卵は完全食心臓病を誘発する?ジョッキで一気飲みすると良い?

コレステロール

タンパク質は生命維持、筋肉増強などに欠かせない重要な栄養素である。世界中のスポーツ選手は、それをいかにバランスよく摂取するか、効率的に摂取するかを常に考えている。タンパク質をタップリ含む「プロテイン」が、トレーニングに欠かせない補助食品であることは周知の事実であろう。

食品から良質なタンパク質を取る。これは健康に気を使っている方、筋肉をつけたい方の永遠のテーマかもしれない。そして、良質なタンパク質の補給源として、昔からたくさんの人々に支持されてきた食べ物が「」である。

他の食べ物と一緒に卵を摂取すると、より多くの栄養素(ビタミンなど)を吸収できることが科学的に証明されている。例えば、サラダに卵を追加すると、得られるビタミンEの量が増加する、といった感じだ。

しかし、卵はタンパク質などの栄養を効率的に摂取できる反面、コレステロールの上昇を招くという問題点も指摘されている。またいくつかの研究では、心臓病の発生リスクを増加させる、という報告も出ている。ひとつの卵に含まれるコレステロール値は約185mg。これはアメリカの栄養摂取ガイドラインで「最近まで」推奨された1日のコレステロール摂取目安量300mgの半分を優に超える。

まずはコレステロールの良し悪しをはっきりさせねばならない。我々は内臓や腹部に溜まる脂肪の原因となる同物質を「」と考えている。しかし、コレステロールは人間の細胞膜などを構成する重要な要素のひとつである。それを摂取しなければ、生命を維持することはできない。また、牛肉、エビ、チーズ、バターなど、様々な動物性食品にもそれが含まれていることを忘れてはならない。

悪玉」と呼ばれる低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールは、肝臓から動脈などを通り全身に輸送される。これにより、血管内にLDLが蓄積、結果、心血管疾患のリスクを高めると研究者たちは述べている。

しかし、すべてのコレステロールがLDL、悪玉となり身体に悪い影響を及ぼすわけではない。すなわち、「善玉」も存在するのだ。その事実が明らかになったことで、アメリカの栄養摂取ガイドラインに明記されていた1日のコレステロール摂取目安量(300mg)は削除された。イギリスも同様である。

代わりに「トランス脂肪を含む食品」の摂取量に制限が設けられた。それを含む代表的な食べ物が「ハンバーガー」「から揚げ」「ドーナツ(揚げ物)」「フライドポテト」など。ここで特に注目いただきたい物質が、「飽和脂肪」である。これは動物性食品に含まれ、心血管疾患のリスクを大幅に高めると多くの研究者が指摘している。

善玉

卵のコレステロール値は、肉や他の動物性食品よりもはるかに高い。しかし含まれる飽和脂肪は少ないのだ。最近の研究では、卵と心血管疾患のリスク増加に因果関係、関連性は見られないことが発見されている。

適切なコレステロール摂取が健康の維持に欠かせないことは既に述べた通りである。健康を害する、と一部の方たちに敬遠されていた卵への偏見(?)は見直され始めた。

コレステロールは酸化されると有害物質に変わる。体内、血管の炎症を誘発、すなわち健康に悪影響を及ぼすのだ。しかし卵に含まれるコレステロールは酸化されない。それどころか、あらゆる栄養素の酸化を防ぐことが判明している。

身体に良い影響を与えると考えられている「善玉」、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールは、体内に取り込まれると肝臓に達し、そこで分解される。HDLには血中コレステロールの蓄積を抑える働きがあり、心血管疾患に対する保護効果もあると言われている。

重要なことは善玉(HDL)と悪玉(LDH)の比率である。HDLの摂取を増やせば、LDHの影響を打ち消すことができる。しかし、だからと言ってHDLをたくさん摂れば良い、というわけではない。もちろん、卵が全てに勝る万能食材という考えも間違いだ。

痩せた健康な人が卵を摂取すると、LDLの増加率は高くなることが分かっている。一方、肥満気味、健康に問題を抱えている人だとLDLの増加率は小さく、HDLがより効果的に作用するという。つまり、健康な人が卵を「摂り過ぎる」と、身体に害を及ぼす可能性があるのだ。しかし、健康な人は体内のHDLレベルが高い傾向にある。過度に卵を摂取しなければ良いだけの話であろう。

異論を唱える研究もある

今年初めに発表されたある研究は、卵が人間の健康に害を与えない(摂り過ぎはダメだが)という考えに異議を唱えた。約30,000人の成人を平均17年間追跡調査しデータを収集したところ、1日あたりの卵摂取量が増加すると、心臓病および死亡リスクもそれに比例し上昇する、という結果が明らかになったのだ。

アメリカ、イリノイ州ノースウェスタン大学のノリナー・アレン准教授は、「コレステロールの摂取量が300mg増加するごとに、摂取した食品に関係なく、心血管疾患のリスクが17%、死亡リスクも18%増加した。さらに、1日あたり卵摂取量が半玉(1/2)増えると、心臓病リスクは6%ずつ、死亡リスクも8%ずつ増加する」と述べた。

こう言われると何を信じれば良いのか分からなくなるが、アレン准教授の研究は参加者(被験者)の自己申告データに基づいて実施されている。参加者は「月または年ベース」で何を中心に食べていたかを尋ねられ、申告していた。

毎日卵を欠かさず食べていたか否かは、参加者本人しか分からない。そもそも、「あくまで卵に特化した追跡調査」であり、タバコ、アルコール、ドラッグ、トランス脂肪酸を含む食品の摂取は一切考慮されていない。もちろん、だからと言ってこの研究は100%間違いである、と断言することもできない。

卵が身体に良い影響を与えることは、複数の研究者によって証明され、結果、各国のガイドライン(コレステロールの摂取量)にも大きな影響を与えた。これまでの研究結果を覆したいのであれば、それに見合った完璧かつ完全な証拠を提示せねばならないだろう。

これまでに判明している事実を簡単にまとめると、卵のコレステロールは他の動物性植物のそれに比べると、身体に良いということだ。HDLの増加を促し、悪玉であるLDLを打ち消す効果も確認されている。しかし、繰り返し言うように、「摂りすぎはダメ」なのである。

卵が身体に良い?それなら毎日卵だけ食べよう。寝起きにジョッキで生卵10個を一気飲み・・・こんな生活をしていたら、100%身体を壊す。科学者でなくても分かるし、誰の目にも明らかだ。

卵は無限の可能性を秘めている。それを摂取することで、アルツハイマー病から身を守る「かも」しれないと指摘されており、さらに二日酔いの改善にも効果を発揮する可能性があるそうだ(いずれも研究中、確証はない)。

研究者たちは卵をリスペクトしている。しかし、すべてを満たす完璧な食材とは思っていない。規則正しい食生活を心掛ける、カロリーを意識し、肉・野菜・炭水化物、あらゆる食材を食べる、腹八分目を意識する、よく噛んで食べる、ハンバーガーばかり食べない。何事もバランスが大切なのだ。

健康な身体と筋肉を維持するうえで欠かせないタンパク質。今一度、その摂取方法を見直してはいかがだろうか。

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