◎10月15日にエセックス州リー=オン=シーで庶民院(下院)のデービッド・アメス卿(69歳)を刺殺した容疑者は、25歳のアリ・ハルビ・アリと特定された。
2021年10月16日/イギリス、エセックス州リー=オン=シー、ボリス・ジョンソン首相と労働党のキール・スターマー党首(アルベルト・ペザリ/AP通信)

英BBCニュースによると、10月15日にエセックス州リー=オン=シーで庶民院(下院)のデービッド・アメス卿(69歳)を刺殺した容疑者は、25歳のアリ・ハルビ・アリと特定されたという。

ロンドン警視庁は2000年に施行されたテロ法に基づき、アリ容疑者の聴取を10月22日まで継続すると述べた。

警視庁は16日未明、アリ容疑者はイスラム過激派の影響を受けている可能性があると判断し、事件をテロとして扱うと発表した。

BBCによると、アリ容疑者は数年前のテロ対策防止計画の中で要注意人物のひとりとして紹介されていたという。しかし、国内の治安維持を担当する保安局(MI5)は、アリ容疑者に対する公式調査を行っていなかった。

ロンドン警視庁は事件に別の個人や組織が関与しているとは思っていないと述べた。

1983年から38年にわたって議員を務めてきたアメス卿は15日、エセックス州リー=オン=シーのベルフェアーズメソジスト教会で有権者との定期会合を開催していた。

アリ容疑者はアメス議員をナイフで複数回刺したと伝えられている。通報を受け現場に駆けつけた救急隊はアメス卿に救命措置を施したが、現場で死亡が確認された。

アリ容疑者はエセックス州警察に逮捕され、その後、テロ法第41条に基づき、ロンドン警視庁に移送された。41条は容疑者がテロリストであると疑われる場合、起訴なしで容疑者を拘留する権限を警察に与える。猶予は48時間。

BBCによると、裁判所はアリ容疑者の拘留期間を10月22日まで延長する許可(令状)をロンドン警視庁に与えたという。

イギリスでは近年、政治の二極化に伴い、政治家に対する暴力の懸念が高まっている。2016年のブレグジット国民投票の1週間前、野党労働党のジョー・コックス議員が集会準備中に刺され、死亡した。ネオナチとのつながりを指摘された容疑者は仮釈放なしの終身刑を言い渡されている。

プリティ・パテル内相は16日の会見で、「議員を保護する安全対策を講じている」と述べた。議員は議事堂内では警察の保護下に置かれるが、外では原則警察の手から離れる。

エセックス州リー=オン=シーの事件現場周辺には多くの住民が献花に訪れた。アメス卿は1997年からエセックス州を含むサウスエンド=オン=シー(自治体)の保守党員を務めていた。

ボリス・ジョンソン首相は労働党のキール・スターマー党首と並んで献花を行い、アメス卿に民主主義を維持し続けると誓った。

ジョンソン首相は声明で、イギリスの民主主義が個人の攻撃に屈することはないと述べた。「国民に選ばれた議員は民主主義のために奉仕し続けます...」

一方、労働党のタンマンジート・デシ議員は記者団に対し、「有権者の意見や考えを議会にくみ上げることは議員の最も大切な仕事のひとつですが、近年、暴力や虐待が増加しています」と述べた。

労働党のハリエット・ハーマン議員はBBCラジオのインタビューの中で、「ジョンソン首相に議員の身を守る対策について検討する超党派の会議を主催するよう頼む」と述べた。「コックス議員の殺人事件以来、イギリスの治安は変化しました。私たちは選挙区内の活動における安全の確保について真剣に検討しなければなりません」

アメス卿は昨年11月に発行した自身の著書の中で、「セキュリティに関する問題は有権者と議員のかかわりを大切にするイギリスの伝統を台無しにする」と述べ、「それは誰にでも起こり得る」と警告していた。

スポンサーリンク