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米ニューヨーク地下鉄のメトロカード終了へ、OMNYに完全移行

メトロカードは1994年に地下鉄のトークン(乗車用コイン)の代わりとして導入され、それまでの運賃支払い方法に大きな変化をもたらした。
米ニューヨーク市地下鉄のメトロカード(ABCニュース)

ニューヨーク市の地下鉄・バスで長年使われてきた磁気式の「メトロカード」は2025年12月31日をもって販売とチャージを終了し、新しいタップ式の運賃支払いシステム「OMNY」へ移行することになった。これにより、乗客はスマートフォンやクレジットカードなどを改札機にタッチするだけで運賃を支払うことが可能になる。OMNYは2019年に導入されており、90%を超える地下鉄・バス利用がこのタップ方式で行われているという。

メトロカードは1994年に地下鉄のトークン(乗車用コイン)の代わりとして導入され、それまでの運賃支払い方法に大きな変化をもたらした。導入時には利用者に正しくカードをスワイプする方法を周知するキャンペーンが行われたほか、記念デザインのカードが多数発行されるなど文化的な存在にもなっていた。

OMNYへ完全移行する理由として、MTA(メトロポリタン交通局)はメトロカード関連のコストを年間少なくとも2000万ドル節約できると説明している。新システムでは、1週間に12回運賃を支払うと以降の利用が無料になる「運賃上限制度」もあり、2026年1月に通常運賃が3ドルに引き上げられた場合でも、1週間の上限は35ドルになる予定だ。

移行は全体的に大きな混乱なく進んでいるが、一部の利用者からはアクセシビリティや使い勝手への不満・懸念の声も上がっている。例えば、70歳の男性は、OMNYカードのチャージ機が使いにくいとして、年配者を置き去りにするようだと不満を述べた。また別の利用者は、メトロカード時代のように残高が改札で表示されないことを惜しんでいる。

OMNYが他都市に先行するコンタクトレス運賃と同様の仕組みであることから、ロンドンやシンガポールといった大都市でも長年採用されている方式への追随であり、ニューヨークの公共交通が現代の利便性に対応していると評価する声もある。

一方で、批判としてはデータ収集や監視への懸念も指摘されている。利用者のタッチデータがどのように扱われるかについて透明性を求める声がある。また、OMNYカードやモバイル決済に抵抗を感じる人に対しては、「チャージ可能なOMNYカード」が引き続き提供され、既存のメトロカードも2026年まで使える仕組みになってはいるが、完全な切り替えに伴う心理的・操作面での負担は残っている。

このように、ニューヨーク市の公共交通は旧来のメトロカード時代を終え、新たなタップ式運賃システムへと完全に移行することになり、この変化は都市交通のデジタル化を象徴するものとなっている。

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