◎主要メディアによると、乗組員のイギリス人1人とルーマニア人1人が死亡したという。
イスラエル政府は30日、オマーン沖で発生した石油タンカーへの攻撃にイランが関与したと述べ、非難した。
リベリア籍船の石油タンカー、マーサストリート号は7月29日夜に攻撃を受けた。運航会社はイスラエルの海運業界の大物である億万長者のイアル・オファー氏が会長を務めるゾディアックグループ傘下のゾディアック海事(本拠:ロンドン)。ロイズリストによると、所有者は日本に本拠を置く日本郵船グループに属する太平洋海運株式会社。
主要メディアによると、攻撃で乗組員のイギリス人1人とルーマニア人1人が死亡したという。
米国防総省は30日、「タンカーはドローン攻撃を受けたようで、政府または民兵グループが関与している可能性がある」と述べた。
一方、イスラエルのヤイール・ラピッド外相は攻撃を「イランのテロ」と呼び、厳しく非難した。ラピッド外相は声明の中で、「イランはイスラエルだけでなく世界の脅威であり、いかなる理由があろうと攻撃を容認してはならない」と述べた。
ただし、攻撃の詳細は明らかにされておらず、イラン政府はイスラエルの申し立てに対するコメントを発表していない。
ゾディアック海事は30日遅くの声明で死亡した乗組員2人に哀悼の意を表し、「マーサストリート号は乗組員の管理下にあり、米国海軍の護衛を受け安全なエリアに向けて航行している」と述べた。
イギリス政府の報道官は「事実を確認している」と述べ、犠牲者に哀悼の意を表した。
マーサストリート号はタンザニアのダルエスサラームからインド洋北部を進み、アラブ首長国連邦(UAE)を目指していた。イスラエルとイランの船舶は今回攻撃が発生した海域周辺で多くの事件に巻き込まれているが、死傷者が出ることは稀。
AP通信によると、匿名の米国当局者は、「攻撃に使用されたのはいわゆる自殺ドローン(自爆するドローン)と思われるが、関与した者は現時点では分からない」と述べ、イスラエル政府の匿名の当局者は攻撃をイランのテロと断言し、「イスラエルに対する攻撃は続くだろう」と述べたという。
イスラエルはイランを反イスラエル、反ユダヤ主義のテロリストと見なしているのに対し、イランはイスラエルを侵略者と呼び、各地で攻撃を仕掛けている。
一方、イエメンでイスラム過激派組織のフーシ派と戦っているサウジアラビア主導の連合軍は30日遅くの声明で、「サウジアラビアの商船に対する敵のドローン攻撃を阻止した」と発表した。イランはフーシ派に兵器を提供している。
イスラエルはイランの核開発を標的にした一連の大規模な攻撃(核科学者暗殺、核施設に対する攻撃など)に関与したと疑われている。また、イラン海軍の軍艦は先日、オマーン湾で何者かの攻撃を受け沈没した。
主要メディアによると、現在ウィーンで行われている包括的共同行動計画(JCPOA/イラン核合意)の回復に向けた交渉は完全に行き詰まっているという。アメリカのドナルド・トランプ前大統領は2018年に合意から撤退し、イランに厳しい経済制裁を科し、イランは核開発を加速させると誓った。
クウェートを訪問していたアントニー・ブリンケン米国務長官は29日、「ウィーンで行われている核合意の復帰に向けた交渉を無期限に続けることはできない」とイランに警告していた。
イラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。イランは濃縮度を60%以上まで引き上げたうえで、金属ウランの製造を開始した。金属ウランは核兵器の材料に使われる可能性がある。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用