国際宇宙ステーションへの飛行は悪天候のため順延

27日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、悪天候により予定されていたスペースシャトル「スペースX(SpaceX)」の打ち上げを中止したと発表した。

二人の宇宙飛行士、ダグ・ハーレー氏とボブ・ベンケン氏をケネディ宇宙センターから国際宇宙ステーション(ISS)に送り込むミッションは厳しい大気条件を理由に、コントローラーからリフトオフする16分前にストップがかかった。

当局は30日(土曜日)が次の打ち上げ候補日になると示唆しており、その日も天候等の条件が整わない場合は、31日(日曜日)に変更されるものと思われる。

スペースXファルコン9(SpaceX - Falcon 9)のカプセル型宇宙船「クルードラゴン(Crew Dragon)」は、指定された発射予定時間から約1時間しか猶予を与えられていなかった。これは、その時間を逃せば、ISSにドッキングできないことを意味する。

先日、トランプ大統領とメラニア夫人、マイク・ペンス副大統領と妻のカレン氏が基地の様子を見学、歴史的な瞬間を期待していたが、NASAは早急に結果を求めず、発射直前であっても躊躇なく中止を決断した。

2003年2月1日、スペースシャトルコロンビアは、大気圏した直後、空中で粉々に吹き飛んだ。この事故で7人の勇敢な宇宙飛行士が命を落とした

コロンビアと宇宙飛行士を失った同事故により、アメリカおよびNASAの宇宙飛行計画の方向性は大きく変化した。

2004年1月14日、ジョージW・ブッシュ大統領はISS完成後、これまで使用してきたスペースシャトルを廃止し、宇宙飛行士を宇宙に送り出す新たな機体の製造を開始すると発表した。

翌年、NASAのマイク・グリフィンチーフは、ISSの完成により、低軌道上への日常的な飛行、宇宙飛行士や貨物の移送、宇宙の商業利用(宇宙旅行)がより身近なものになったと発表。さらに同氏は、「月からの帰還を達成するためには、ISSと資金が必要である」と述べ、NASAはその取り組みを管理する「Crew and Cargo Programmer Office(C3PO)」を設立した。これにより、スペースXとクルードラゴン、ISSの部品やその他の貨物製造などが実現することになった。

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スペースX

2008年、バラク・オバマ大統領が就任し、宇宙飛行計画の見直しを開始。結果、ブッシュ大統領の進めた”月に戻る計画”は中止された。

同国は、ISSに宇宙飛行士を送り込むためのプランとして、バイコヌール宇宙基地(カザフスタン共和国)から打ち上げられるスペースシャトル”ソユーズ”への搭乗を依頼、座席当たり数千万ドルをロシアに支払った

アメリカ議会はスペースシャトルの商業利用プログラムに懐疑的であり、十分な予算を拠出しなかった。しかし、NASAのチャールズ・ボルトンチーフは、プログラムを推し進め、予算の確保に成功した。

2014年、C3POに参加する企業は、スペースXとボーイングの2社に絞られた(削減された)。以降、2社はスペースシャトルの設計、改良、テストを繰り返す。2016年、スペースXがテスト中に発射台を破壊、2019年にはクルードラゴンが爆発事故を起こしたが、幸い負傷者は出なかった。

2016年の事故により、同年10月に予定されたいたスペースXの打ち上げ計画は遅延を余儀なくされた。しかし昨年、スペースXはクルーなしでの打ち上げに成功。自動化システムを使用し、クルードラゴンをISSにドッキングさせた。

NASAの管理者ジム・ブリデンスティン氏は、「民間部門の支援、新時代の乗務員輸送サービスが宇宙への新たな旅を実現させると確信している。スペースXは歴史を変えるはじめの一歩と言えるだろう」と述べた、

また同氏は、「私たちは低軌道空間が完全に商業化される未来を想定している。コスト低減、革新的な技術、完璧な安全性を確立させるために、民間部門および宇宙を目指す顧客と協力することになるだろう。そして、低軌道空間を超え、月に到達できるビジネスモデルを確立、実現させる」と述べた。

27日の発射計画は、コロナウイルスの感染予防対策を徹底したうえで進められた。ケネディ宇宙センター周辺での一般観覧は制限され、NASAもサイトに招くゲスト数を減らした。

通常、宇宙飛行士は飛行前に検疫を行う。NASAは、二人に接触する可能性のある者(スタッフ、医師、医療関係者など)を大幅に減らした。また、二人に接近する場合は誰であろうとマスク着用を必須とし、感染予防を徹底したという。

スペースXはトラブル等の大きな影響がなければ、30日、15:22(東部標準時)に発射される予定である。

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