◎ベネズエラ危機の解決に向けた国際的な努力はロシアのウクライナ侵攻を受け、急加速した。
米財務省は26日、ベネズエラに対する経済制裁の一部を緩和すると発表した。
マドゥロ政権とグアイド(Juan Guaido)氏率いる野党は同日、国連主導の人道支援基金を設立する協定に署名し、国際社会を安堵させた。
双方の代表はメキシコシティで会談し、ベネズエラ国民を「地獄」から救い出すことで一致した。
米財務省は声明でこの協定を「民主主義を回復する重要なステップ」と呼び、米石油大手シェブロンにベネズエラにおける石油採掘事業のライセンスを再発行した。
ライセンスの有効期間は半年。協定が問題なく機能すれば、延長されるとみられる。米財務省は「マドゥロ政権が公約を満たすかどうかを評価する」と述べている。
世界最大の石油埋蔵量を誇るベネズエラの石油採掘が動き出せば、同国は世界の石油市場に再参入できるかもしれない。
ベネズエラ危機の解決に向けた国際的な努力はロシアのウクライナ侵攻を受け、急加速した。
米国、イギリス、カナダ、EUは共同声明で対ベネズエラ制裁を見直す意思を表明する一方、「政治犯の解放、報道の自由の尊重、司法・選挙機関の独立性の保証」を要求した。
米上院外交委員会も26日、「バイデン政権はゆっくりと動くべきだ」と声明を出した。「もしマドゥロがこの協定を利用して独裁体制を強化するのであれば、米国と国際パートナーは今回の緩和を全面的に打ち消すべきだ!」
マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領と野党が交渉のテーブルを離れてから1年以上になる。多くの専門家が今回の交渉と協定に楽観的な見方を示しているが、うまく機能するという保証はない。
西側と野党はマドゥロ政権の弾圧と経済・政治危機の解決を目指している。これが実現すれば、マドゥロ氏は自由で公正な選挙を保証しなければならなくなるだろう。
国連の基金は同国の電力網の安定化、教育インフラの改善、今年の洪水で被害を受けた被災地の支援などに充てられる予定だ。
国連は年初に公表したレポートの中で、「ベネズエラの貧困層約520万人の保健、教育、水、衛生、食料、その他を支援するためには7億9500万ドル(約1100億円)が必要」と見積もっていた。
トランプ(Donald Trump)前米大統領はベネズエラに対する経済制裁を強化し、マドゥロ政権がニューヨーク連邦準備銀行やその他の銀行に保有していた口座の管理権限をグアイド氏に付与した。
米国とEUを含む数十カ国は2018年の大統領選に立候補したグアイド氏をベネズエラの暫定大統領と認めている。
欧州の銀行もベネズエラの資産を凍結している。
国連によると、人道危機の影響でベネズエラ人約700万人が国を離れ、中南米諸国や米国に逃亡した。国内にとどまる市民の約75%が国際的な極貧の指標である1日1.90ドル未満で生活している。
ベネズエラの経済はマドゥロ氏が就任した2013年以降、右肩下がりで急降下し、2021年のGDPは10年前の2割以下に落ち込んだ。