2州への出入りが制限される

オーストラリアで最も人口の多いビクトリア州とニューサウスウェールズ(NSW)州の境界線は、州都メルボルンでの感染急増に伴い閉鎖されることが決まった。

ビクトリア州メルボルンでは、過去2週間、1日当たり感染者数がジワジワと増加しつつあった。その後、オーストラリアの新規感染者数の95%を占めるまでになり、措置の決定に至った。

2州間の境界は、3月のロックダウン時においても開放されたままだった。理由は2州間の人の往来が非常に激しいためである。州境を閉鎖すれば、ビジネスや観光への影響は避けられないだろう。境界は7月8日に閉鎖され、通過するためには許可を得なければならない。

今回の措置について、ビクトリア州のダニエル・アンドリュース州知事は、スコット・モリソン首相とNSW州のグラディス・ベレジクリアン州知事との共同決定であると発表した。

アンドリュース州知事は記者団に対し、「州境の閉鎖は感染拡大を防ぐ予防措置である。メルボルンの外にウイルスを拡散させないことが重要だ」と述べた。

なお、州境の開放時期については未定であり、今後の感染状況によって判断するとのこと。両州都間(メルボルン⇔シドニー)の往来は、同国最大の経済活動ルートであり、閉鎖期間が長引くほど国民の生活に与える影響も大きくなる。

メルボルンでは6月中頃からケースの増加に見舞われていたが、モリソン首相たちは最大都市圏の境界封鎖は必要ないと考えていた。しかし、1日当たりの感染者数が100人を大幅に上回ったことで、厳しい対応を取らざるを得なくなった。

オーストラリアのコロナウイルスケースは、国外(海外旅行者)から持ち込まれたものが大半を占めていた。しかし、現在、国内での二次感染、三次感染が広まり、国外感染者は全体の20%以下になったという。

州境の閉鎖を決断したベレジクリアン州知事は、「両州間を閉鎖するなどあり得ないと思っていたが、パンデミックを抑えるためには致し方ない。感染拡大を防ぐことが最も重要である。対策が後手に回れば、致命的な事態を間抜くだろう。私たちは行動しなければならない」と述べた。

7月、ビクトリア州内のホテルにおいて、警備員がゲストとの社会的距離を守らずクラスターが発生。以降、当局は濃厚接触者の追跡に追われている。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月6日時点のオーストラリアの累計感染者数は8,586人、これまでに106人の死亡が確認された。なお、ビクトリア州の同日24時間当たり新規感染者数は127人だった。

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州境封鎖(都市間封鎖)

州界を超えなければならない人(出張、運送業者など)は、ガイドラインに定められた手続きを行う必要がある。

今回の措置を受け、NSW州当局が境界警備を担当することになった。また、両州間のフライトは軒並みキャンセルされるという。専門家は、国内線に活路を見出していた航空業界、航空会社にとってもかなりに痛手になるだろうと述べた。

ビクトリア州のアンドリュース州知事は、今回の決定が国民生活に大きな影響を与えると認めたうえで、「私たちは厳しい局面を迎えている。コロナウイルスを封じ込めることが何より重要だ」と述べた。

NSW州の保健当局と州知事は、人口密集地帯、州都シドニーでの感染拡大を恐れている。モリソン首相も同様、オーストラリア最大の都市でパンデミックが発生すれば、ロックダウンの努力は水の泡になってしまうだろう。

NSW州のベレジクリアン州知事とモリソン首相は、最後まで州境の閉鎖を否定していたが、メルボルンでの感染拡大およびクラスター発生に伴い、決断せざるを得なかった。

経済的および社会的影響を避ける手立てはない。さらに、閉鎖手順も大きな課題のひとつである。両州間の境界地点は約50カ所。これを閉鎖するためには、かなりのエネルギー、そしてマンパワーを要す。

7月~8月のホリデーシーズンに旅行を計画していた人たちは、予定をキャンセルせざるを得ないだろう。また、観光業界、ビーチ、飲食店関係者なども、揃って頭を抱えることになるだろう。

世界保健機関(WHO)は、オーストラリア政府のコロナウイルス対策を成功例のひとつとして称賛してきた。しかし、人口500万人のメルボルンでの感染拡大が続き、この成功が脅かされつつある。

新規感染者の増加を受け、軍、他の州から医療チームなどが派遣されており、1日に少なくとも20,000件のPCR検査を処理しているという。州政府は、症状の出ていない住人に対してもPCR検査の受診を呼び掛けている。

7月4日、ビクトリア州当局はクラスターが発生したメルボルンのマンションブロック(9エリア)に対してロックダウンを指示。約3,000人が自宅待機を余儀なくされた。

突然のロックダウンを受け、住人たちは大混乱に陥った。ビクトリア州で活動する専門家はBBCの取材に対し、「マンションブロック内のパトロールや監視を含む今回の対応は、一部のコミュニティを標的にしており、厳しすぎると言わざるを得ない」と述べた。

先週、少なくともビクトリア州の36カ所でエリア限定のロックダウンが発出された。ただし、マンションブロックとは異なり、仕事、運動、介護、買い物に伴う外出は可能。

ビクトリア州とNSW州を除く地域の感染状況はほぼ沈静化しており、ロックダウン対策を実行中の地方自治体はほとんどない。

連邦政府は7月でのロックダウン完全解除と勝利宣言を目指していたが、ホリデーシーズンを前にして目標の延期を余儀なくされた。

経済活動再開に伴う段階的なロックダウンの緩和および解除が、コロナウイルスの感染拡大に拍車をかけている。7月4日の24時間当たりの全世界新規感染者数は、過去最高を更新する212,326人だった。

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