経口型の減量薬GLP-1錠剤承認、食品業界で製品刷新の動き 米国
食品医薬品局(FDA)は今月下旬、ノボノルディスクのGLP-1減量薬「Wegovy」の錠剤を承認し、2026年1月からの実用化が見込まれている。
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米国で新たに経口型の減量薬GLP-1錠剤が承認されたことを受け、食品・外食産業が製品改革を加速させる動きが広がっている。食品医薬品局(FDA)は今月下旬、ノボノルディスクのGLP-1減量薬「Wegovy」の錠剤を承認し、2026年1月からの実用化が見込まれている。これにより、従来の注射型よりも価格が安く使いやすい錠剤の利用が拡大し、消費者の食習慣に影響を及ぼす可能性が高いと専門家は指摘している。
この承認を受けて、食品大手や外食チェーンは製品やメニューの見直しを進めつつある。コンアグラ・ブランドやネスレ、ダノンといった主要食品メーカーはタンパク質を強化した商品や「GLP-1フレンドリー」と称する表示を導入し、低カロリー・高タンパクの製品にシフトしている。また、ファーストフードやレストランでも小さめサイズやヘルシー志向のメニューを追加する動きが出ている。例えば、チポトレは高タンパクメニューを導入し、オリーブガーデンは小ポーションの提供を拡大している。こうした動きは消費者の嗜好変化を反映したものだと業界関係者は説明している。
この背景には、新たな経口GLP-1薬の普及による消費行動の変化予想がある。GLP-1薬は食欲を抑制し体重減少を促す効果があるため、利用者は高塩分・高脂肪・高糖分のスナックや清涼飲料などの消費を減らし、タンパク質や食物繊維が豊富な食品への需要が高まる可能性がある。実際、コーネル大学の研究では、現在GLP-1薬を使用している家庭でスーパーマーケットでの支出が約5%、外食での支出が約8%減少したとの結果が示されている。
アナリストは、これまで注射型のGLP-1治療薬が肥満治療の主流だったが、錠剤は注射を嫌う患者にも受け入れられやすく、安価であることから幅広い利用が期待されると述べている。ザックス・インベストメント・リサーチは、錠剤の承認を「画期的」と評し、食品企業は高タンパク・小ポーション・機能性食品といった革新的商品開発を進める必要があると指摘している。
米国では成人の約40%が肥満とされ、約12%が既にGLP-1薬を使用しているとの調査結果もある。このため、錠剤としての承認によって使用人口がさらに拡大すれば、食品需要や消費パターンに恒常的な変化が生じる可能性がある。特に、従来の高カロリー食品や甘味飲料の需要低迷が加速し、食品会社は市場の健康志向に応じた戦略再構築を迫られるとしている。
一方、食品業界はこの変化を機会ととらえ、健康志向の商品拡充やマーケティングの強化を進める動きも見られる。コンアグラは高タンパク冷凍食品の販売が競合商品より好調であると報告し、ダノンは高タンパクヨーグルトの売上が二桁成長を記録している。また、ネスレはGLP-1利用者向けの冷凍食シリーズを新たに市場投入しており、業界全体で製品ポジショニングの転換が進むとの見方が出ている。
