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チリの環境団体が生成AIに警鐘、環境に与える負担を可視化

今回の「人間チャットボット」の試みは、AIの利用が便利さだけでなく環境への影響という観点から再考されるべきだという問題提起として注目されている。
2024年6月19日/チリ、首都サンティアゴ(AP通信)

チリの首都サンティアゴ郊外にあるコミュニティで「Quili.AI」と名付けられたチャットボットを完全に「人間の力」だけで運用する試みが行われた。この取り組みは人工知能(AI)による応答が環境に与える負担を可視化し、より責任あるAI利用への議論を喚起することを目的としている。

プロジェクトは環境団体「Corporación NGEN」によって企画され、サンティアゴ近郊のコミュニティに集まった約50人の住民が12時間にわたって交代でチャットボットのオペレーターを務めた。世界各地から寄せられた回答依頼は2万5千件以上に及び、住民らは質問に答えたり、要求に応じて手描きのイラストを作成したりした。

例えば「雪の中で遊ぶナマケモノ」の絵を描くよう依頼されると、すぐにAIが生成するのではなく、スペイン語で“人間が回答しているので数分待ってほしい”という返信が送られ、その約10分後に手描きの可愛らしいナマケモノのスケッチが届けられたという。こうした体験を通じて、瞬時の応答を前提としたAIシステムとの違いが浮かび上がった。

主催者のロレナ・アンティマン(Lorena Antimán)氏は、「Quili.AIは決してAIそのものの価値を否定するものではない。大量の“カジュアルな質問”がAIシステムに送られることが、水や電力といった資源の消費につながっている現実を認識し、利用への責任感を持つべきだと考えている」と述べた。また、必ずしも瞬間的な答えを求める必要はなく、誰かの意見や文化的知識を共有することにも意味があると強調した。

このイベントが行われたコミュニティはデータセンターが集中する地域として知られる。クラウド大手のアマゾン、グーグル、マイクロソフトなどがこの周辺に施設を建設し、AIモデルの運用を支えるサーバーを稼働させている。こうしたデータセンターは大量の電力を必要とするだけでなく、冷却のために多量の水資源を消費することが問題視されている。

特にチリは10年以上にわたる深刻な干ばつに見舞われ、水資源の確保が社会的課題となっている。このためデータセンターの水使用量を巡る法的な争いも生じている。グーグルは同地域に2015年に開設したデータセンターが「ラテンアメリカで最もエネルギー効率が高い」と説明し、湿地の再生や灌漑プロジェクトへの投資を通じて環境負荷の軽減に取り組んでいると強調しているが、住民や環境保護団体からの懸念は根強い。

今回の「人間チャットボット」の試みは、AIの利用が便利さだけでなく環境への影響という観点から再考されるべきだという問題提起として注目されている。住民らは回答の遅さや不完全さを体験しながらも、責任ある技術利用のあり方について考える機会になったとしている。

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