◎敗れたライバルの一部は、極右のル・ペン党首が中道のマクロン大統領を破る可能性に危機感を抱いている。
2022年4月10日/フランス、北部ル・トゥケ・パリ・プラージュの投票所、マクロン大統領(Thibault Camus/Pool/AP通信)

フランスの主要メディアは10日、大統領選第1ラウンドの投票締め切りに合わせて出口調査企業の予測を公表し、現職のマクロン大統領と国民連合のル・ペン党首が決選投票に進む見通しが確実になったと報じた。

企業の予測値には差があるが、大方の予想通り2017年の決選投票と同じ顔ぶれになることがほぼ決まった。

国営フランス24は、マクロン大統領の投票率は27.6%、ル・ペン党首は23.0%、急進左派のメレンション候補は22.2%と報じている。

その他のメディアや日刊紙もマクロン大統領とル・ペン党首の第1R通過を予想している。

<各紙と企業の出口調査平均>
▽マクロン(共和国万歳)28.1~29.7%
▽ル・ペン(国民連合)23.3~24.7%
▽メレンション(左派党)19.8~20.8%
▽ゼムール(極右評論家)6.8~7.0%
▽ペクレス(共和党)4.3~5.0%
▽イダルゴ(社会党)1.8~2.0%
以下省略

第1Rの上位2人が4月24日の決選投票に進む。

マクロン大統領は選挙戦後半で支持率を落としたものの、ル・ペン党首との差は世論調査より広がる見込み。

急進左派のメレンション氏は選挙戦後半に支持率を伸ばしたが、ル・ペン党首には及ばなかった。

反イスラム、反ゲイ、反LGBTQを公約に掲げる極右のゼムール氏は、ロシアのプーチン大統領を称賛したことなどが響き、支持を失った。

サルコジ元大統領の共和党から出馬したペクレス氏はまさかの大敗。右派のル・ペン党首に票を吸い取られた。

現職のパリ市長である社会党のイダルゴ氏も支持を集めることはできなかった。

マクロン大統領は北部ル・トゥケ・パリ・プラージュの投票所で支持者の「あと5年」コールに迎えられた。

ル・ペン党首は北部の投票所で記者団に、「ポピュリストと外国人排斥者を一緒にすべきではない」と指摘した。ル・ペン党首は反移民政策を推進しているが、ウクライナ難民の受け入れには前向きな姿勢を示している。

またル・ペン党首は、「フランスで働きたいすべての人に手を差し伸べたい」と述べた。「私たちはフランスと欧州の開放・(経済的な)独立という進歩的なプロジェクトを実行します...」

マクロン大統領は2017年の決選投票ではル・ペン党首に圧勝したが、今回は大接戦になると予想されている。

両陣営は第1R敗退が決まった10人の候補の支持者への訴えを強化すると予想されている。

ル・ペン党首は「社会正義」と「引き裂かれたフランスの回復」をスローガンに含めることで、左派陣営を味方につけたいと考えているようだ。

しかし、敗れたライバルの一部は、極右のル・ペン党首が中道のマクロン大統領を破る可能性に危機感を抱いている。メレンション氏は10日、涙を流す支持者を前に、「ル・ペン氏に1票も与えてはならない」と訴えた。

共和党の右派であるペクレス氏も敗北を認めたうえで、「ル・ペン氏が当選すればフランスは大混乱に陥る」と警告し、決選投票ではマクロン大統領に投票すると公言した。

ル・ペン党首は北部エナン・ボーモンの投票所で「決選投票はフランスの今後50年を左右する」と述べ、有権者にさらなる支持を訴えた。

EU加盟国の中で核兵器と安保理の拒否権を持っているのはフランスだけであり、その指導者は欧州だけでなく世界の運命を担うひとりになる。

ル・ペン党首のソフトなイメージを前面に押し出す選挙キャンペーンは功を奏したが、中道と左派の有権者は疑念を抱いているようである。

2022年4月10日/フランス、北部エナン・ボーモンの投票所、国民連合のル・ペン党首(Michel Spingler/AP通信)
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