◎ユネスコ世界遺産に登録されているサヌア旧市街で歴史的建造物10棟が崩壊した。
2022年8月10日/イエメン、首都サナアの旧市街、大雨で倒壊した建物(Hani Mohammed/AP通信)

イエメンの首都サヌアを実行支配するシーア派武装勢力フーシは10日、ユネスコ世界遺産に登録されているサヌア旧市街で歴史的建造物10棟が崩壊したと発表した。

フーシ派の報道官は声明で、「歴史的建造物少なくとも80棟が大雨の被害を受け、緊急補修を必要としている」と明らかにした。

サヌアの旧市街には2000年以上前から人が住んでいたと考えられている。その建築様式は独特で、基礎と1階部分は石造り、2階からはレンガ造りであり、世界初の高層建築物とされる。

赤レンガの外壁に白い石膏モールで装飾を施した建物はジンジャーブレッドハウス(お菓子の家)に例えられ、イエメンの首都を象徴するスタイルとなっている。多くの建物が今でも個人宅として利用され、中には築500年以上のものもある。

フーシ派の報道官は、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)と協力して国際社会に支援を呼びかけている」とした。この倒壊による負傷者の有無は明らかにしていない。

旧市街は何世紀にもわたって風雨に耐えてきたが、今年の豪雨は風化が進む建物に大打撃を与えたようだ。

気象当局によると、雨はしばらく続くとみられる。

フーシ派の報道官はユネスコが救済と修復に一定の責任を負うと主張した。サヌアを奪われた前政権は旧市街を長年放置していた。

旧市街の歴史的建造物を破壊しているのは雨だけでない。

2014年に勃発したイエメン内戦は近代史上最悪と呼ばれる人道危機を引き起こし、この8年で少なくとも16万人が死亡。子供を含む1000万~2000万人が飢餓に直面している。

サウジ主導の連合軍はフーシ派の拠点を攻めつつ首都サヌアなどにミサイルを撃ちこみ、インフラと建物を破壊し尽くした。しかし、絶え間ない空爆と地上戦にもかかわらず戦闘は膠着状態に陥り、壊滅的な人道危機を引き起こしたのである。

旧市街はほとんど手入れされず、放置され、荒廃してきた。

今年の豪雨被害は2020年と同程度になると予想されている。

国連の支援を受ける政府とフーシ派は先週、既存の休戦協定を2カ月延長することに合意した。

2022年8月1日/イエメン、首都サナアの大通り(Yahya-Arhab/EPA通信)
スポンサーリンク