米カリフォルニア州の人気食料品店に長蛇の列「マサ巡礼」
多くのラテンアメリカ系の家庭では、タマレスを家族で手分けして大量に作る習慣があり、干したトウモロコシの皮にマサを塗って、甘い味や塩味の具を包む。
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米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のダウニーにある食料品店「アマポラ・マーケット」ではクリスマスを前に、家族連れが伝統的な料理であるタマレス用の「マサ(トウモロコシ生地)」を求めて長い列を作っている。クリスマスと年末に向けて、多くのラテン系の家族がこの時期恒例の「マサ巡礼」として何時間も並び、季節の定番素材を手に入れようとしている。
12月23日朝、約200個のタマレスを用意していたという女性は、さらに家族と作るためのマサを求めて早朝から並んだ。女性はAP通信の取材に対し、「この店のマサは味付けがいつも完璧で、そのまま使える」と語り、駐車場をぐるりと囲むほどの行列も苦にはならないと話した。
多くのラテンアメリカ系の家庭では、タマレスを家族で手分けして大量に作る習慣があり、干したトウモロコシの皮にマサを塗って、甘い味や塩味の具を包む。それぞれの家族の味や思い出が詰まった特別な料理として、クリスマスの祝日に欠かせない存在となっている。
アマポラ・マーケットのCEOは、この時期のマサ販売を「仕事というより責任」と表現する。顧客の期待に応えるため、従業員は毎朝3時からマサの製造を始め、できあがった生地が店のドアから出ると同時に次々と売れていくという。店の裏では調理済みのトウモロコシが巨大なミキサーで塩やラードと混ぜられ、約3メートルの高さまで持ち上げられた大きなボウルから巨大なホッパーに注がれ、袋詰めされていく工程が繰り広げられている。
この“マサ巡礼”には遠方から訪れる人も多く、ベーカーズフィールドやラスベガスから来る家族もいる。あるグループはダウニーの店舗に早く着くために前夜からキャンプを張って待機したという。また、大学生の姉妹やいとこ同士が毛布に包まって夜明け前から待つ姿も見られ、親から子へと伝統が受け継がれていることがうかがえる。
店が誤った種類のトウモロコシでマサを販売してしまった2016年には、タマレスがうまく蒸し上がらずにクリスマスを台無しにしたと顧客が嘆いたこともあり、CEOは当時の教訓を忘れず、品質管理に力を入れてきた。また、インフレの影響を受ける家庭が多い中で、過去3年にわたり価格を安定させていることにも誇りを持っていると語った。
アマポラ・マーケットでは豚肉やチリ入りの塩味タマレス用のマサのほか、パイナップルやストロベリー味の甘いマサも販売している。これらはタマレス以外にもトルティーヤや濃厚なメキシカンホットチョコレートの「チャンプラード」などにも使われる。
ある父親は、9歳の娘を連れて1時間半かけて訪れ、「プレゼントは少なくても、タマレスはいつもある」と語り、家族の伝統としてのタマレスの重要性を強調した。多くの家族にとって、この時期のマサ購入は単なる買い物以上の、共有される文化的行事となっている。
