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米国の2025年殺人件数、過去最大の落ち込みになる見通し

この予測は全米550の法執行機関の月次データを集計する「リアルタイム・クライム・インデックス」に基づくもので、同インデックスは保守的な見積もりでも16〜17%の減少が確認されれば過去最大の減少幅になるとしている。
パトライト(Getty Images)

米国では2025年、1年間における殺人件数の減少が過去最大となる見通しである。複数の都市の予備的な犯罪統計を分析した結果、2025年の殺人件数は前年比で約20%減少し、これまでで最大の落ち込みになる可能性が高いと専門家は指摘している。

この予測は全米550の法執行機関の月次データを集計する「リアルタイム・クライム・インデックス」に基づくもので、同インデックスは保守的な見積もりでも16〜17%の減少が確認されれば過去最大の減少幅になるとしている。2024年の15%減はそれまでの記録だったが、それを大幅に上回る見込みだ。

専門家はこの劇的な減少について、パンデミック以前の通常レベルに戻りつつあるとの見方を示している。リアルタイム・クライム・インデックスによると、2025年の全国の殺人件数は1960年から犯罪統計を収集しているFBI(連邦捜査局)の歴史上で最低水準となる可能性があるという。これは、2024年から続く犯罪全般の減少傾向の延長線上にあるとしている。

実際、2024年9月から2025年8月までのFBIの予備データでも、殺人は18%減少し、全暴力犯罪で9%、財産犯罪で12%の減少が確認されている。主要都市でも大幅な減少がみられ、デトロイト、フィラデルフィア、ボルチモアなどは1960年代以来の低水準となる見込みだ。また、ニューオーリンズでは年初に自動車突入テロ事件があったにもかかわらず、1970年以来の最低殺人件数となる可能性がある。サンフランシスコも1940年代以来の低水準を記録する見込みだ。

シカゴ警察の統計では、同市の殺人は2024年比で30%減少し、2021年の約800件からも49%の減少となっている。加えて、全国的に自動車窃盗が23%減、加重暴行が8%減といった犯罪全般の減少がみられている。

しかし、こうした統計が必ずしも国民の実感と一致しないとの声もある。マサチューセッツ州在住の女性は、ワシントンDCで息子を射殺事件で失った経験を引き合いに出し、「データの見方次第でどうにでもなる」と述べ、主要都市では依然として暴力犯罪が多いとの認識を示した。

また、2025年を通じて犯罪件数は減少したものの、質の高い暴力事件も発生している。ガン・バイオレンス・アーカイブによると、2025年は少なくとも4人以上の被害者を出した銃撃事件が前年比で22%減少しているものの、複数の死傷者を出した教会での銃撃事件や大学キャンパスでの銃乱射など衝撃的な事件が発生した。

警察関係者の中には、パンデミック期の犯罪増加の反動で現在の減少傾向が生じているとの見方を示す声もあり、ニューヨーク市警の元刑事は、社会が「通常の状態に戻りつつある」と指摘している。

FBIによる公式な年間犯罪レポートは2026年後半に公表される予定で、それまでの間は予備データに基づいた分析が中心となるが、専門家は2025年の大幅な殺人件数減少を注目すべき動向としている。

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