民主主義はない」と述べ、治安対策を最優先課題とする姿勢を改めて強調した。
支持者らは首都サンティアゴの繁華街に集まり、チリ国旗を振りながら新政権への期待を示した。一方、カスト氏自身も「すべてのチリ国民の大統領になる」と述べ、結束を訴える場面も見られた。
カスト氏は敬虔なカトリック教徒で、過去の選挙では物議を醸す社会政策が支持を妨げたこともあったが、今回は治安と移民対策が有権者の関心を引きつけた。選挙戦では中絶禁止や伝統的な家族観の支持、同性婚反対といった極めて保守的な立場は控えめにし、焦点を治安と経済に絞った戦略が功を奏したとの分析もある。
今回の選挙結果はラテンアメリカ全体で見られる政治潮流の変化を反映している。エクアドルやエルサルバドル、アルゼンチンなどでも右派・保守派への支持が強まる傾向があり、チリの結果はその流れを象徴するものと受け止められている。これらの国々では増加する犯罪や移民への不安が有権者の政治選好を左右しているとの共通点がある。
しかし、カスト氏には政権運営に向けた課題も残されている。共和党は議会で多数派を占めていないため、法案成立には他党との協力が不可欠である。特に過激な政策や社会保障の大幅な削減案は議会や市民の反発を招く可能性がある。経済政策に関しても、具体的な内容が示されておらず、投資家の間では一定の楽観ムードがあるものの、不透明感が漂っている。
カスト氏は2026年3月に就任予定。新政権の政策方針や国内外への影響が注目される。
