気候変動
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、焦土になった山腹のそばに立ち、地球規模の山火事を引き起こす主要因になった地球温暖化および気候変動を非難した。
気候科学者は数十年に渡って地球温暖化の危険性を警告してきた。
今、アメリカ西部の森林、住宅街、車、病院、ありとあらゆるものが、壊滅的な炎に包まれ、焼き尽くされている。
世界中で様々な自然災害(台風、山火事、海面上昇など)が激しさを増し、化石燃料に依存し続ける人間の破壊的な努力は、最悪の形で実を結びつつある。
ウッドウェル気候研究センターの気候科学者兼事務局長を務めるフィリップ・ダフィー博士はABCニュースの取材に対し、以下のように述べた。
フィリップ・ダフィー博士:
「西海岸で私たちが目にしているものは、気候変動の結果である」
「今年、アメリカ西海岸は史上最悪レベルの山火事に直面している」
憂慮する科学者同盟 (UCS)の上級気候科学者、クリスティーナ・ダール博士は、「人類は気候を限界まで押し上げている。今、地球上で発生している山火事の規模と範囲は、科学者が長い間警告してきた予測と一致する」と主張した。
近年の山火事の規模は、過去数十年のそれと比較すると、指数関数的に上昇していることが分かる。
米国の山火事マップ(Fire Weather&Avalanche Center)によると、西海岸の数十カ所で炎の勢いが増し続けているという(9月28日時点)。
また、2018年の米国国家気候評価によると、1984年から2015年の間に山火事で焼失した森林面積の量は、「地球温暖化が現在のレベルまで進行していなければ50%以下になっていた」と報告している。
カリフォルニア州森林防火局は、州内だけで380万エーカー(東京都の面積の約7倍)以上が焼失したと発表。9月時点で、既に2019年の27倍以上の土地が灰になったのである。
単年で300万エーカー以上を焼失したのは1910年以来であり、その記録は年末までに大きく更新される可能性もある。なお、オレゴン州でも既に100万エーカー以上を焼失している。
ダフィー博士は山火災の発生数ではなく、一気に数十万エーカーを燃やす巨大な規模のものが増加していることに警鐘を鳴らしている。
ワシントン大学、気候影響グループの気候適応スペシャリストであるクリスタル・レイモンド博士はABCニュースの取材に対し、以下のように述べた。
クリスタル・レイモンド博士:
「この”規模”の火災は過去に発生している」
「1800年代後半から1900年代初頭にかけて、この規模の火災は何度か発生した。しかし、問題は規模ではなく、期間と頻度である」
「気候変動の影響で、山火事の期間はより長く、より激しくなると予想されている。そしてその発生頻度は確実に増加しており、未来に備えて準備を進めなければいけない」
2017年と2018年のカリフォルニア州は、ビュート郡で80人以上の死者を出したキャンプファイヤー火災などが発生し、「比較的厳しい」山火事シーズンと言われた。
2019年は「比較的穏やか」と評価され、山火事の焼失面積は大きく減少した。
しかし、前年の好成績の反動かどうかは分からないが、2020年の焼失面積は常軌を逸しており、「比較的穏やか」だった前年の記憶はどこかに吹き飛んでしまった。
レイモンド博士は2020年の山火事について、「今年の焼失面積は、歴代最高を塗り替える」と述べた。
暖かく乾燥した空気は西側諸国が抱える大きな問題であり、山火事の燃料として機能する。
さらに、地球全体の気温が上昇すると、「特定の地域の環境条件」が劇的に悪化することも確認されている。
過去の記録から、アメリカ西海岸の気温上昇が乾期と連動していることは明らかである。暑さは雨期の降雨量(降雪量)を減らす。結果、乾期が到来した時に機能する地面の湿気が少なくなり、火はより激しく燃え、鎮火しにくくなる。
深刻な干ばつ、記録的な高温、強風、乾燥はいずれも炎の燃料になり、森林を焼くのである。
燃えていない地域も影響を受ける。
山火事から離れた地域で暮らす西部の何百万もの人々が、有害物質を含んだ危険な煙の中で生活し、当局は連日大気質警報を発表している。
・世界最悪の大気質を引き起こす致命的な山火事
大都市サンフランシスコで撮影された写真は、濃いオレンジ色の霞の下に写るゴールデンゲートブリッジがアポカリプスを連想させ、世界に衝撃を与えた。
その後、西海岸で発生した煙は数週間かけて大西洋を横断し、欧州に到達した。
当局によると、煙は非常に濃度が濃く太陽光を遮るため、周辺一帯の気温を10度近く押し下げたという。
「コロナ禍の影響で地球の大気は”多少”改善した」と言われている。しかし、西海岸やブラジル、ロシアなどで発生中の山火事は人間の努力を軽々と消し去り、驚異的な量の温室効果ガスを今も排出し続けている。
「比較的穏やか」だった2019年のカリフォルニア州の山火事では、8億トン以上の二酸化炭素が放出されたと考えられている。これは郡全体の化石燃料(自動車、トラック、火力発電所など)から排出される量の約2倍だという。
今年、西海岸の山火事は比較的穏やかになるかもしれない、と予想されていた。7月末までそれらしい規模の火災が発生していなかったのである。
しかし8月、デスバレーの気温は50度を超え、落雷が12,000回以上発生し、事態は急変した。
・デスバレーの気温が54.4℃に達する
ワシントン大学、火事と森林生態学の教授を務めるブライアン・ハーベイ氏はABCニュースの取材に対し、以下のように述べた。
ブライアン・ハーベイ氏:
「強風の影響で炎の勢いが増している。樹木の少ない住宅街に炎は届かないと思われていたが、油断せず非難の準備を進めるべきだろう」
「地球温暖化の影響で、炎の燃料になる条件(干ばつ、高温、強風、乾燥)が強化されている」
憂慮する科学者同盟 (UCS)のクリスティーナ・ダール博士によると、森林管理の改革だけで山火事を食い止めることは不可能だという。
気候変動災害を食い止めるためには、大気中に放出される温室効果ガスを削減する以外手はない。
ただし、この解決策を実現するためには、各国指導者による広範な政策変更が必要である。
その点に置いて私たちが行動できる最善の方法、市民の義務は、「環境保護に率先して取り組むことのできる指導者」を選出することである。
・トランプ大統領、地球温暖化と山火事の関係を否定
・国連総会で被害者面をするブラジル大統領
山火事から身を守る直接的な解決策も実行すべきであろう。
構造物の周りから植生を取り除き、より高い規則を遵守し、新しい建造物を建設する時には難燃性の材料を使用し、炎に備える。
また、枯れた枝や葉を定期的に取り除けば、延焼エリアを減らせる可能性もある。
専門家は、「自分たちの住んでいる地域の特性を理解すること」が大切だと指摘する。
自然豊かな環境で生活することを求め、多くの人々が森林に近い都市に移動した。そして、炎の影響を受けやすい地域に住宅街が誕生し、被害の拡大につながるのである。
豪雨、高潮、干ばつ、高温、洪水、台風など、気候変動に関連する災害の威力は年々増している。
クリスタル・レイモンド博士:
「科学者は、これらの問題を引き起こしている要因が気候変動”だけではない”ことを証明しなければならない。しかし、気候変動の悪化が山火事を含む災害の悪化に関連していることは間違いない」
・森林火災が人間にもたらす深刻な健康被害
山火事がカリフォルニア全土で猛威を振るう