16日、ハンガリーとポーランドは、民主的規範と経済援助を結びつける各国の意見に反対し、EU予算の承認を阻止した。
この予算（1.8兆ユーロ）には、コロナウイルス救済基金の7,500億ユーロ（約92兆円）が含まれている。
ブリュッセルに集まった27か国の大使は、両国が拒否権を行使したため、予算を承認することができなかった。
これにより、コロナウイルス対応に奮闘している各国への予算注入は当面の間見送られることになる。
ハンガリーとポーランドは、非政府組織、メディア、司法への政治介入を厳しく非難され、国際的な監視に直面してきた。
両国は、確立された民主主義の規範に違反したとして、EUによる調査を現在も受け続けている。
EU加盟国は、2021年から2027年までの予算、約1.1兆ユーロとコロナウイルス救済基金について、7月のEU首脳会談で合意していた。
しかし、「予算の承認」は全会一致を条件としており、ハンガリーとポーランドは土壇場でこれを阻止した。
ヒューマン・ライツ・ファースト、人権および市民社会プログラムのメリッサ・フーパ―氏はABCニュースの取材に対し、「両国の予算ブロックは驚くことではない」と述べた。
メリッサ・フーパ―氏：
「拒否権は彼らの意思を伝えるメッセージツールである。メディアや司法などの扱いにいちいち口出しするなと言いたいのだろう」
ハンガリーとポーランドはEU予算を拒否した。しかし、両国はその予算に大きく依存している。
2018年のEU予算のうち、63億ユーロ（約7,800億円）がハンガリーに投入されている。これは同国のGDPのほぼ5％に相当する。
同年、ポーランドはEUから160億ユーロ（約2兆円）、GDPの約3.5％近くの予算を受け取っている。
ハンガリーの報道官、ゾルタン・コヴァーチ氏は、「民主的規範と経済援助を結びつける各国の姿勢と予算計画を支持することはできない」と述べた。
ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は、会議前に拒否権の行使をほのめかしていた。
ポーランドのズビグニエフ・ジオブロ法務大臣は記者会見で、「規範と法の問題は単なる口実に過ぎない」とEUの対応を非難した。
ズビグニエフ・ジオブロ法務大臣：
「EUの主張を受け入れることは奴隷制を認めるに等しい。主権を制限する危険な行為だ」
一方、オーストリアのセバスチャン・クルツ首相は投票後の記者会見で、「法の支配の原則を守ることは何より重要だ」と述べた。
EU予算管理委員会のヨハネス・トーン氏は声明の中で拒否権について、「失望した」と述べた。
ヨハネス・トーン氏：
「加盟国は政治的責任を負い、予算を完成させるために必要な措置を講じなければならない」
「コロナ基金は傷ついた市民や中小企業を助けるものである。政府のイデオロギーで可否を決めるべきではない」
ヒューマン・ライツ・ファーストのメリッサ・フーパ―氏は、アメリカのトランプ大統領がEUの行き詰まりを助長していると述べた。
メリッサ・フーパ―氏：
「トランプ政権下のアメリカ政府は、ハンガリーとポーランドの姿勢を奨励したと思う」
「トランプ大統領と仲の良い首脳がEUの内戦を引き起こした」
トランプ大統領は、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相の反移民政策を絶賛している。また、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ極右大統領が再選した際には、「私の友人ドゥダが再選した。歴史的な勝利おめでとう。国防や貿易、エネルギー、通信などの重要問題について、引き続き協力していくのが楽しみだ」と熱いメッセージを送っている。
