米国の空港から旅行者へ「そんなに早く来るな!」給与未払い問題で混雑続く
この背景には国土安全保障省(DHS)予算の行き詰まりから続く運輸保安局(TSA)の部分的な職員給与未払い状態がある。
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米国内の空港で3月下旬、これまで旅客者が飛行機に乗る前に長時間待つことを避けるため“早めの到着”を呼びかけてきた慣行に逆行する動きが出ている。混雑や安全検査の長い待ち列への不安から、出発数時間前に空港に到着する旅行者が増えた結果、ある空港では「早すぎる到着はかえって混雑を助長するだけだ。出発90分前で十分だ」とのメッセージを出し始めた。
この背景には国土安全保障省(DHS)予算の行き詰まりから続く運輸保安局(TSA)の部分的な職員給与未払い状態がある。DHSの予算が議会で承認されず、TSA職員が数週間にわたって給料を受け取れない事態となったため、多くの職員が職場を離れたり欠勤したりし、各空港での保安検査が例年にない混乱に陥っている。
この状況は「検査待ちが2時間を超える空港もある」というような記録的な待ち時間を生んでいる。テキサス州ヒューストンの空港では最大4時間以上の列がホームターミナルを埋め尽くし、ジョージア州アトランタの国際空港でも検査列がターミナルの外にまで伸びるなど深刻な状態が続いている。
こうした事態を受け、ある大規模旅客数を抱える空港では、数時間前に到着する旅行者が逆に検査場入口に混雑の“塊”を作り、ピーク時の列をさらに延ばしているとの指摘が出た。中でもオハイオ州コロンバスのジョン・グレン国際空港は、SNSを通じて旅行者に「90分前の到着で十分だ」と呼びかけ、過度に早い到着は検査場運用をかえって悪化させる可能性があると説明した。
この新たなメッセージは、多くの旅行者にとって混乱の要因ともなっている。過去数週間、各地の空港で何時間も続く保安検査待ちの映像や、搭乗を逃したという体験談が報じられ、旅客の不安が高まってきた。ボルチモア・ワシントン国際空港ではある女性が朝の便に乗るため数時間前に到着したにもかかわらず、検査列の整理が不十分で他の便の乗客と交錯した結果、搭乗時間に間に合わなかったとSNSに投稿するなど、実際の混乱の一端が伝えられている。
こうした問題に対し、航空業界や空港当局は「どの空港でも確実に長時間待つとは限らない」との見方を示す。ある空港では検査待ち時間が通常時と同程度に収まっているケースもあるため、旅客には各空港の待ち時間の最新情報を出発前に確認するよう呼びかけている。
この混乱はまた、かつてのコロンパンデミック初期に見られた“パニック買い”のような現象と並行して語られている。メディア報道で他空港の混雑状況が取り上げられると、実際に待ち時間が比較的短い空港でも旅行者が早く到着する“波”が起き、それがかえってボトルネックを生むという行動パターンが見られると専門家は指摘する。こうした心理は、個々の旅客が不確実性を避けたいという “人間の本能” から来るものだと分析されている。
専門家の中には、空港到着時間について「古くからの常識通り4時間前に来る必要はないが、状況次第で柔軟に判断すべきだ」と述べる声もある。極端に混雑している空港では早めの到着が有利な反面、比較的待ち時間が安定している空港では過度に早く来ることで全体の流れを遅くしてしまうリスクがあるとしている。
米国では春休みシーズンの旅行が重なっており、多くの旅行者が空港に集まる時期でもある。今回の混乱は政府の予算行き詰まりに伴うTSA職員の未払い状態が直接の原因であり、単に観光シーズンや乗客数の増加だけでは説明できないとの見方も強まっている。議会での予算協議がいつ合意に達するか不透明な中、当面この混雑と空港からの「早く来すぎないでほしい」という逆説的な呼びかけは続く可能性がある。
