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デンマーク、15歳未満のSNS利用禁じる法案採決へ

フレデリクセン政権は11月に与党3党と野党2党の合意を取り付け、15歳未満の若者によるソーシャルメディアへのアクセスを原則として禁止する方針を打ち出した。
デンマークのフレデリクセン首相(Getty Images/AFP通信)

デンマーク政府が若年層のソーシャルメディア利用を制限する法律を導入する予定だ。この計画はオーストラリアが16歳未満のソーシャルメディア利用を制限する世界初の法律を施行した動きに追随するものであり、EU加盟国の中で最も厳しい措置となる見込みである。

フレデリクセン政権は11月に与党3党と野党2党の合意を取り付け、15歳未満の若者によるソーシャルメディアへのアクセスを原則として禁止する方針を打ち出した。法案が成立すれば、Instagram、TikTok、Snapchat、X(旧ツイッター)、YouTubeなどの主要プラットフォームに年齢制限が課されることになる。実際の施行は2026年中頃を予定している。

政府案では例外として、保護者の同意があれば13歳以上の子どもはソーシャルメディアを利用できる仕組みを検討しているものの、具体的な運用方法や対象範囲についてはまだ詳細が示されていない。多くのプラットフォームは既に13歳未満のアカウント作成を禁止しているが、EUのデジタルサービス法でも未成年のオンラインリスクや不適切なコンテンツから保護するための措置が求められている。

こうした規制強化の背景には、ソーシャルメディアが若年層の精神的健康や社会生活に悪影響を及ぼしているとの懸念がある。デンマーク当局は既存の規制が十分に機能していない現状を指摘し、子どもたちが容易にプラットフォームにアクセスできてしまう問題を改善する必要があるとしている。実際、デンマーク国内では13歳未満の子どもの約98%が少なくとも一つのソーシャルメディアアカウントを持ち、10歳未満でも多くが利用していると報告されている。

フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相は子どもたちの「遊び場」に当たるデジタル空間に事実上の規制が存在しない状況を問題視し、「長年にわたりソーシャルメディア企業に子どもたちの遊び場を自由にさせてきた」と批判している。法案はまだ諮問プロセスや議会での審議を残しており、複数回の審議を経て成立に向かう見込みだ。

この動きは国際的な潮流の一部である。オーストラリアに加え、マレーシアやノルウェーも同様の規制を検討しているほか、EU内でも未成年者のデジタル利用規制に関する議論が進んでいる。中国など一部の国は既にオンラインゲームやスマートフォン使用時間に制限を設けており、子どものデジタル体験に制約を加える政策が世界的に注目されている。

一方で、こうした規制には批判もある。若者や一部の専門家は、ソーシャルメディアが若者の社会的つながりや情報交換の重要な場であると指摘し、一律の年齢制限が表現の自由や社会参加の機会を奪う可能性を懸念している。規制の実効性や年齢確認の仕組みがどこまで機能するかについても疑問視する声が挙がっており、今後の議論が注目される。

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