「インスタに1日16時間費やし依存症に」企業の責任問う裁判 米国
原告側はSNS企業が「エンドレススクロール」や自動再生といったアルゴリズムを用いてユーザーの注意を引きつけ続ける仕組みを構築し、その結果として利用者の依存的な行動を助長していると主張している。
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米カリフォルニア州ロサンゼルスの裁判所で、1日に最大16時間にわたり写真共有アプリ「インスタグラム」を利用していたとされる女性の経験をめぐり、ソーシャルメディア企業が責任を負うべきかどうかが問われている。この裁判は米国で初めて主要SNS企業の設計や運営が精神的な被害を引き起こしたとして責任を問う重要な案件であり、判決は今後の同種の訴訟全般に影響を及ぼす可能性がある。
訴訟の原告となっているのは20歳の女性(3月14日時点)で、若年期からインスタグラムや動画共有サービスなどに多くの時間を費やした結果、うつ病や自傷行為、身体イメージへの強い不安など、深刻な精神的問題を抱えるようになったと主張している。彼女はこれらのサービスがユーザーを長時間使用させる機能を意図的に設計し、その設計が自身の精神的苦痛の原因だと訴えている。
原告側はSNS企業が「エンドレススクロール」や自動再生といったアルゴリズムを用いてユーザーの注意を引きつけ続ける仕組みを構築し、その結果として利用者の依存的な行動を助長していると主張している。この訴訟はIT大手メタのインスタだけでなく、同様の機能を持つ他のプラットフォームにも波及する可能性のある「先行指標となる代表的訴訟」の一つとされている。
企業側は原告の主張を否定している。メタは女性の精神的問題はソーシャルメディアの使用によるものだけではなく、家庭環境や個人的な背景も関係していると反論している。また、インスタを含むSNSは利用者の安全と健全な体験を提供するための取り組みを続けており、利用者が長時間使用することが直ちに「依存症」を意味するわけではないとの立場を示している。インスタの事業責任者は1日に16時間利用した事例について、「問題のある利用だが、依存症とは言えない」と述べている。
この裁判では陪審員がSNSの設計が原告の被害の「重大な原因」であるかどうかを判断することになる。陪審評決には多数派である9人以上の同意が必要で、企業が過失責任を負うと判断された場合には、損害賠償の額についても陪審が決定を下すことになる。原告側の弁護士は、この裁判で示される証拠と議論によって、企業が安全性のコストを内部化し、より安全な製品を提供するよう促すことを狙っている。
しかしSNSへの依存と精神的影響の関係は単純ではないとの指摘もある。教育・精神保健の専門家は、SNSに対する「依存」という表現自体が公式な診断基準として確立されているわけではなく、問題行動の背景には複数の要因が絡むことが多いと説明している。このため、陪審は単に利用時間の長さだけでなく、プラットフォームの設計がユーザー行動にどの程度影響を与したかを慎重に見極める必要がある。
この裁判は、米国でSNSをめぐる企業責任がどこまで問えるかを左右する試金石となる。何千件もの類似の訴訟が提起されているとも言われる中で、陪審の判断はIT企業のビジネスモデルや安全対策にも大きな影響を与える可能性がある。陪審員の評議は開始されており、結論が注目されている。
