インドとイギリス、カシミール地方のテロ対策について協議

インドとパキスタンはそれぞれカシミールの一部を管理している。この係争地をめぐる領有権争いが解決する目途は立っていない。
2025年5月2日/インド、ジャンムー・カシミール州、陸軍の兵士(AP通信)

イギリスのラミー(David Lammy)外相は7日、インドのモディ(Narendra Modi)首相との会談で係争地カシミール地方のテロ対策などについて協議したと明らかにした。

ラミー氏はロイター通信のインタビューで、「インドとイギリス両政府はカシミールの状況を維持したいと考えているが、特にテロリズム、インドを不安定化させる目的のテロリズムが存在することも認識している」と語った。

またラミー氏は「インド政府とテロ対策について引き続き連携していくことを確認した」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。

インドのジャンムー・カシミール州で4月末に観光客が殺害された後、パキスタンとの緊張が一気に高まり、本格的な戦争に発展する可能性も出ていたが、両国は5月10日、米国の仲介を受け、完全かつ即時の停戦に合意した。

この事件はジャンムー・カシミール州近郊の山岳地帯にある観光地で4月22日に発生。正体不明の武装集団が観光客に向けて発砲し、26人が死亡、17人が負傷した。その多くがインド人であった。

このテロ攻撃を起こした武装集団の正体は分かっておらず、捜査が進んでいるかも不明である。

インド政府はこの事件を受け、パキスタン国民に発行したすべてのビザ(査証)を剥奪。パキスタンとの水共有条約を停止するなどの対抗措置を発表した。

パキスタンはインドの外交スタッフの削減、両国間で唯一機能している陸上国境の閉鎖、インドとの水共有条約を停止した。

またパキスタンはインドが所有または運営するすべての航空会社の領空への進入を禁じ、インドとの貿易を停止した。インド側も同様の措置を取っている。

インド政府はこの事件にパキスタン政府が関与したと主張しているが、その証拠は示していない。

ラミー氏は前日、パキスタンの首都イスラマバードでシャリフ(Shehbaz Sharif)首相や外相らと会談。この問題について協議していた。

インドとパキスタンはそれぞれカシミールの一部を管理している。この係争地をめぐる領有権争いが解決する目途は立っていない。

カシミールでは24年9月末頃から暴力事件が急増し、多くの市民が爆弾テロや銃撃戦に巻き込まれてきた。

カシミールの反政府勢力は1989年の武装蜂起以来、中央政府と戦ってきた。カシミールで生活するイスラム教徒の多くがパキスタンへの編入か独立という反政府勢力の目標を支持している。

インド政府は2019年、「歴史的大失態」の是正として、70年間に渡って認めてきたジャンムー・カシミール州の自治権を剥奪した。

ジャンムー・カシミール州はインドで唯一、イスラム教徒が多数派の州であり、ヒンズー政策を推進する政府と何度も対立してきた。

インドは21年、射程5000キロの核搭載可能大陸間弾道ミサイル「アグニ5」の発射実験に成功。これは長距離地対地弾道ミサイルである。

インドは1947年にイギリスから独立して以来、パキスタンと3度の戦争を戦ってきた。これらのミサイルはパキスタンの全国土を射程に収めている。

パキスタンも核保有国であり、中長距離ミサイルの開発を進めている。

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