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コラム:「ゾンビたばこ」の危険性、非常に有害な薬物

中国や台湾、タイ等でのエトミデート入り製品の乱用が、SNS・動画共有等を通じて情報伝播し、日本でも類似製品が密輸・流通したとされる。
タバコの煙(Getty Images)
現状(2026年1月時点)

ゾンビたばこ」という語は、2020年代初頭からインターネット上のSNSや掲示板、都市伝説的な文脈で散見される俗称だ。複数のメディア報道や地域保健機関の情報提供では、この語が主に危険な合成薬物への言及として使われる一方で、具体的な成分や作用機序が明確に定義されているわけではないと指摘されている。
いくつかのオンラインフォーラムやSNSでは、「エトミデート(Etomidate)」等の麻酔薬成分に類似する物質が混入した違法製品を指して「ゾンビたばこ」と呼ぶ事例が見られる。このため、実態調査や薬物動向監視の必要性が国際的にも指摘されている。しかし、現時点で公的な疫学データや大規模な科学的研究が存在するとは言えない。


ゾンビたばことは

一般に「ゾンビたばこ」という表現は、タバコ葉と称される物質や類似形状の製品に、向精神性または薬理作用を有する化学物質が混入しているとされる危険な物品を指す俗称だ。
薬物監視団体や保健機関のレポートでは、この種のスラング用語が、検査機関で分析されるまで成分が不明な製品を曖昧に指すことが多いとされる。したがって、「ゾンビたばこ」とされる物品が同一の化学成分による単一カテゴリを意味するとは限らない。


麻酔薬成分「エトミデート(Etomidate)」

エトミデートは医療用の静脈内麻酔薬であり、特に救急医療や全身麻酔導入時に呼吸・循環抑制を比較的少なくする特徴から利用されている。しかし、医療用途以外での使用は重大な危険を伴う。
エトミデートの薬理作用は、GABA受容体複合体を介した抑制性神経伝達の増強であり、鎮静・催眠状態を引き起こす。医療以外の文脈では、非専門者による誤用や混合物としての流通が健康被害を生じるリスクを高める。


ゾンビたばこの特徴

一般に報告される特徴として以下が挙げられる:

  • 製品外観が「タバコ葉状」または「紙巻き状」であるとされるケースがある

  • 正体不明の化学物質が含まれている可能性が指摘される

  • 医療用薬物や合成薬物と類似した名称がネット上で結び付けられる

  • SNS投稿や都市伝説的な文脈で極端な中毒症状や異常行動と関連付けられる

これらは科学的な裏付けが十分でないケースが多く、媒介情報として解釈する必要がある。


主な成分

「ゾンビたばこ」に含有される成分は、公式な分析報告が乏しいため確定できない。
ただし、健康危害が疑われているケースでは以下のような薬理活性物質が関連物質として言及されている:

  • 合成カンナビノイド類

  • 合成カチノン類

  • 医療用麻酔薬類似物質

  • 不純物としての残留溶媒や重金属等

なお、これらはあくまで関連が疑われる化合物であり、製品ごとに成分が異なる可能性があるため、製品名称だけで含有を断定することはできない。


吸引方法(安全上の注意)

薬物乱用や危険物の使用方法の具体的な説明はここでは扱わない。
公衆衛生の立場からは、未知・不明成分の物質を吸引・摂取すること自体が重篤な健康被害を生じるリスクになるため一切の使用を避けるべきである。


主な症状

SNS等で報告される症状の例としては以下のものがある。ただし、これらは科学的に因果関係が証明された症状ではない場合がある:

  • 意識混濁

  • 協調運動障害

  • 幻覚・錯乱

  • 心拍数の異常変動

  • 呼吸抑制

  • 嘔吐・発汗

これらは多くの薬物中毒に共通する非特異的な症状であるため、因果関係の評価には臨床的検査が必要だ。


流行と被害

都市伝説的な語としての「ゾンビたばこ」がSNS等で拡散している一方、実際に大規模な流行として疫学的に把握された事例は確認されていない。
薬物動向監視機関の報告では、特定のスラング呼称が一時的に流行しても、実態製品との対応が曖昧であることが多いと指摘されている。


危険性と法規制

多くの国・地域において、未認可の薬物や向精神性物質の製造・販売・所持・使用は法的に規制されている。具体的な化学物質が明示されていない俗称物品であっても、成分として規制対象化合物が含まれていれば違法行為となる可能性が高い。
日本では「麻薬及び向精神薬取締法」「薬機法」等によって規制対象物質群が定められており、類似化合物や誘導体も包括規制の対象となるケースがある。


健康被害

未知物質の摂取は以下のような健康リスクがある:

  • 心血管系の不安定化

  • 呼吸抑制

  • 中枢神経系の抑制/興奮異常

  • 急性毒性反応

  • 長期的な精神・身体機能障害

これらは薬物の種類、量、使用者の体質等によって異なる。


関連が疑われる死亡事例

現時点で「ゾンビたばこ」を原因とする明確な死亡事例が公的に報告されたという信頼できる学術論文は確認できない。ただし、薬物中毒や不明物質摂取による死亡例自体は各国で報告されており、これらの調査報告書が相互参照される必要がある。


血管に悪影響を及ぼす可能性

多くの薬理活性物質は、血管系に対して収縮・拡張等の影響を及ぼすことが知られている。例えば、合成カンナビノイドは血圧変動を引き起こす可能性があるという報告があるが、これは個別の化学物質に依存する。
したがって、「ゾンビたばこ」と呼称される不明物質についても循環器系にリスクを有する可能性が否定できない。


心臓発作

薬物関連の心臓発作は、交感神経系への影響、心拍数の急激な変動、血圧異常等が誘因となることがある。これらの機序は多くの向精神性物質で報告されているが、個別物質の特性に依存するため、一般論としての注意喚起に留める。


けいれん

一部の薬物は、神経伝達のアンバランスを引き起こすことで痙攣を誘発することが知られている。てんかん既往のある者では特にリスクが高まる可能性があるため、未知物質の摂取は危険である。


幻覚作用

幻覚は多くの向精神薬に共通する作用であり、感覚認知の歪み、時間・空間の錯誤、妄想的思考を伴うことがある。これらは精神機能への負荷を高め、迷惑行為や事故につながる可能性がある。


法的な扱い

前述の通り、日本では麻薬・向精神薬取締法などの規制が存在する。同様に多くの国でも、不明成分の製品は成分に応じて既存の薬物規制法や化学物質管理法令の対象となる。


罰則

規制対象物質の製造・販売・所持・使用には、刑事罰や行政処分が科される。具体的な罰則は国・地域の法令に依存する。


日本

日本では、薬物犯罪に対して厳格な法執行がなされており、違法薬物に関する専門の監視体制がある。地方自治体の保健所や厚生労働省の薬物動向調査が継続されている。


世界

国際的には、国連薬物犯罪事務所(UNODC)等が薬物動向を監視しており、新興薬物の出現に対する早期警戒システムが存在する。


注意点

「ゾンビたばこ」という名称単独で危険性を評価することは困難であり、科学的分析と監視が不可欠である。また、ネット上の噂や都市伝説を鵜呑みにしないことが重要だ。


SNSなどで偽情報拡散

SNSではセンセーショナルな語が拡散しやすい。専門機関による検証や一次情報へのアクセスが重要である。フェイクニュースや誇張表現が誤解を助長する可能性がある。


販売・勧誘されるケースも

違法薬物に関連する販売や勧誘は、しばしばオフラインとオンラインの両方で行われる。これは法的リスクと健康リスクを併せ持つ行為であり、関与しないことが重要だ。


今後の展望

薬物動向は変化し続けるため、継続的な監視と科学的研究が求められる。公衆衛生機関や法執行機関による情報発信が、誤解や健康被害の予防に寄与する。


まとめ

「ゾンビたばこ」という語は俗称であり、特定の薬物成分に対する一般的な名称ではない。安全性が確認されていない物質の摂取は重大な健康リスクを生じる可能性があるため、使用せず、科学的・法的情報に基づいて判断することが求められる。


参考・引用リスト

  1. 厚生労働省「薬物乱用の防止」関連資料

  2. UNODC World Drug Report(国連薬物犯罪事務所)

  3. 麻薬及び向精神薬取締法(日本)

  4. 各国の薬物監視機関による新興薬物に関するモニタリングレポート

  5. 学術雑誌における向精神性薬物の毒性レビュー論文


追記:世界におけるゾンビたばこの実態

世界各地における「ゾンビたばこ」の動向は、SNSや非公式な名称としての薬物混入製品の問題として発生している。特にアジア圏で「zombie cigarette(ゾンビシガレット)」等の名称で広がる事例が複数報告されている。

アジア圏での出現と拡大

2024年末〜2025年にかけて、中国や台湾、タイなどアジア圏で、エトミデートや類似の鎮静薬成分を電子タバコ用リキッドに混ぜた製品が未成年や若年層を中心に問題になったという報道がある。これら製品は現地で「ゾンビシガレット」等と呼ばれ、リキッド状のものがvapeやポッド型電子たばこに充填されて流通していたとされる。使用者がふらふらとした状態や意識混濁を起こす様子がSNSで拡散され、俗称としての「ゾンビたばこ」表現が拡大したと考えられる。

  • 中国・台湾
    中国や台湾では、エトミデート成分を含んだvapeリキッドが「ハイインデューシングシガレット(高誘発タバコ)」や「ゾンビカートリッジ」と呼ばれ、2023年以降に使用事例が報じられた。若年層が経済的に比較的安価な製品として入手し、健康被害や乱用が拡大した。

  • タイ
    タイ保健当局もエトミデート等の合成薬物成分が混入した電子たばこ製品の存在を確認し、青少年に対して警告を発した。これら製品はエンターテインメント地区等で若者を中心に販売・使用されていたという報告があり、成分不明の薬物混入製品への注意喚起が繰り返されている。

欧米・その他地域

欧米を含めたその他の地域では、スパイス(合成カンナビノイド)を含む電子たばこ製品が「ゾンビドラック」等として報道されたことがあるが、これは「ゾンビたばこ」という名称と内容が分離して使用されているケースであり、名称自体が一義的な薬物カテゴリを指すものではない。


日本で流通した経緯と背景

日本国内における「ゾンビたばこ」問題はアジア圏での薬物混入製品の乱用に伴う情報伝播と密輸・流通が契機となっている。以下に、報道に基づく流通の経緯と背景を整理する。

初期の認知とSNS等での拡散

中国や台湾でのエトミデート入り電子たばこ事例がSNS等で拡散されたことが、日本国内でも「ゾンビたばこ」という語が認知される契機となった。中国等で動画や投稿が共有され、使用者が人混みでふらふらと歩いたり意識が混濁する様子が話題になったことが、俗称の広まりを助長した可能性がある。

日本国内での密輸と摘発

2025年に入って、日本国内でエトミデートを含む危険ドラッグの密輸・所持・使用事案が実際に発覚した。国際宅配便を介してタイから約2kgが輸入されたとする摘発が報道されており、組織的な関与の可能性も指摘されている。

また、中国籍のグループがエトミデート含有物質を日本に密輸した疑いで逮捕されたケースもある。これら事案は2025年秋頃に報道され、日本警察が初めて「ゾンビたばこ」密輸として摘発した事件となった。

流行地域と若年層への拡大

日本国内では特に沖縄県を中心にエトミデート入りリキッドを用いた電子たばこ使用者が増加したと報じられた。沖縄は地理的にアジア圏に近く、未承認薬物の密輸ルートとして過去にも他の薬物が流入してきた経緯があり、今回もその影響が懸念されている。報道では、若者が手軽な「合法ドラッグ」として誤解し、SNS等で売買や使用情報が広まったとしている。

厚生労働省は2025年5月にエトミデートを指定薬物に追加指定し、製造・輸入・所持・使用を禁止したが、同年末までにも複数の摘発例が全国で確認された。沖縄では特に多く、三重県や大分県などでも複数件の逮捕・摘発が報じられている。

流通経路の背景要因

報道や捜査関係者の分析では、以下のような背景要因が指摘されている:

  • SNS等での誤情報・宣伝
    若者間で「合法性」や「安全性」を誤認させる表現とともに広まったケースがある。

  • 国際的な密輸ネットワーク
    報道では中国やタイ等から成分混入物質が国際宅配便や個人輸入を介して国内に持ち込まれている可能性があるとされている。

  • 地理的な要因
    沖縄をはじめとするアジア圏に近い地域では、他地域に比べて初期の流入が早かったという観察が報道されている。


追記まとめ

世界的には「ゾンビたばこ」という名称が、薬物混入製品を指すスラングとしてアジア圏を中心に現れたことが確認されている。中国や台湾、タイ等でのエトミデート入り製品の乱用が、SNS・動画共有等を通じて情報伝播し、日本でも類似製品が密輸・流通したとされる。日本国内では2025年以降、警察等による摘発が進んでおり、若者を中心とした乱用者が報告されている。

こうした動向は、俗称による誤解やSNSでの情報拡散、公衆衛生上のリスクが複合的に関与していると評価でき、今後は科学的な成分分析と国際的な薬物動向監視が重要になる。

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