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SNSで「都市衰退」を描いた偽動画拡散、分断や対立の原因に

こうした映像は実際には存在しないような荒廃した都市風景や治安の悪化を描写し、「西洋の大都市が移民や犯罪で崩壊している」といった誤解を助長していると指摘されている。
イギリス国内で拡散した偽動画(BBCニュース)

イギリス発の社会メディア動向として、生成AIを使った「都市衰退」を描く偽動画(フェイクAI動画)がSNS上で急速に拡散し、注目を集めている。こうした映像は実際には存在しないような荒廃した都市風景や治安の悪化を描写し、「西洋の大都市が移民や犯罪で崩壊している」といった誤解を助長していると指摘されている。こうした傾向は専門家らによって「ディクライン・ポルノ(都市衰退ポルノ)」と呼ばれ、社会的議論を呼んでいる。

代表的な例としては、ロンドン南部の「納税者負担のウォーターパーク」で、汚れたプールに大勢の若者がスライダーで滑り降りる様子を描いた動画がSNS(ティックトックやインスタグラムなど)に投稿され、数百万回の再生を記録している。映像に登場する人物は「ロードマン」と呼ばれる都会的な若者風のキャラクターであり、制作者はユーモアやエンターテインメント目的で制作したと語っているが、視聴者の一部には現実の風景だと信じる人も多い。

これらの動画はアルゴリズムによって拡散されやすく、同様の偽コンテンツを大量に投稿するアカウントが増えたことで、短期間に旋風的な人気を博している。制作者の1人である「RadialB」と名乗る投稿者は、内容が政治的に過激な反響を呼ぶことについて「意図していない」と述べる一方、「人々が本物だと信じてしまうほどリアルな映像であることが関心を引くカギだ」と語っている。

この種の生成AIフェイクは単なるユーモアやジョークの域を越え、都市生活の現実に関する誤解や恐怖感を煽る役割を果たしているとの指摘がある。特に「移民の増加」「治安悪化」といったテーマを結び付ける形で拡散されることが多く、視聴者間の対立や人種差別的な反応を助長してしまう可能性が高いという。専門家はこの現象を既存の偏見や不安感に付け込んだ情報操作の一種とみなし、批判的に分析している。

SNSプラットフォーム各社はAI生成コンテンツに「AI生成」「合成メディア」といった表記を付けるポリシーを設けているものの、表示が小さくユーザーの注意を引きにくいこと、そして表示されても真偽を疑わない利用者がいることが拡散の一因になっている。実際、こうしたラベルが付いていても、コメント欄では「これが現実だ」と真実だと信じる投稿者や、政治的・文化的議論に発展するケースが見られる。

また、こうした傾向はイギリスにとどまらず、米国や欧州の主要都市、サンフランシスコやニューヨーク市などの「都市衰退」を描いた偽動画も広がっている。映像の多く、実際の犯罪や社会問題の断片的な映像を引用しつつ文脈を無視したり、全く架空の状況を描いたりしているため、視聴者が現実の問題と偽情報を区別するハードルが高まっている。

こうしたAI動画の増加は生成AI技術の進化とツールの普及によって、誰でも簡単に「リアルに見える映像」を作成できるようになったことが背景にあると分析されている。専門家はフェイクを見抜く技能やメディアリテラシーの重要性、プラットフォーム側の対策強化が急務だと指摘している。

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