◎イタリアの政治ドラマは先週始まった。
イタリアのドラギ(Mario Draghi)首相は20日、連立を組む左派政党「五つ星運動(M5S)」などにインフレ対策予算法案を支持するよう呼びかけた。
野党の内閣不信任決議案は反対多数で否決されたが、ドラギは頭を抱えた。
ドラギ氏は演説でコロナとインフレ危機を克服するためには予算と協力が必要と訴えた。
しかし、演説から数時間後、連立を組む3つの政党(1つは左派、2つは右派)は法案の代議院(下院)採決に参加しないと発表した。
地元メディアは政府筋の話を引用し、「解散待ったなし!」と報じている。
先週行われた元老院(上院)採決は賛成多数で可決されたが、ドラギ氏は五つ星運動の支持なしで政権を維持することは不可能と警告している。
スーパーマリオの愛称で親しまれているドラギ氏は20日を「狂気の一日」と呼び、何かしらの行動を起こすと期待されている。地元メディアによると、同氏は21日の代議院審議に出席する予定。
イタリアの政治ドラマは先週始まった。
M5Sを率いるコンテ(Giuseppe Conte)前首相はドラギ氏が提出した230億ユーロのインフレ対策法案に異議を唱え、採決に参加しないと表明したのである。
ドラギ氏は14日、マッタレッラ(Sergio Mattarella)大統領に辞表を提出した。しかし、大統領は辞表を破り捨て、ドラギにもっと頑張るよう促した。
ドラギ氏は20日の演説で、「国民の留任命令を無視することはできない」と訴えた。
次回の総選挙は2023年6月までに行われる予定。ドラギ政権が早期解散を決断すれば、今秋に前倒しされる可能性がある。
一部の野党議員は早期解散を求めているものの、多くの専門家が選挙よりロシア・ウクライナ戦争がもたらしたエネルギー危機やインフレへの対処に注力すべきと懸念を表明している。
イタリアのSNSユーザーはドラギ氏の嘆願が受け入れられると信じているようだった。あるツイッターユーザーは、「選挙より経済対策を優先しろ」と投稿している。
中道左派はドラギ氏を支持したが、すべての政党が解散総選挙に備えているように見えた。
中道左派の民主党は声明で、「選挙戦の準備を進める」と述べた。
極右政党「同盟」を率いるサルヴィーニ(Matteo Salvini)議員と極右政党「イタリアの同胞」のメローニ(Giorgia Meloni)議員は早期解散を歓迎している。
ドラギ氏は昨年2月、元欧州中央銀行総裁の手腕を買われ、EU復興予算2000億ユーロを確保するための改革を主導すべく、首相に就任した。
首都ローマではドラギ氏の留任を求めるデモ行進が何度か行われ、各紙の世論調査でも回答者の大多数が現政権を支持していることが明らかになった。
全国の市長約2000人と経済界のビジネスリーダー250人もドラギ氏に踏みとどまるよう要請している。
しかし、連立を組む3党の意志は固く、解散総選挙は避けられないように見える。解散となれば、インフレ対策法案の成立は先延ばしとなり、来年度の予算編成作業にも影響が出るかもしれない。
イタリアはEU復興予算の最大の受け取り国兼資金提供国であり、次の支払いはインフレ対策予算に含まれている。
一方、最新の世論調査は、次期首相は極右から選出されると示唆している。「イタリアの同胞」のメローニ氏は秋の総選挙を要求し、「左派は議席を失うことを恐れている」とSNSに投稿した。
「イタリアの同胞」はドラギ氏の連立政権に参加していないが、「同盟」と中道右派政党「フォルツァ・イタリア」は選挙の結果次第では保守連立もあり得るとしており、実現すればメローニ氏が次期首相に選ばれると予想されている。