◎イタリアは水資源を失い続けている。
2022年7月12日/イタリア、ミラノ郊外の川(Luca Bruno/AP通信)

イタリア政府は13日、北部地域などの干ばつにより灌漑(かんがい)用の水路が干上がり、全国の農作物の3割が危機に直面していると警告した。

パトゥアネッリ(Stefano Patuanelli)農業相は国会演説で、「イタリアは水資源を失い続けている」と指摘し、状況は今後数年でさらに悪化すると警告した。

農業省によると、同国は1991年~2020年の間に、1921年~1950年と比較して19%の水資源を失ったという。

パトゥアネッリ氏は干ばつが常態化しつつあることに懸念を表明し、水資源の喪失に歯止めをかけなければイタリアの農業は大打撃を受けると指摘した。

アフリカ大陸からもたらされる熱波により、国内最長の河川ポー川を含む農業に欠かせない重要河川の水量が激減し、農作物を脅かしている。政府は今月4日、北部地域の広い範囲に干ばつ非常事態を宣言した。

この干ばつは冬の降雪量が異常に少なく、夏に河川や貯水池に水を供給する雪が山間部に積もらなかったことに起因している。

アルプス山脈のマルモラーダ(Marmolada)山で今月初めに発生した氷河の崩壊事故も、熱波による高温が原因と考えられている。

パトゥアネッリ氏は、「このような干ばつは現在、おおむね5年周期で発生しているが、発生周期は確実に縮まっており、周期が短くなるほど致命的な結果をもたらすと予測している」と語った。

地元メディアは農業関係者の話を引用し、「ポー川の灌漑用水路は全国の農業生産の3割を支えている」と報じている。

ボー川流域の水路はトウモロコシ、米、トマト、パルメザンチーズや生ハムを作る施設などに水を供給している。

イタリアの農業組合(Copagri)によると、全国の農家は水不足とロシアのウクライナ侵攻による燃料価格の高騰で大打撃を受けており、この数カ月の損失額は全国で30億ユーロ(約4140億円)にのぼるという。

北部ヴェネト州の一部自治体は給水制限を開始している。ミラノは公共の装飾用噴水の栓を閉める条例を施行した。中南部地域も影響を受け始めている。

首都ローマの市内を流れるテベレ川では川底に生えた植物が水面に顔を出し、遊覧船の運航に支障が出ると懸念されている。

2022年7月12日/イタリア北部の川沿いに造られたプール(Luca Bruno/AP通信)
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