米ジムビーム、ケンタッキー蒸留所を1年間閉鎖へ
この動きは米国のウイスキー業界が直面している課題を象徴するものである。
.jpg)
米国を代表するバーボンブランドの一つ、ジムビーム(Jim Beam)は22日、ケンタッキー州クレルモンにある主要蒸留所でのバーボン製造を2026年の1年間停止すると発表した。この決定は消費者需要の低迷や国際的な貿易環境の不透明さが影響したもので、蒸留所の操業を一時中断して施設の改善・改修に充てる計画である。
ジムビームを所有するサントリー・グローバル・スピリッツ(Suntory Global Spirits)は声明で、「消費者需要に最適な生産量を常に評価しており、2026年の生産量についてチームと協議した」と説明している。主要蒸留所での蒸留停止中も瓶詰めや倉庫業務、見学施設やレストランの運営は継続する方針を示した。蒸留は別の拠点であるボストン蒸留所や、クレルモンにある小規模蒸留所で継続される予定である。
この動きは米国のウイスキー業界が直面している課題を象徴するものである。バーボンの熟成には最低4年以上の年月が必要であり、生産と販売を見越した長期的な計画が求められる一方、消費者のアルコール消費量は低下傾向にある。また、トランプ政権の関税政策によってEUやカナダなどで報復的な措置が取られ、米国産スピリッツの輸出が大幅に落ち込んでいることも影響している。特にカナダ向け輸出は2025年の第2四半期(4~6月)で前年同期比85%減と深刻な状況になった。
ケンタッキー州はバーボン生産の中心地であり、国内のバーボンの約95%が同州で製造される。州内には多数の蒸留所が存在し、2025年1月時点で約1600万樽のバーボンが熟成中と、過去最高水準の在庫を抱えているという報告もある。この膨大な在庫は蒸留所にとって税負担を増やす要因ともなっており、バーボン業界全体が需給調整と財務負担の圧力に直面している。
今回の蒸留停止について、ジムビームは従業員との協議を進めており、人員削減の可能性についても検討段階にあると伝えられている。ただし、具体的なレイオフの有無や規模については明らかにしていない。サントリー・グローバル・スピリッツは米国において1000人以上の従業員を擁しており、同社施設の運営は地域経済にも影響を与えている。
バーボン市場は近年、コロナ禍後の好調期を経て在庫過剰と販売鈍化の局面を迎えつつある。ジムビームの蒸留所停止はこうした市況変化に対応する企業側の戦略的調整と受け止められている。業界関係者は今後の消費動向や国際貿易環境がバーボンの将来に大きな影響を与えるとみており、政策対応やマーケティング戦略の見直しが求められている。
