◎ロシアによるウクライナ侵略の戦死者数は両軍合わせて数十万人、民間人の犠牲者は数万人と推定されている。
国際オリンピック委員会(IOC)は28日、ロシアとベラルーシ代表選手のスポーツイベントへの中立出場を認めるよう勧告した。ただし、2024パリ五輪については言及していない。
ロシアによるウクライナ侵略の戦死者数は両軍合わせて数十万人、民間人の犠牲者は数万人と推定されている。
IOCの執行委員会はスイスの本部でこの問題について協議し、国際連盟やイベント主催者に対し、「ウクライナ侵攻を積極的に支援する選手・サポート要員、あるいは軍と契約している選手の出場を認めるべきではない」と勧告した。
またIOCは来年のパリ五輪と2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪について、「適切な時期に決断を下す」とした。
IOCは「勧告の完全な履行を注意深く監視する」とし、コンプライアンスを夏と冬の大会の最優先事項のひとつにするとしている。中立の立場で出場する国の国旗を会場で掲げることはできず、政治的な内容の表示(看板やのぼりなど)も禁じられる。
バッハ(Thomas Bach)会長は協議の冒頭、テニス、自転車、卓球などの国際大会を念頭に置き、「ロシアとベラルーシのパスポートを持つ選手は国際大会に出場できる」と述べた。
またバッハ氏は「アイスホッケー、ハンドボール、サッカー、米国はもちろん、欧州の他のリーグでもロシアとベラルーシの選手が活躍している」と強調した。
執行委員会は協議の中で、「世界で進行中の70の武力紛争と戦争を考慮した」とし、「これらの影響を受けた地域の国内オリンピック委員会は選手の活動を継続し、国際社会もそれを認めている」と強調した。
ウクライナ大統領府は先週、IOCがロシア・ベラルーシ選手の出場を容認すると示唆したことについて、「ダブルスタンダード(二重規範)」と非難した。
IOCは昨年2月、ロシアがウクライナに攻め込んだことを受け、世界のスポーツ団体に対し、ロシアとベラルーシで開催予定のすべてのイベントを中止または別の国に移し、両国の国旗と国歌の使用を禁じるよう求めた。
ウクライナ政府は声明の中で、「IOCの勧告は今も機能し、各国の団体はそれに応じている」と述べている。
IOCの勧告により、両国で国際的なスポーツイベントを開催することはできなくなり、国旗、国歌、その他のシンボルも使用できなくなった。
バッハ氏は28日の協議でウクライナ侵攻を改めて強く非難し、ウクライナ国内オリンピック委員会への資金を3倍に増額すると発表した。
しかしバッハ氏は「スポーツ団体の大会参加に関する自律的な決定権に対するいかなる政治的干渉も断固拒否する」と表明。ウクライナ政府の圧力を暗に批判した。
一方、英政府はパリ五輪のスポンサーにロシア・ベラルーシ選手の出場禁止を支持するよう要請している。
フレイザー(Lucy Frazer)デジタル・文化・メディア・スポーツ相はパリ五輪のワールドワイドパートナー13社に書簡を送り、「スポーツのプロパガンダ利用を許してはならない」と述べた。
IOC執行委員会は「スポーツ団体は政治的な理由やパスポートで国際大会に参加できる選手を決めてはならない」と述べている。
ウクライナ政府はロシア・ベラルーシ選手の出場禁止が守られない場合、パリ五輪をボイコットすると圧力をかけている。
今月行われた女子ボクシング世界選手権では、ロシアとベラルーシの選手が自国の国旗を掲げて出場したため、イギリスを含む数カ国がボイコットした。
また国際フェンシング協会も禁止令を支持し、中立という概念を否定するよう求める文書に署名した。
IOCの勧告はすぐに批判を浴び、ポーランド外務省は勧告を「恥辱」と断じた。
チェコ外相はSNSにこう投稿している。「現実から目をそらしてはいけません。ロシアのスポーツは大統領府によって一元的に管理されています。ロシアはフェアプレーが何であるかを知りません」
「そのアスリートは五輪にふさわしくありません」
ロシア五輪委員会のポズドニャコフ(Stanislav Pozdnyakov)会長はIOCの勧告を批判し、パリ五輪を含む全大会への出場を認めるよう求めた。