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米国の反乱法、これまでの運用実態とトランプ大統領の意図

これは19世紀に制定された法律で、通常は国内で大規模な暴動や法執行の阻害が発生した場合に大統領が軍を出動させる例外的な権限を認めるものである。
2026年1月8日/米ミネソタ州ミネアポリス、抗議デモに備える警察官(ロイター通信)

トランプ(Donald Trump)大統領が国内で軍隊を動員する権限を与える「反乱法(Insurrection Act)」の活用を示唆している。これは19世紀に制定された法律で、通常は国内で大規模な暴動や法執行の阻害が発生した場合に大統領が軍を出動させる例外的な権限を認めるものである。トランプ氏は現在、ミネソタ州での抗議デモを理由にこの法律の発動を示唆しており、専門家の間で論争が巻き起こっている。

反乱法は1807年の現行法制定以前にも1792年の前身法を含め、州知事の要請がある場合や連邦法執行の阻害、または市民の権利が侵害されるような状況で大統領が軍を派遣できる根拠を与えてきた。通常は州政府が要請した場合に限られるが、合衆国憲法下では大統領が単独で発動の判断を下せるとされる。これにより、州知事が望まない場合でも軍の出動が可能となるが、法の趣旨はあくまで「最後の手段」とされている。

歴史的には反乱法が国内で軍を動員した例は複数存在する。南北戦争では南部州の反乱に対して連邦政府が軍を使用したほか、1960年代には公民権運動に関連する暴力や人種差別撤廃の過程で軍が介入した例もある。1992年のロサンゼルス暴動では州知事の要請を受けて軍が治安維持に当たった。この時は陪審員によるロドニー・キング事件の裁判結果に端を発した暴動が対象だった。いずれも州政府の要請があり、深刻な治安悪化が背景にあった。

一方で、今回トランプ氏が反乱法の発動を口にしているのは、ミネソタ州での抗議行動が州当局によって制御されていないと判断したためだと主張している。しかし当該の抗議はトランプ政権が派遣した移民税関捜査局(ICE)の活動に絡む銃撃事件であり、抗議の激化はその流れの中で起きているとの見方もある。これを受けて反乱法の適用条件が満たされているか、法の趣旨に合致するかを巡る議論が専門家の間で続いている。

法学者や憲法専門家の中には、トランプ氏の反乱法の活用は「前例のない法の悪用」との意見もある。専門家の一人は、反乱法は重大な治安の崩壊という極めて限定的な状況で使われるべきであり、今回のミネソタ州の抗議には当てはまらないと指摘する。また、裁判所は通常、大統領による軍の国内使用について一定の裁量を尊重する傾向がある一方、不当な行使があれば司法判断で是正される可能性も残されている。

トランプ氏はこれまでも反乱法に言及し、州知事や裁判所によって軍の展開が阻まれた場合に活用を示唆してきた。今回の発言は、政権の法執行や秩序維持に対する姿勢を象徴するものとして国内外で注目を集めている。

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