◎ハッサン・ディアブ暫定首相「私を起訴するのであれば、議会(ヒズボラ)の承認を得なければならない」
◎レバノン政府を支援した米連邦捜査局(FBI)によると、爆発を引き起こしたのは「硝酸アンモニウム約500トン」だったという。なお、FBIは調査結果を公表しておらず、硝酸アンモニウムの保管量が当初の発表(2,750トン)と合致しない理由は明らかにされていない。
2020年1月21日 AP通信/レバノンのハッサン・ディアブ首相

12月29日、レバノンのハッサン・ディアブ暫定首相は、「8月4日のベイルート港の爆発における過失の罪で起訴されたことにショックを受けた」と述べ、「在職期間中、港に保管されていた危険物質に対する最低限の責務は果たした」と主張した。

8月4日にベイルート港で発生した爆発の死亡者は200人以上、負傷者は数千人、推定30万人が住居を失いホームレスになったと伝えられている。

ディアブ氏は8月10日に辞任を表明したが、イスラム過激派組織ヒズボラを含む関係組織が新内閣に合意しなかったため、同氏は暫定首相として指揮を執ることになった。

ディアブ氏はAP通信の取材に対し、「私を起訴するのであれば、議会(ヒズボラ)の承認を得なければならない」と述べた。

今月初め、レバノンの検察当局はディアブ氏と3人の元閣僚を起訴すると発表したが、同氏はファディ・ソーワン裁判官の出頭要請を却下している。

ハッサン・ディアブ暫定首相:
「質問はいくらでも受け付ける。私はソーワン裁判官を歓迎するだろう。しかし、起訴は認められない」

2020年8月6日 AP通信/レバノン、首都ベイルート

ディアブ氏はソーワン裁判官に対し、「議会に証拠を提出し、ヒズボラを含む関係者の承認を得なければならない」と述べたという。

また、2020年6月3日にベイルート港の「硝酸アンモニウム2,750トン」の存在を初めて知り、処理に向けた手続きを開始したばかりだったと主張した。

ハッサン・ディアブ暫定首相:
私は何より憲法を尊重する。私を起訴したいのであれば、証拠を議会に送りなさい。議会が許可すれば、私は起訴されるだろう」

「私は就任初日から腐敗と戦ってきた。なぜこのような事態になったのか。なぜ彼らは私を標的にしたのか。私には到底理解できない

ディアブ氏は、シリアのアサド政権と強いつながりを持つヒズボラおよびその他の関係組織の支援を受け、1年前に首相に任命された。

ディアブ氏は、「硝酸アンモニウムがレバノンに運び込まれ、6年間保管されることになった経緯に焦点を当てるべきだ」と述べた。

またディアブ氏によると、米連邦捜査局(FBI)が行った調査の結果、8月4日の爆発は「硝酸アンモニウム約500トン」が引き起こしたものと判明したという。

FBIはベイルート港の調査結果を公表しておらず、硝酸アンモニウムの保管量が当初の発表と合致しない理由は明らかにされていない。

2020年8月6日 AP通信/レバノン、爆発地点周辺の様子を視察するフランスのエマニュエル・マクロン大統領

ディアブ氏はインタビューの中で、「爆発によって悪化した国の経済を立て直すために、今すぐ新政権を樹立しなければならない」と訴えた。

フランスを含む関係国および人道団体は、爆発に巻き込まれた市民を支援してきた。しかし、議会は市民の現状には目もくれずに解散し、数十万人が路頭に迷ったと伝えられている

2020年8月6日 AP通信/レバノン、首都ベイルート

ベイルート港で発生した爆発について

・硝酸アンモニウム2,750トンをベイルート港に運び込んだ貨物船は「Rhosus(ローサス号)」。

・ローサス号は1986年に築造された。

・ローサス号の元所有者はロシアの実業家、イゴール・グレシュキン氏。

・2013年7月、モザンピーク共和国に向け航行中だったローサス号は、セビリア港で安全対策の欠陥(計14カ所)を指摘される。積み荷は硝酸アンモニウム2,750トンだった。

・硝酸アンモニウムの供給会社は「Rustavi Azot LLC」。顧客はモザンピーク共和国の国際銀行。当行によると、商業用爆薬を製造する国内の企業に代わり、硝酸アンモニウムを購入したという。

・2014年2月、ローサス号がベイルート港に入港。この時、ローサス号は約100,000ドルの未払い請求を抱えており、ベイルートの港湾当局に「差し押さえられた」。

・2014年6月頃、乗組員たちは、ローサス号の船内に危険物質が積まれていることを港湾当局者や関係者に警告していた。

・2014年9月、ベイルートに足止めされていた船長と乗組員、帰国。

・港湾当局は司法に複数回書簡を送り、硝酸アンモニウムの再輸出または販売の許可を求めていたと主張。しかし、地元メディアの調査報道記者、リヤド・コベス氏は司法に提出した書簡に問題があったと指摘。裁判所は間違いを何度も指摘し、さらなる情報を求めていたという。

・2020年8月4日、爆発発生。

・200人以上が死亡、数千人が負傷、推定30万人が住居を失いホームレスになった。

・国連の調査によると、爆発で住宅約20万戸、その他の建物約4万戸が被害を受け、そのうち3,000戸は立ち入りできないほど深刻なダメージを負ったという。

・2020年11月24日、レバノンの検察当局、シーア派イスラム原理主義組織ヒズボラの要人と伝えられているベイルート港の元税関職員などを起訴

・2020年12月、レバノンの検察当局、ハッサン・ディアブ首相と3人の元閣僚を起訴

・2020年12月、レバノン政府を支援した米連邦捜査局(FBI)によると、爆発を引き起こしたのは「硝酸アンモニウム約500トン」だったという。なお、FBIは調査結果を公表しておらず、硝酸アンモニウムの保管量が当初の発表(2,750トン)と合致しない理由は明らかにされていない。

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