コロナウイルス／次の震源地、ラテンアメリカ

ラテンアメリカの感染者数が激増中、各国の保健当局は警戒を強めている

南米最大の震源地になったブラジルでは、感染者数が25万人を超えた。メキシコ、チリ、ペルーなどでも大規模な集団感染、クラスターが頻発しており、保険当局および医療関係者は対応に苦慮している。

欧州では段階的なロックダウンが進み、感染者数が150万人を超えたアメリカでも、パンデミックはジワジワと抑え込まれつつある。しかし、ラテンアメリカやアフリカでは感染者の増加に歯止めがかからず、ＷＨＯは同地域が次の震源地になると警告している。

2月26日、ラテンアメリカ（ブラジル）で初めて感染者が”公式に”確認された。しかし、ウイルスは1月の時点で同エリア内に侵入していた、と考えられている。それから約3カ月、パンデミックはラテンアメリカ全域に広がった。

欧州疾病予防管理センター（ＥＣＤＣ））によると、同エリア内で”公式に”確認された感染者数は50万人を突破、30,000人以上が死亡した。

最も感染が深刻なブラジルでは、これまでに約18,000人が死亡。なお、自宅や路上で死亡した者はカウントされていない。メキシコの感染状況も深刻な状態にある。6,000人以上が死亡し、貧困地域の医療体制は停止（崩壊）状態、政府および地方自治体による早急な対応と支援が求められている。

ペルーの感染者数も右肩上がりで増加し続けており、先日10万人を超えた。チリとエクアドルも同様、一部地域では収束に向かいつつある、という意見も出ているが、検査体制はほとんど整っておらず、政府も実態を把握しきれずにいる。

・ブラジル／パンデミックを放置したボルソナロ大統領の罪
・コロナウイルス／増加し続けるブラジルの死者数
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感染のピークはまだ先

欧米、アジア、オセアニア地域などのパンデミックが収まりつつあることは、ＷＨＯおよびジョンズ・ホプキンズ大学の公表する数字からも明らかである。しかし、ラテンアメリカでは3月から4月にかけて感染者数が緩やかに増加。5月に入り、グラフの上昇曲線は一段階大きくなった。

死者数についても同様である。ブラジル、メキシコ、ペルーの累計死者数は約2週間で倍になり、その勢いを現在も維持している。

専門家たちは、ラテンアメリカの感染ピークが数週間後に訪れると予想している。ペルーの首都リマの集中治療用ベッドは、現時点で約80％が使用中。チリの首都サンティアゴは約90％。各国の首都、医療体制が比較的整っている地域でも、今の勢いで感染者数が増加し続けると、医療崩壊は免れないという。

エクアドルの医療システムは既に崩壊しており、感染者を収容できない状態に陥っている。一部の地域では、遺体の入った袋が路上に放置されている。そして、市民（家族）はそれを自分たちで埋葬しなければならないという。

ペルー政府のコロナウイルス対策チームを率いるパイラー・マッツェッティ氏はＢＢＣの取材に対し、「我々は非常に厳しい戦いを強いられている。これは戦争だ」と述べた。

メキシコとブラジルは、他のラテンアメリカ諸国より”比較的”厳格なロックダウンを継続している。しかし、ウイルスの封じ込めに失敗した現状を見れば、対応が不足していることは明らかだ。特にブラジルのボルソナロ大統領は、一貫してコロナウイルスおよびロックダウンを軽視、その結果が”今”である。

ハーバード大学グローバルヘルス科のマルシア・カストロ教授はＢＢＣの取材に対し、「ブラジルの感染防止対策は理想とは程遠い状態にある。特に、国民を導かねばならないリーダーシップの欠如は致命的なレベルと言ってもよい」と述べた。

ただし、ブラジルよりはるかに厳しいロックダウンを実行しているアルゼンチンとウルグアイは、他国に比べると感染者の抑制に成功している。カストロ教授は、厳格なロックダウン、政府のリーダーシップ、そして支援が他のラテンアメリカ諸国にも必要である、と述べた。

チリは政府、地方自治体、医療関係者が協力し、1,000人あたり21人までＰＣＲ検査率を上昇させている。メキシコの検査率は1,000人あたり1.2人、医療崩壊を防ぐためには、ロックダウンを継続し、検査体制の拡充を急がねばならない。