WHOは1mの確保を推奨している
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、同国の定めた社会的距離のルールを皆で議論し、ガイドラインに明記された「2m」の削除もしくは見直しを求められた。
ロックダウンの段階的な解除に伴う営業再開は、ガイドラインに明記された社会的距離2mを遵守しなければならない。しかし、その距離はあまりに遠く(長く)、宿泊業や旅行業などを含むホスピタリティ産業から実行不可能と指摘、反発を招いた。
ガイドラインは7月4日までに完成する予定。以降、レストランやカフェなどが段階的に営業を再開する。
元保守党党首のイアン・ダンカン・スミス卿はBBCの取材に対し、「イギリスの感染状況を見れば、ガイドラインが適正であることは明らかである」と述べた。
これに対し、「見直しの有無に関わらず、首相の政治判断は失敗し、経済回復を遅らせるだろう」と述べる者たちも多い。
イギリス政府は、コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、他者とは少なくとも2m離れるようアドバイスしている。これはWHOの推奨する距離(1m)の2倍、欧州諸国の中でも抜きんでている。なお、政府の科学顧問は、「社会的距離を2mから1mに短縮すれば、感染リスクは10倍に跳ね上がる」という。
他者との距離を広くとれば、当然感染リスクは下がる。しかし、パンデミックの影響でボロボロになった同国の経済状況を考慮すると、過剰すぎる対策は自分の首を絞めることになりかねない。
恐らく、2mの距離を確保した状態でレストラン、カフェ、バーなどを再開しても、収容できる人数は50%以下。業界関係者は、「2mを保った状態で営業し、利益を上げることができたら奇跡である。国民の命を守りたい気持ちは大いに理解できるが、2mはやり過ぎだ。サービス業では、レジや接客対応もままならないだろう」と述べた。
業界団体UKホスピタリティの最高経営責任者を務めるケート・ニコルズ氏も、「2mルールを適用すると、店舗収益は70%以上減少するだろう。しかし、WHOの推奨する1mであれば、減少幅は25%~40%に圧縮される」と述べた。
・社会的距離の壁/仕事を失ったセックスワーカーたち
・飛行機と社会的距離/三密を回避したい航空会社の苦悩
・WHOガイドライン見直し/感染予防対策としてマスク着用を推奨
・イギリスとコロナウイルス/死を招いた3月のスポーツイベント
社会的距離
保守議員で構成される1922年委員会の議長を務めるグラハム・ブレイディ卿は、ガイドライン見直しレビューを歓迎し、1mへの修正が必須であると述べた。
社会的距離のルールは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの全地域に適用されており、2mの見直しを呼び掛ける声は日増しに強まっていた。しかし、現時点においても、ジョンソン首相は見直しに否定的な考えを示している。
今週初め、スコットランドの最高医療責任者を務めるグレゴール・スミス博士は、「コロナウイルスに感染するリスクは、他者との距離が縮まるほど増加する。今は感染を確実に抑えることが重要であり、バランスのとれた賢明なガイドラインだと確信している」と述べた。
また、北アイルランドのアーレン・フォスター首相も、2mの社会的距離が最も安全である、と示唆した医学的アドバイスを公表した。なお、イギリスでは7月4日から一部ショップの営業を再開する予定だが、ウェールズ、スコットランドおよび北アイルランドは再開日を示していない。
【世界各国の社会的距離ルール】
1.0m:中国、デンマーク、フランス、香港、リトアニア、シンガポール、日本、WHO
1.4m:韓国
1.5m:オーストラリア、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポルトガル
1.8m:アメリカ
2.0m:カナダ、スペイン、イギリス
社会的距離を確保することはとても大切である。しかし、距離に固執しすぎるのも問題だと思う。イギリス政府は2mの確保を”必須”としているが、日常生活の中でそれを確保し続けることはまず不可能である。満員電車での出勤が当たり前の東京では、2mどころか2mmの確保もままならない。
しかし、”可能な限り”距離を保ち、それが不可能な場合はマスクを着用し、素手で物に触らないなどの対策を講じることで、感染は確実に抑えることができる。
”可能であれば”2m以上の距離を確保したい。しかし、どうしてもそれを確保できない場面では、別の対策(マスク、フェイスシールド、客と従業員間の仕切りなど)を組み合わせればよい。また、屋内で営業する店舗であれば、定期的な喚起を心掛ける、テラス席を利用するなどの対策も効果的だ。
イギリス政府は4万人以上が命を落とした責任を感じ、第二波の発生を防ぐべく、安全に特化した感染予防対策を準備している。その気持ちを大いに理解したうえで、国民と一丸となって話し合い、よりよりガイドラインを作らねばならないだろう。
また、国民自身も意識を改めねばならない。ロンドンの様子を見ると、マスクを着用している方があまりに少ない。ジョージ・フロイド氏の抗議活動中においては、皆が一カ所に集まり大声で抗議の声を上げていた。抗議活動自体を批判するつもりはないが、マスクを着用し、プラカードを掲げ、他者と距離を保てば、コロナウイルスを意識しつつ抗議している様子を世界に発信できるだろう。
13日、ジョージ・ホプキンス大学の調査によると、イギリスの累計感染者数は29万人超、41,662人が死亡した。なお、前日の24時間当たりの死者数は181人だった。
Coronavirus: Boris Johnson launches review into 2m social distancing rule.
— Rob McDowall 🏴 (@robmcd85) June 14, 2020
As usual Iain Duncan Smith aka The Grim Reaper - is pushing for a course of action which endangers everyone for the sake of £GBP. https://t.co/vNHd7fFq5F