◎ジョー・バイデン大統領は物議を醸してきたキーストーンXLパイプラインの建設を中止する大統領令に署名した。
◎カナダのジャスティン・トルドー首相は昨年11月にバイデン大統領と電話で話した際、キーストーンXLの建設を最優先事項として取り上げていた。
1月20日、ジョー・バイデン大統領は物議を醸してきたキーストーンXLパイプラインの建設を中止する大統領令に署名した。
約2,750kmの原油パイプラインは、カナダのアルバータ州から米モンタナ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州を経由して南部テキサス湾岸に到達し、1日あたり約80万バレルの原油(オイルサンドから抽出された原油、砂、水、粘土およびビチューメンと呼ばれる混合物)を輸送する予定だった。
バイデン大統領は記者団に対し、「建設許可はこれで取り消される。キースト―ンXLの建設を許すことは、新政権の経済および気候の政策と一致しない」と述べた。
キーストーンXLのリチャード・プライヤーCEOは以前、建設許可が取り消されれば、雇用している1,000人以上の大多数が数週間以内に仕事を失うだろうと述べている。
プライヤーCEOはABCニュースの取材に対し、「私たちは安全で秩序ある閉鎖を開始するだろう...」と困惑した表情で答えた。
この原油パイプライン計画は2008年に提案され、経済発展と気候変動の対立を象徴する存在になった。バラク・オバマ前大統領は建設を許可しなかったが、トランプ氏はこの計画を強く支持し、工事はスタートした。なお、総工事費は推定80億ドル(8,300億円)と伝えられている。
アルバータ州のジェイソン・ケニー州首相はバイデン大統領の決定を「侮辱」と呼んだうえで、「大統領が考えを変えなければ、経済制裁に踏み切るべきだ」と主張した。
一方、ジャスティン・トルドー首相は声明で、「私たちは失望しているが、バイデン大統領の政権公約は認めている」と述べた。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は記者団に対し、「就任式後、バイデン大統領はトルドー首相と電話会談でパイプラインについて話し合う」と述べた。
トルドー首相は昨年11月にバイデン大統領と電話で話した際、キーストーンXLの建設を最優先事項として取り上げていた。
このパイプラインで輸送される原油の量は世界トップクラスで、トランプ政権は最大の原油供給元であるカナダの原油輸出能力を強化したいと考えていた。
原油に関するトルドー首相とトランプ氏の考えは完全一致していた。しかし、バイデン大統領はそれをキャンセルすると決めたため、トルドー首相との関係はいきなり緊張すると予想されている。
トルドー首相は声明の中で、「プロジェクトに関するバイデン大統領の決定には失望している。しかし、気候変動に対処するパリ協定および世界保健機関(WHO)への再加入、イスラム教徒に対する入国禁止措置の解除などの大統領令は歓迎したい」と述べた。
一方、アルバータ州のケニー州首相は、「バイデン大統領はプロジェクトに関与している州と企業にパンチを叩き込んだ」と憤慨した。
ジェイソン・ケニー州首相:
「私たちは最も重要な同盟国であるアメリカの新大統領に、就任初日に打ちのめされた」
「最も大切な同盟国のリーダーは、カナダ政府と約束したパイプラインの承認を突然覆し、カナダとアメリカの貿易の大部分を占めるエネルギー産業を攻撃した」
環境保護団体は、アルバータ州のオイルサンドとエネルギー産業の成長が温室効果ガスの排出量を増やし、地域だけでなく地球を破壊すると主張している。
全米商工会議所グローバルエネルギー研究所のマーティン・ダービン会長はキーストーンXL建設の中止について、「バイデン大統領の決定は科学に基づくものではない。決定により、数千人のアメリカ人が仕事を失うだろう」と警告した。
マーティン・ダービン会長:
「キーストーンXLはアメリカの歴史の中で最も研究されたインフラストラクチャプロジェクトであり、すでに建設は始まっている。関係者は無数の法的および環境的ハードルをクリアした」
「建設を中止することは、原油の安全で効率的な輸送を妨げる。そして、アメリカの最も重要な同盟国のひとつであるカナダのエネルギー産業は不当な扱いに抗議するだろう」
環境保護団体はバイデン大統領の決定を歓迎した。
カナダの環境防衛国家気候プログラムのデール・マーシャル氏は、「キーストーンXLの中止は、気候変動対策がホワイトハウスの最重要政策の1つであることを示している」と述べた。