米ハワイ島、絶滅危惧種保護のため野良猫への餌やり禁止へ
この措置は固有種を保護するために導入されるもので、特に絶滅危惧種であるハワイ固有のガン「ネネ」の保護を主眼としている。
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米ハワイ州は来年1月から国有地での野良猫への餌やりを禁止する新しい法律を施行する。この措置は固有種を保護するために導入されるもので、特に絶滅危惧種であるハワイ固有のガン「ネネ」の保護を主眼としている。ネネは18世紀にヨーロッパ人により持ち込まれた捕食者によって脅威にさらされてきたハワイ独自の種である。
ハワイ島には正確な数は不明だが、数万匹にも及ぶと推定される野良猫が生息しており、捨てられた飼い猫とその子孫が人々によって餌を与えられながら密集した群れを形成している。これらの猫は固有種を直接捕食するだけでなく、餌を置くことで固有種を引き寄せて人間との接触を増やし、さらには猫の糞を介してトキソプラズマ症などの寄生虫を広める可能性があるという。トキソプラズマ症はハワイアンモンクアザラシや固有鳥類の死亡例と関連しており、生態系への影響が懸念されている。
この禁止措置には反対の声も強い。長年野良猫に餌を与えてきた住民は「ネネを守るために猫を根絶すべきだとは思わない。どちらも生き物だ」と述べ、餌やり禁止が猫を捕獲・不妊去勢する活動を妨げ、飢えた猫がより積極的に狩りをするようになると懸念している。反対者は禁止令が猫への餌やりを地下に追いやるだけで、問題解決にはならないとも主張している。
一方で州の野生生物学者は、ハワイの敏感な生態系では哺乳類捕食者に進化してこなかった多くの固有種が特に脆弱であると指摘し、猫への餌やりが固有種保護の妨げになるとの見解を示している。
禁止措置は議会で賛成多数で可決された。当局は猫への同情の気持ちもあるが、固有種保護の重要性を重視したとしている。違反者には最初の違反で最大50ドル、再犯では最大500ドルの罰金が科される可能性があるものの、その執行は警察の低優先事項となる見込みだという。
文化的背景もこの議論に影響を与えている。ハワイ文化では動物が先祖の霊(アウマクア)として扱われることがあり、動物に対する吉凶意識や尊敬の念が強い。文化保存の実践者は、不妊去勢のみでは猫問題は解決せず、猫を取り除くべきだと主張している。他方で地元住民には「野良猫も命ある存在であり、なぜネネだけが優先されるのか」という批判的な見解も根強く存在する。
