◎イエメンの雨季は5月から8月中頃まで続くが、今年は豪雨の発生頻度が高くなっている。
イエメンの大部分を実行支配するシーア派武装勢力フーシは11日、首都サヌアと南西部地域で豪雨による洪水が発生し、この2日間で少なくとも38人が死亡したと発表した。
フーシ派の報道官によると、両地域の広い範囲が浸水し、多くの民家が被害を受けたという。
イエメンの雨季は5月から8月中頃まで続くが、今年は豪雨の発生頻度が高くなっている。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は11日、世界遺産に登録されているサヌア旧市街でも洪水被害が相次ぎ、市内の歴史的建造物少なくとも10棟が完全に崩壊し、約80棟が被害を受けたと報告した。
フーシ派も同様の発表を行っている。
サヌア旧市街には2000年以上前から人が住んでいたと考えられている。その建築様式は独特で、基礎と1階部分は石造り、2階からはレンガ造りであり、世界初の高層建築物とされる。
AP通信はユネスコ当局者の話を引用し、「旧市街だけでなく、その他の古い城壁都市や歴史的建造物が建ち並ぶ地区も注意深く監視している」と報じている。
ユネスコはEUなどと協力してサヌア旧市街の200以上の歴史的建造物を修復してきたが、内戦と異常気象はそれをはるかに超える建造物や史跡を破壊している。
2020年の豪雨による洪水はサヌア旧市街の多くの歴史的建造物に被害を与え、保護活動を弱体化させた。
またユネスコは内戦の影響で修復・保護作業が思うように進んでいないと警告している。
ユネスコ当局者はAPに、「被害は深刻であり、優れた建築的価値を持つ歴史遺産の保護活動を強化しなければならない」と述べた。
2014年に勃発したイエメン内戦は近代史上最悪と呼ばれる人道危機を引き起こし、この8年で少なくとも16万人が死亡。子供を含む1000万~2000万人が飢餓に直面している。
サウジ主導の連合軍はイランの支援を受けるフーシ派の拠点を攻めつつ首都サヌアなどにミサイルを撃ちこみ、インフラと建物を破壊し尽くした。しかし、絶え間ない空爆と地上戦にもかかわらず戦闘は膠着状態に陥り、壊滅的な人道危機を引き起こした。
国連の支援を受ける政府とフーシ派は先週、既存の休戦協定を2カ月延長することに合意した。
専門家はこの内戦をサウジとイランの代理戦争とみなしている。