◎マスク氏は先週、タイムズ紙のパーソン・オブ・ザ・イヤーに選出された。
タイムズ紙が公開した表紙、2021年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたイーロン・マスク氏(TIME/Getty Images/AFP通信)

12月20日、テスラ社とスペースX社の創業者であるイーロン・マスクCEOは、今年110億ドル(約1.2兆円)を納税するとツイートした。

マスク氏は先月、民主党政権の増税政策に強く反発し、テスラ社の株式の10%を売却するソーシャルメディア国民投票を開催し、論争を巻き起こした。

ジョー・バイデン大統領の「ビリオネア税」を熱烈に支持する極左のエリザベス・ウォーレン上院議員は先週、「パーソン・オブ・ザ・イヤーが税金の支払いに同意したので、既存の税制システムを改革しよう」と呼びかけた。

マスク氏は先週、タイムズ紙のパーソン・オブ・ザ・イヤーに選出された。

民主党は3年連続で年収が1億ドル(約110億円)以上または、資産10億ドル(約1,100億円)以上の納税者にビリオネア税を課したいと考えている。対象者は米国の人口(約3億3,000万人)の0.001%未満にあたる700~800人。

また、この税法が成立すると、億万長者は保有する株式を売却しなくても、「株の価値が上がることで発生する利益」に課税されることになる。合衆国憲法は、「個人の資産は”売却した時のみ”課税の対象になる」と定めている。

マスク氏、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏、世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏などの超富裕層は給与を受け取っておらず、数兆円にのぼる資産のほぼすべてを株で保有し、それを担保にローンを組み会社や株に投資している。

リベラル派はビリオネア税の導入におおむね賛成している。

しかし、税法の見直しを含む民主党の法案は議会上院で完全に行き詰まっており、成立する可能性は低いと予想されている。民主党の中道右派であるジョー・マンチン上院議員は19日、ビリオネア税を含むバイデン大統領の新たな予算法案を支持しないと述べ、ホワイトハウスを激怒させた。

民主党の自称”民主社会主義者”であるバーニー・サンダース上院議員は19日、ビリオネア税とバイデン大統領を称賛し、法案に反対したマンチン上院議員を激しく罵倒した。

コロンビア大学のロバート・ウィレンス教授はマスク氏の納税額を「驚くべきもの」と呼んだうえで、「マスク氏は来年期限を迎えるストックオプションでテスラ社の株を格安で購入できるため、今回の騒動で発生した個人の損失は補填されるだろ」と述べた。

ストックオプションは株式会社の従業員や取締役が、自社株を定められた価格で取得できる権利である。マスク氏は契約に基づき、テスラ社の株2,640万株を1株6.24ドルで購入できる。このオプションは来年切れる予定。テスラ社の株は現在、約1,000ドルで取引されている。

マスク氏は今月、米国証券取引委員会(SEC)に提出した報告書の中で、テスラ社の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移転すると明らかにした。

マスク氏は数カ月前からリベラル派の聖地であるカリフォルニア州の税法とシリコンバレーの家賃が高いことに不満を述べ、移転計画を示唆していた。

AP通信などによると、カリフォルニア州は全米の州の中で所得税率が最も高く、共和党の聖地であるテキサス州は寛大な税法を採用しているという。

ソーシャルメディアの国民投票後、マスク氏はテスラの株を約140億ドル分売却した。

2020年9月3日/ドイツ、グリューンハイデのテスラ工場近く、イーロン・マスクCEO(ロイター通信)
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