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米国でSNSのメンタルヘルス被害をめぐる裁判相次ぐ

この動きは、学校区や地方・州政府、そして数千の家族が、ソーシャルメディアの設計や運用が若年層の心身に重大な害を及ぼしているとして企業を訴えているもので、タバコやオピオイド危機を巡る過去の訴訟と類似する「法的転換点」として注目されている。
スマートフォンを操作する子供(Getty Images)

米国で主要なソーシャルメディア企業が、児童・青少年のメンタルヘルス被害を巡る法的責任を問われる裁判や訴訟の渦中にある。この動きは、学校区や地方・州政府、そして数千の家族が、ソーシャルメディアの設計や運用が若年層の心身に重大な害を及ぼしているとして企業を訴えているもので、タバコやオピオイド危機を巡る過去の訴訟と類似する「法的転換点」として注目されている。

代表例として、カリフォルニア州ロサンゼルスで進行中の訴訟がある。この裁判では、メタ(インスタグラムやフェイスブック運営)やユーチューブを傘下に持つグーグルが、意図的にプラットフォームを子ども向けに設計し、依存性を生み出した結果として若年ユーザーにうつ病や自殺念慮などの精神的ダメージをもたらしたと主張されている。原告は20歳の女性で、幼少期からSNSを使い続けたことが精神的な困難につながったと訴えている。

このケースは先行判断事例として、同様の数千件の訴訟の行方を左右しかねない重要な裁判と位置づけられている。原告側はSNSの無限スクロールや通知機能などが、若者の脳の発達に影響を及ぼし、依存と心の健康への悪影響を引き起こす仕組みになっていると批判している。

さらに、ニューメキシコ州でもメタが未成年者を「性的搾取」から十分に保護していないとして州政府が訴訟を起こしている。原告側は年齢確認の不備や危険人物の排除措置の不十分さを問題視しており、企業側により強力な利用者保護策の実施を求めている。

これらの裁判は、SNS企業が長年主張してきた「利用者が投稿する内容について責任を負わない」という米通信品位法230条の法的保護を揺るがす可能性があると専門家は指摘する。企業が被害に対して責任を問われれば、莫大な賠償金や広告収入の減少などの打撃を受ける可能性がある。

一方、SNS企業側は一貫して、自社製品が公式に精神的害を引き起こすとの科学的証明はないと反論している。裁判でメタの経営陣は、13歳未満の利用を認めていないと述べるなど安全対策を強調しているが、裁判では内部文書が子どものユーザーを重要なターゲットとする意図が示されてきた。

また、学校区が原告となる集団訴訟も進行中で、これらは夏以降にカリフォルニア州オークランドで審理される予定だ。教育関係者や弁護士はSNS利用が子どもの発達や生活に深刻な影響を及ぼし、学校現場や社会全体に負担を与えていると主張する。

こうした訴訟を背景に、立法面でもSNS規制を強化しようとする動きが各地で進んでいる。米国内外で16歳未満のSNS利用を禁止する法令が検討・施行されるなど、児童保護を重視する声は強まっている。ソーシャルメディア企業の責任をどこまで問えるかは、今後の司法判断と規制動向次第である。

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