◎イエメン内戦は近代史上最悪の人道危機を引き起こし、国連は昨年、少なくとも1600万人以上が飢餓の危機に瀕していると警告した。
2022年3月11日/アラブ首長国連邦ドバイ、赤十字イエメン代表のカタリーナ・リッツ氏(Kamran Jebreili/AP通信)

赤十字国際委員会は11日、ロシア・ウクライナ戦争に世界の関心が集める中、中東の最貧国であるイエメンの窮状を忘れてはならないと世界に呼びかけ、支援の継続を求めた。

赤十字のイエメン代表を務めるリッツ氏はAP通信のインタビューの中で、「フーシ派とイエメン政府のために戦うサウジ主導の連合軍の間で囚人を交換する可能性について協議が続いている」と語った。

しかし、戦争当事者はここ数年、取引には応じていない。

イエメンの首都サナアを含む北部地位の大半はイランの支援を受けるシーア派反政府武装勢力フーシの管理下に置かれている。

ハーディー大統領率いる政府軍はサウジ主導の連合軍の支援を受けフーシ派と戦っているが、2014年に勃発した内戦が集結する見通しは全く立っておらず、国連は昨年、少なくとも1600万人以上が飢餓の危機に瀕していると警告した。

リッツ氏はAP通信に、「世界は苦しんでいる国のニーズに平等に応え、最善を尽くす必要がある」と述べた。「赤十字はウクライナの窮状を理解しています。イエメン、アフガニスタン、シリア、イラク、コンゴなども同様です。世界は危機の中にウクライナを加えなければなりませんが、他国のことも忘れてはいけません」

イエメン内戦は近代史上最悪の人道危機を引き起こし、国連などのまとめによると、戦闘で死亡した兵士および民間人は15万人を超え、1000万~2000万人が国内避難民になり、1,100万人以上の子供が人道支援を必要としている。

サウジ連合軍の空爆は民間人にも影響を与えており、少なくとも数百人が死亡し、多くのインフラが破壊された。一方、フーシ派は児童兵を使って国中に地雷を敷設している。

コロナウイルスの大流行も医療機関に圧力をかけており、多くの難民が隣国サウジアラビアを目指して危険な旅に出るものの、その多くがフーシ派の取り締まりを回避できず、一部は拘束されたままと伝えられている。

イエメンの人道危機はロシア・ウクライナ戦争でさらに悪化する可能性がある。イエメン政府は小麦の約40%をロシアとウクライナから輸入している。

リッツ氏は、「小麦の世界的な供給減は、イエメンの人道危機を加速させるだろう」と語った。「政府が取れる対策は限られており、国際社会の支援が必要不可欠です...」

戦争当事者は2020年に囚人の大規模な交換を行ったが、それ以来、交換には応じていない。2018年に締結されたストックホルム合意では15,000人以上の囚人が交換された。

フーシ派は首都サヌアの米国大使館のイエメン人職員を10人近く拘束している。リッツ氏は職員の解放について、「赤十字は彼らの家族を支援する用意がある」と述べたが、家族が名乗り出たかどうかについては言及を避けた。

またリッツ氏は、1月21日にサウジ連合軍が西部の刑務所を空爆し民間人を含む少なくとも87人が死亡した事件について、「フーシ派は赤十字と国連にまもなく空爆が始まると警告していなかった」と述べ、フーシの対応を非難した。

フーシ派は1月17日にサウジの同盟国であるUAE(アラブ首長国連邦)の石油施設に自爆ドローン攻撃を仕掛け、少なくとも3人を殺害した。

リッツ氏は「戦争の責任は当事者にある」と述べたうえで、「命を落とすのは民間人」と強調した。

またリッツ氏は、「赤十字はサウジ主導の連合軍、フーシ派、他の民兵組織と協力し、民間人とインフラを保護するための取り組みを進める用意がある」と述べ、当事者に自制と対話を呼びかけた。

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