南西部での感染再拡大

コロナウイルスの世界的パンデミックから約4か月。欧州、アジアの一部地域、オセアニアはウイルスの鎮圧に何とか成功しつつあるが、アメリカは新規感染者の急増を抑えることができていない。

現在、24を超える州で感染者が急増しており、このうち、テキサス州、フロリダ州、アリゾナ州、カリフォルニア州が新たなホットスポットになると懸念されている。

また、ケースの増加は誰の目にも明らかだが、各州の知事、医療専門家の対策案にはバラつきがあり、その効果を疑問視する意見も出ている。

PCR検査

一部の専門家はPCR検査体制が充実し、無症状の陽性者を発見できるようになった結果、ケースが増加したと指摘する。

同国の検査能力は間違いなく向上しており、6月の検査実績は4月と5月の2倍にまで増加した。しかし、各州の陽性率(陽性者/検査総数)は軒並み5%以上を記録し、20%に迫る地域も出ている。なお、ウイルスの流行を抑えるためには、陽性率5%以下を継続することが望ましい。

検査能力が拡充されたことは素晴らしい。しかし、陽性率を下げる、すなわち、ウイルスの蔓延を食い止めなければ、現状打破は難しいだろう。6月30日時点で、テキサス州、フロリダ州、アリゾナ州、カリフォルニア州は陽性率8%~12%程度を維持している。

テキサス州

南部テキサス州の感染状況はここ2週間の間で急速に悪化し、1日当たり6,000人程度の新規感染者を記録している。

当局は6月29日に1日当たりの入院患者数が5,913人を記録したことで、州の病院がパンクするかもしれない、と懸念を表明した。また、感染者数が現状を数週間維持すれば、人口の多いヒューストンは「ニューヨーク以上の被害を受ける」と指摘されている。テキサス小児病院のワクチン開発センター責任者を務めるピーター・ホテズ氏はBBCの取材に対し、「ブラジルの大都市に匹敵する深刻な事態を招くかもしれない」と述べた。

グレッグ・アボット共和党州知事は、4月30日からロックダウンを緩和。飲食店や商業施設はビジネスを再開した。しかし先週、知事は全てのバーを閉鎖し、飲食店の入場者数を75%から50%に下げるよう命令した。

知事はメディアの取材に応じ、「もし私が過去に戻って何かをやりなおせるなら、まずバーの再開を遅らせるだろう。バーでは人が密集し、向かい合い、大声で話し、ウイルスを拡散させる」と述べた。なお、満員のレストランやバーがクラスターの発生源になる可能性は数カ月前から指摘されていた。

テキサス州の一部の郡では、感染者の大多数が30歳未満であり、特定のエリア(バー、クラブなど)で感染する者が増えている、と当局は警戒を強めている。

同州の一部はマスク着用をルール化し、社会的距離の確保と合わせた感染予防対策の徹底を住人に呼び掛けている。

フィラデルフィア・インクワイアラーの調査によると、ニューヨーク州とイリノイ州を含む11の州がマスク着用ルールを設定。いずれの州も、ルール適用から2週間で新規感染者が25%減少したという。

一方、一部の者のみがマスクを着用する州では、2週間で新規感染者が平均70%増加することが分かっている。

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フロリダ州

フロリダ州のロックダウンは5月4日に解除された。ただし、人口の多い一部の都市では、期限を延長している。

これに伴い、商業施設、飲食店、カフェ、ジムなどは一斉に営業を再開。ディズニー関連施設とビーチは大いに賑わった。結果、ここ2週間で感染が急拡大し、1日当たり8,500件の新規ケースを報告。ニューヨーク・タイムズ紙によると、過去2カ州間で1日当たりの新規感染者は5倍に増加したことが分かったという。

ただし、感染者は18歳~35歳までの年齢層に集中しており、死者数はそれほど増加していない。ロン・デサンティス共和党州知事は、25歳~34歳までのPCR検査陽性率が20%を超えていると指摘。若年層に対し、社会的距離のルールおよび感染予防対策の徹底を呼び掛けた。

当局も、密閉空間、混雑した場所、近距離での会話が感染を拡大させると強調し、ガイドラインに従い行動してほしいと訴えた。

マイアミ、フォートローダーデール、パームビーチは、独立記念日を祝う週末もビーチを閉鎖する。マイアミデイド郡のカルロス・ヒメネス市長はBBCの取材に対し、「マスクの着用を徹底し、ガイドラインに従い、50人以下の集会を禁止する。今年の記念イベント(花火大会など)は、全て中止されるだろう」と述べた。

アリゾナ州

アリゾナ州は国内で最も深刻な状況に直面するかもしれない。

同州のPCR検査陽性率は24%を超えている。これは感染爆発が起きた際のブラジルやペルーより高い数字である。

ダグ・デューシー共和党州知事は、5月15日にロックダウンを解除した。以降、レストラン、バー、カジノ、ジム、ゴルフクラブ、スイミングスクールなどが一斉に営業を再開。なお、マスク着用や社会的距離のルールは義務化されなかった。

Covid出口戦力トラッカーによると、過去2週間で1日当たりの新規感染者数は85%増加し、6月29日土曜日には、過去最高の3,500件を記録した。

当局のデータによると、累計感染者(約80,000人)の大多数が20歳~44歳に集中している。しかし、総死者数(約1,600人)の75%は65歳以上の高齢者が占めているという。

同州では、当局による健康指導に反発するアンチロックダウンおよびアンチマスク集会が頻繁に催されている。

AZセントラル病院は、病床の占用率がここ2週間で急上昇し、このままのペースで感染者が増加すれば、医療システムは崩壊すると警告した。

6月29日、民主党議員と公衆衛生当局から罔批判を受けたデューシー共和党州知事は、バー、ナイトクラブ、ジム、映画館、ウォーターパークに30日間の営業停止を指示した。

カリフォルニア州

人口4,000万人のカリフォルニア州は、ロックダウンにより大ダメージを受けている。

3月19日に規制を発動して以降、街は完全に封鎖された。しかし、早めに対策を講じた結果、ニューヨークやニュージャージーのような事態には発展せず、早期のロックダウンが大きな成果を上げると証明した。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、巨大都市ロサンゼルス郡の累計感染者数が10万人を突破(6月30日時点)。アメリカ最大のホットスポットになった。地元の保健当局者は、郡の140人にひとりがウイルスを保菌している可能性がある、と警告した。

州当局は、ロックダウン解除後にイベントや集会が増加し、感染拡大につながったと指摘する。また、ジムやレストランなどの営業を許可したものの、社会的距離のガイドラインに従わない店舗が散見されたいう。

クラスターは刑務所、要介護施設、農村部でも発生した。サンフランシスコ沿岸に位置するサンクエンティン刑務所では、3,500人の受刑者のうち約1,000人がコロナウイルスに感染した。

専門家は、ジョージ・フロイド氏の死による数千人規模の抗議活動が同州の各地で開催されたことで、感染拡大に拍車がかかったと指摘した。

6月30日、ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は記者団に対し、「1日当たりの新規感染者数が100,000人を超えても驚かない。私たちは統制をとることに失敗した。皆がマスクを着用し、社会的距離のルールを遵守しなければ、感染者は際限なく上昇し続けるだろう」と述べた。

同日、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は、同州内に立ち入る際の検疫(14日間の自己隔離)対象州を拡大した。

ニューヨーク州への立ち入り時に検疫を必要とする16州は、「アラバマ州、アーカンソー州、アリゾナ州、フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テキサス州、ユタ州、カリフォルニア州、ジョージア州、アイオワ州、アイダホ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ネバダ州、テネシー州」である。

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