米AI企業アンソロピックがトランプ政権を提訴
この訴訟はAI企業と政府との間でAI技術の軍事利用や安全性を巡る緊張が高まる中で起きたものであり、先例のない争点を含んでいる。
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米国の人工知能(AI)開発企業「アンソロピック(Anthropic)」がトランプ政権を提訴した。訴状は3月9日付でカリフォルニア州北部地区連邦地裁とワシントンDC連邦控訴裁判所にそれぞれ提出され、国防総省が同社を「サプライチェーン・リスク(供給網リスク)」に指定した一連の措置は憲法違反であり、「違法かつ前例のない報復キャンペーン」だとして対応の撤回を求めている。
アンソロピックは国防総省がAI企業に対し、軍事利用に関する包括的な権利を認めるよう要求したにもかかわらず、自社のAIモデル「クロード(Claude)」について完全自律兵器や大規模な国内監視への利用を制限する立場を崩さなかったことを背景に今回の対立が発生したと主張している。同社はそうした制限は倫理的なAI利用の確保に不可欠だとし、政府側の要求には応じられないとの立場を示していたが、これに対し国防総省は同社製品の軍事利用停止を示唆し、最終的にサプライチェーン・リスク指定を実施した。
訴状では、政府の措置がアンソロピックの「言論の自由(憲法修正第1条)」を侵害していると指摘している。アンソロピックは訴状の中で「これらの行為は前例がなく違法である」と主張し、「憲法は政府が”言論の自由”を攻撃することを許していない」と記している。またアンソロピックは連邦契約の通常の取り消しプロセスが無視され、国家安全保障法の範囲を超えた不当な扱いを受けていると訴えている。
国防総省のサプライチェーン・リスク指定は、これまで中国やロシアの企業など米国の安全保障上懸念のある外国企業に対して用いられてきたものであり、米国企業に対して適用されるのは極めて異例である。この指定により、同社は国防関連の契約から事実上排除され、軍需産業の取引先としての立場を失う可能性が生じている。またトランプ(Donald Trump)は全ての連邦機関に同社のAI技術の使用停止を命じる大統領令を発出し、国防総省にはその適用を6カ月間猶予したものの、連邦政府全体での利用が制限されつつある。
アンソロピックは訴訟で、政府の一連の措置が同社の事業や顧客関係に「回復不能な損害」を与えていると主張している。特に、国防関連以外の政府機関や民間企業との契約に悪影響を及ぼし、今後の事業機会を阻害する恐れがあると訴えた。同社の報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、「この法的措置は国家安全保障への取り組みを変えるものではないが、我々のビジネス、顧客、パートナーを守るために必要な一歩だ」と述べている。
この訴訟はAI企業と政府との間でAI技術の軍事利用や安全性を巡る緊張が高まる中で起きたものであり、先例のない争点を含んでいる。アンソロピックは政府の方針を単に無効化するだけでなく、企業が政策的意見を表明したことで不利益な扱いを受けることが許されないという法的原則を確立したい意向を示している。一方、国防総省や政権側は訴訟へのコメントを控えているが、国家安全保障上のリスク管理を主張していると見られる。
この争いはAI技術が国家安全保障、戦争、監視とどのように関わるべきかという広範な議論の一部で、今後の法廷判断は同様の技術政策に影響を与える可能性がある。
