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米国で性感染症(STD)の検査・治療の選択肢が拡大

FDAが承認した新たな家庭用検査の中で注目されるのは、女性向けに淋菌、クラミジア、トリコモナス感染の三種類を同時に検出できる「三合一」検査キットだ。
性感染症(STD)の検査キット(Getty Images)

米国で性感染症(STD)の検査・治療の選択肢が拡大している。昨年、食品医薬品局(FDA)は自宅で行える複数の検査キットや新しい治療薬を承認し、感染抑制に向けた新たな流れが生まれつつある。こうした動きは、検査の遅れや医療機関への抵抗感を減らすと期待されている。

FDAが承認した新たな家庭用検査の中で注目されるのは、女性向けに淋菌、クラミジア、トリコモナス感染の三種類を同時に検出できる「三合一」検査キットだ。これは尿検体と膣用スワブを使い、小型の電子装置が結果を解析し、専用アプリに結果を送信する仕組みである。検査キットにはオンライン診療による医師との相談も含まれ、必要に応じて抗生物質などの処方を受けられる。このプロセスは購入から治療開始まで最短6時間程度に短縮され、従来のクリニックでの検査・結果待ち・再診の数日間と比べ圧倒的に早く結果を知ることができる。FDAが承認した研究では、三合一検査の精度は98%前後と高く、病院や保健機関での検査と同等の性能を示した。

また、同局は子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の自己採取キットも承認した。これは女性が自ら膣からサンプルを採取し、検査機関に送って解析するもので、最新の連邦ガイドラインでも自己採取が初めて推奨された。

治療面でも大きな進展がある。FDAは数十年ぶりに淋菌治療薬として2つの経口薬を承認した。淋菌は細菌の進化により従来の抗生物質への耐性を強めており、治療選択肢がほとんどなくなっていた。新たに承認された「ニュゾルベンチ」と「ブルージェパ」は経口剤であり、従来の筋肉注射による治療よりも服用が容易で、医療現場での利便性向上が期待される。これまでCDC(疾病対策センター)が勧めていた経口アジスロマイシンとの併用治療は、耐性増加のためガイドラインから外れた経緯がある。

こうした新検査・新治療の登場はコロナパンデミック前後に性感染症の検査・治療が大きく停滞した状況を受けた対応でもある。パンデミック期には教育や検査推進活動が中断され、感染の早期発見や治療の機会が減少したが、家庭用検査の普及はこうした問題を緩和する可能性を持つ。

一方で専門家は、いくつかの課題も指摘する。家庭での検査が増えると、従来の検査ラボを通じた感染率の全国的な追跡が難しくなる懸念がある。また、検査キットの価格が高額であることも利用の障壁だ。例えば三合一検査は約150ドル(保険適用外)が目安であり、所得の低い人々にとっては負担が大きい可能性がある。加えて、最近の公衆衛生機関への予算削減が、検査・治療へのアクセスをさらに制限しかねないという指摘もある。

それでも多くの医療専門家は、検査・治療の選択肢が増えたこと自体を歓迎している。性的健康へのスティグマ(烙印)を避けたい人や医療機関へ行くことに抵抗のある人々が、自宅で安心して検査を行える環境は、感染拡大防止と早期治療への道を開くとの見方が根強い。

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