◎ウクライナ軍は23日、海上発射型巡航ミサイル「カリブル」2発がオデーサの港に着弾し、もう2発を防空システムで撃墜したと報告した。
2022年7月22日/ウクライナ、東部ドネツク州の穀物畑(Nariman El-Mofty/AP通信)

ウクライナ政府は23日、ロシア軍が南部の港湾都市オデーサ州の港を空爆したと発表した。

大統領府によると、オデーサ州の港湾当局は空爆後も穀物輸送再開に向けた準備を進めているという。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領はビデオ演説で、「空爆はロシアが合意を履行しないことを示している」と非難した。

ロシアとウクライナは22日、トルコのイスタンブールでウクライナ産穀物と肥料の海上輸送を再開する合意文書に署名した。

ロシア軍は協定の中で、穀物輸送中は港を攻撃しないことに合意している。

ウクライナ軍はSNSの投稿で、海上発射型巡航ミサイル「カリブル(Kalibr)」2発がオデーサの港に着弾し、もう2発を防空システムで撃墜したと報告した。

ウクライナ公共放送によると、港の被害は限定的で、輸送に影響は出ないとみられる。

ゼレンスキー氏は協定締結直後の攻撃を「野蛮」と非難し、「この攻撃はロシアが信頼できないことを示している」とした。

またゼレンスキー氏は、このようなミサイル攻撃を防ぐ防空システムを確立するためにあらゆる手段を講じると国民に約束した。

米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官も空爆を非難し、「この攻撃は協定に疑問を投げかけている」と懸念を示した。

ブリンケン氏は合意を完全に履行するようロシアに求めた。

一方、合意を仲介したトルコ政府は23日、「ロシア当局は攻撃への関与を否定した」と発表した。国防省によると、ロシアはオデーサに対する攻撃を否定し、調査を進めているという。

ロシア軍は制圧を目指す東部ドネツク州以外への無差別攻撃を続けており、この数日で民間人数十人がミサイル攻撃や砲撃に巻き込まれ死亡した。

ロシアとウクライナはオデーサ州などの港に滞留している穀物の海上輸送を再開することに合意した。国連はこの取引を「希望の光」と呼んでいる。

トルコと国連はこの協定のために2カ月費やした。合意により、イスタンブールに国連・ロシア・ウクライナ・トルコ当局者が駐在する監視センターが設置されることになり、戦争当事者の合意があれば輸送期間を120日から延長することができる。

EUのボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表は23日のツイートでオデーサへの攻撃を非難し、ロシアに国際法を遵守するよう求めた。

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長も攻撃を非難し、「協定の完全履行が不可欠である」とした。

一方、ハンガリーのオルバン(Viktor Orban)首相は23日、保守派の会議の中で「ウクライナはロシアに勝つことはできない」と述べた。

オルバン氏は「戦争を終結させる唯一の手段は米国とロシアの和平交渉」と主張した。「ウクライナはロシアに勝てません。それは火を見るより明らかです。大切なのは勝利ではなく和平交渉です。今こそ和平交渉に焦点を当てる戦略が必要なのです...」

AP通信は軍事専門家の話を引用し、「このミサイル攻撃が協定を破壊する試みかどうかは分からない」と報じている。

一部の専門家はSNSに、「この攻撃は主要港湾都市のオデーサ州が狙われるとウクライナ軍に思い込ませる偽旗作戦の可能性がある」と投稿している。

英国防省は23日、最新の戦況報告で、ウクライナ軍は南部ヘルソン州のロシア軍補給路を断つ可能性があるとした。ヘルソンは開戦直後に占領された。

ウクライナ軍は米国が供与した高軌道ロケット砲システム「ハイマース」でロシア軍の主要補給路「アントノフスキー橋(Antonovsky Bridge)」を攻撃しているとみられる。

これはドニプロ川に架かる全長1.4kmの橋で、ロシアが2014年に併合したクリミア半島からヘルソン州に補給物資を供給しているとみられる。

この橋が完全に破壊されれば、南部のロシア軍補給路は大きく引き伸ばされることになる。

2022年7月22日/ウクライナ、東部ドネツク州の検問所(Nariman El-Mofty/AP通信)
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