共和党議員や保健当局からの批判を受け、マスクとの不仲を解消した

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、保健当局からのマスク着用指導に反対し続けてきた。しかし、共和党議員などから相次いで批判を受け、態度を軟化させつつある。

トランプ大統領は人前でのマスク着用を避けてきた。マスクの有効性は認めつつも、社会的距離の確保と政府の発表するガイドラインさえ守れば問題ないというスタンスを崩さず、先日数カ月ぶりに開催した選挙キャンペーン時も着用することはなかった。

6月30日の上院委員会開催前。共和党上院議員のラマー・アレクサンダー氏はトランプ大統領に対し、「公の場でマスクを着用してほしい」と要請した。

7月1日、トランプ大統領はフォックス・ビジネスの取材に応じ、マスクを着用するのか問われた。それに対し、「私はマスクを着用するだろう。もし、国民が厳しい状況下に置かれたら、私は大統領としてマスクを着用しなければならない」と述べた。

フォックス・ビジネスは、公の場でマスクを着用することに問題があるのかと尋ねた。トランプ大統領は、「問題ない。皆、私が誰であるかを知っている。顔の一部が見えなくてもノープロブレムだ。ローン・レンジャーは顔全体にペイントを施しているが、皆、彼のことを知っている」と答えた。

欧州を中心に、マスク着用義務化を進める国が増えている。しかし、一部の専門家は「違反者から罰金を徴収すれば、皆、イヤでもマスクをつける。しかし、イヤなものを法によって強制するのではなく、”マスクをつけると感染予防に効果があるという認識”を国民に持ってもらわなければならない。強制すれば、必ず反発する者が現れる。中国や韓国、日本はマスクが文化に定着し、義務化などせずとも皆、それを着用する。認識を改めることが大切だ」と指摘する。

トランプ大統領はアメリカ全土でのマスク着用義務化を否定し、「アメリカは広く、人の少ない地域が多々ある。全土で着用を義務化する必要はないだろう。ただし、人々がそれを必要と考えるのであれば着用すべきだと思う。また、ガイドラインで示した通り、人の集まる施設などに立ち入る際は、着用した方がよい」と語った。

フォックス・ビジネスはトランプ大統領に対し、「コロナウイルスは消えると数カ月前に発言したが、あの考えに変わりはないか?」と問われ、「間違いなく消えるだろう。我々はウイルスに勝利する。いつか消えるのは当然ことだ」と答えた。

7月3日にサウスダコタ州キーストーンのラシュモア山国立記念公園で、トランプ大統領主催の独立記念日パーティが開催される。出席する共和党支持者たちはマスク着用を求められず、また、社会的距離の確保についても強制されない。しかし、国民に「模範」を示すのであれば、マスク着用状態でスピーチすべきだろう。

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トランプマスク

4月、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、公衆の場でのマスクやバンダナ着用を推奨し、コロナウイルスの感染拡大防止に効果を発揮するだろうと述べた。

これに対しトランプ大統領は、「私にマスクは必要ない。私は健康だ。感染するなどあり得ない。しかし、マスクを必要とする医師や看護師は着用すべきだろう。必要な人が必要な時に着用すればよい。いずれにしても、私はCDCの推奨に従うつもりはない」と記者団に答えた。

また、「私は大統領、首相、独裁者、王、女王などに挨拶する際、自分の顔を相手に見せる。マスクを着用するなどあり得ない。ホワイトハウスのチームは社会的距離を保ち、感染予防対策を徹底している。私たちはウイススを持っていない」と付け加え、人と人が接する首脳会談や各種会議の場でもマスクは絶対に着用しないと強調した。

また、WHOや政府の発表するガイドラインに記載されたマスク着用の有効性については、公式の健康指導であることを認めつつも、最後は個人で決断すべきであると繰り返し強調した。

5月、トランプ大統領はミシガン州のマスク工場を見学。記者団およびホワイトハウス関係者は全員マスク着用を義務付けられた。この時大統領もマスクを着用していたようだが、記者会見を行う際には取り外しており、「マスコミにマスク姿を撮影されたくなかった。あと、君たちは私のことをよく知らないだろう。マスクをつけていると、相手の表情を読みとりにくい。私の言うことを正しく報道することが大切だ」と言い放った。

6月、トランプ大統領はウォール・ストリート・ジャーナルの取材に応じ、「支持者へのアピール目的だけでマスクを着用する愚か者がいる。マスクを着用しても支持率の底上げにはつながらない。無駄なアピールばかりするのではなく、真面目に働くべきだ。私はコロナを打ち負かし、大統領選挙で勝利を収める」と述べた。

大統領の上級顧問を務めるイヴァンカ・トランプ女史もマスクに否定的な立場をとっていたが、先日公衆の場で着用している姿を撮影された。専門家は、「トランプ大統領の家族が皆、マスクを嫌がっているわけではない。イヴァンカ女史も、コロナウイルスの危険性”ぐらい”は認識しているだろう」と述べた。

ABCニュースの行った調査によると、アメリカ人の89%がマスクやバンダナなどを着用し外出した、と回答。なお、この調査は先週実施され、4月中旬から約20%上昇したという。

トランプ大統領はマスク着用を軽視し、誤った情報を全国に拡散し続けてきた。民主党議員からその都度批判されるも、経済活動再開と11月の大統領選挙を目指し、最短コースでアメリカを導いてきた、と自負しているはずだ。

しかし、コロナウイルスのパンデミックは終息どころか勢いを増し、手の付けられないレベルに到達しつつある。大統領を支持する共和党議員や保守系メディアも、マスク着用の重要性などを大々的に呼びかける感染防止活動を開始した。

現在、マスク着用を呼び掛けている共和党議員は、マイク・ペンス副大統領、ミッチ・マコーネル上院議長、ミット・ロムニー上位議員、エリザベス・チェイニー下院議員、ラマー・アレクサンダー上院議員などである。

6月30日、ラマー・アレクサンダー上院議員は記者団に対し、「マスクを着用するという”簡単な慣行”が政治論争の一部になってしまったことを残念に思う。大統領がマスクをつけなければ、共和党支持者の多くもそれに従う。反対派や民主党支持者はマスクをしっかり着用するだろう。コロナウイルスから身を守ってくれる防護具と政治は分けて考えるべきだ。私はトランプ大統領にマスクを着用してほしい」と述べた。

同日、ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は上院委員会の中で、「24時間当たりの感染者数が100,000人を超えても驚かない。政府は統制をとることに失敗し、ウイルスの蔓延を招いた。政治家が右往左往していれば、国民も混乱する。また、国民自身もマスクや社会的距離の重要性をもっとしっかり認識すべきだ」と警告した。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月1日時点のアメリカの累計感染者数は約274万人、13万人以上が死亡した。

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