◎西側諸国の駐トルコ大使10人は追放の危機に直面していた。
2021年10月16日/トルコ、イスタンブールの政府庁舎、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領( Francisco Seco/AP通信)

10月25日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、西側諸国の大使10人に対する「ペルソナ・ノン・グラータ」を取りやめ、外交危機を和らげた。

ペルソナ・ノン・グラータは外交団を受け入れる側に与えられる権限のひとつで、一方的に発動可能。発動理由を提示する義務はなく、宣言を受けた大使は外交的地位を剥奪れる。

米国、ドイツ、フランス、カナダ、フィンランド、デンマーク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンの大使は先週、トルコの刑務所に4年以上拘留されている活動家のオスマン・カヴァラ氏の釈放を求めた。

カヴァラ氏は昨年、2013年の全国的な反政府デモに関連する裁判で無罪判決を受けたが、その後まもなく再逮捕され、2016年のクーデター未遂に関与したとして起訴された。カヴァラ氏は関与を否定している。

米国大使館は25日、「受け入れ国の法律を尊重し、同時に外交官は内政に干渉しないという法律を遵守する」とツイートし、他の9カ国もこれに続いた。

国営のアナドル通信社は大使館の声明を「後退」と呼び、エルドアン大統領は「謝罪」を受け入れたと報じた。

エルドアン大統領は25日の閣議後、記者団に、「大使たちは無礼な発言でトルコを怒らせ、パニックに陥った」と語った。「彼らの最初の発言はトルコの法律を無視する極めて無礼なものでした。トルコの民主的かつ独立した法律を尊重しない人は、肩書に関係なく去らなければなりません」

米国務省のネッド・プライス報道官はエルドアン大統領の声明に関するコメントを控えたが、デービッド・サッターフィールド駐大使はトルコにとどまると述べた。

トルコと北大西洋条約機構(NATO)およびEUは様々な問題で対立しており、今回の大使追放危機は新たな混乱の火種になると懸念されていた。プライス報道官は記者団に対し、「バイデン政権は共通の優先事項の解決に向け、これからもトルコと緊密に連携していく」と述べた。

現地メディアによると、エルドアン大統領の声明後、トルコの外交当局はペルソナ・ノン・グラータに関する声明を発表しておらず、危機は解消されたと見なされたという。

アンゲラ・メルケル首相のスポークスマンは記者団に、「エルドアン大統領の発言を認識している」と述べた。

一方、アンカラの米国大使館の近くでは、親政府の抗議者約40人が大使の解任を要求した。ある抗議者は「トルコの内政に干渉するな」と叫んだ。

カヴァラ氏は有罪判決を受けていないにもかかわらず4年以上拘留されており、クーデター未遂に関与したと認められれば、終身刑を言い渡される可能性がある。

欧州人権裁判所は2019年、「カヴァラ氏の拘留は平和的な抗議に対する圧力であり、犯罪の証拠に裏付けられていない」と裁定し、カヴァラ氏の釈放を求めた。

欧州評議会もカヴァラ氏の釈放を求めており、11月末までに釈放しなかった場合、トルコ政府に対する人権侵害訴訟を開始すると圧力をかけている。

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