コラム:冬の不調、こうして改善!
冬の不調は単なる季節の気分変化ではなく、生理的・心理的要因が絡む現象である。
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2026年1月現在、日本列島は冬季の気候パターンの真っ只中にあり、日照時間の短縮と気温低下による不調の増加が報告されている。特に季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder: SAD)、通称「冬季うつ」は日照時間の減少と関連する体内リズムの乱れによって発生しやすく、気分の落ち込み、疲労感、過眠傾向、食欲異常などの症状が冬季に集中する傾向がある。また、冷え症状や低免疫状態に伴い風邪やインフルエンザのリスクも上昇する。これらの冬季不調は単なる気分や体感の変化ではなく、生理的・心理的プロセスが関与する現象として認識されている。
冬の不調(冬季うつや身体の冷え、免疫力低下)
冬季うつは季節性感情障害の一種であり、主に冬季に発生する抑うつ症状を指す。日照時間の減少により、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌が低下しやすくなることが報告されている。また、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌リズムも乱れやすく、これが倦怠感や過眠傾向に寄与するとされる。さらに冬季は日光曝露が少なくなるため、ビタミンDの体内生成が低下し、その結果セロトニン活動を含む神経伝達や免疫機能の低下が誘発されやすい。冷えは末梢血流を悪化させるだけでなく、交感神経の過剰な活性化を引き起こし、自律神経のバランスを乱す可能性がある。免疫力低下は呼吸器感染症、特に冬季に流行するウイルス感染症の罹患リスクを高める要因となる。
冬の不調を改善する方法(総論)
冬季不調に対する改善策は、日光浴、身体活動、栄養摂取、体温調整、睡眠および生活リズムの最適化、そして室内環境の整備に大別される。これらは単独ではなく相互に作用し、統合的なアプローチによって生活の質を向上させる。以下ではそれぞれの具体的な対策を詳述する。
朝の日光浴でセロトニンを活性化
冬季うつの発症にはセロトニン分泌の低下が関与するとの報告がある。セロトニンは気分や行動、覚醒レベルを調整する神経伝達物質であり、日光を浴びることがその生成を促進する要因とされている。特に朝の太陽光曝露は体内時計(概日リズム)の同調に重要であり、翌日の覚醒や睡眠リズムにも良好な影響を及ぼす。
具体的には、日の出後すぐに屋外で10〜30分程度の散歩や日光曝露を取り入れることが勧められる。曇りの日でも一定の光量が得られることから、可能な限り屋外で行動することが望ましい。また、窓越しの日光は直接光曝露に比べて効果が限定的であるため、屋外での活動が推奨される。
対策(朝の日光浴)
毎朝決まった時間に外出する
日照時間が短い冬でも、午前中の光曝露はセロトニン生成と体内時計への刺激として有効である。光療法ライトの活用
天候や日照不足で十分な自然光が得られない場合は、専門的な光療法装置(ライトボックス)を用いることも検討される。継続的な日光曝露の習慣化
日々の生活の中で、朝日光を浴びる習慣を継続することが冬季不調の予防につながる。
「3つの首」を温めて冷えを解消
冷えは血流低下を含む身体的不調の増幅要因であり、「首」「手首」「足首」の3つは特に熱が奪われやすい部位である。これらを適切に保温することで、末梢循環を改善し、冷えによる自律神経の乱れを緩和することができる。
例えば、首にはスカーフやネックウォーマー、手首には暖かい手袋やリストバンド、足首には厚手の靴下やレッグウォーマーを用いることが効果的である。このような局所的な保温は全身の体温維持を助け、血流促進を通じて免疫機能の低下を抑制する。
対策(3つの首の温め)
衣類の重ね着と適切な素材
冬季は保温性の高い素材を選び、首、手首、足首を重点的に保護する。温熱療法の併用
足湯や温かい飲み物、暖房器具といった温熱刺激も冷え解消に有効である。日常動作で血行促進
適度なストレッチや軽いエクササイズを取り入れることで、冷えによる循環不良を改善する。
食事による内側からのケア
冬季不調を改善するためには栄養バランスを整えることが重要である。特に冬季は免疫機能や神経伝達に関与する栄養素の摂取が不足しがちであるため、 タンパク質、根菜類、ビタミンD などの食事戦略が効果的である。
タンパク質
タンパク質は神経伝達物質の前駆体であるアミノ酸を供給し、セロトニンの合成を支える。また、筋肉量の維持や体温調節にも寄与するため、日々の食事で十分な量を確保することが重要である。肉、魚、乳製品、大豆製品などをバランスよく摂取する。
根菜類
冬に旬を迎える根菜類は、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富であり、体を内側から温める効果が期待できる。例えば人参、ゴボウ、大根、さつまいもなどを積極的に取り入れることで、消化吸収を助け、体温維持や免疫強化に寄与する。
ビタミンD
ビタミンDはカルシウム代謝だけでなく免疫機能や神経機能にも深く関与する。冬季の日照不足によるビタミンD欠乏は免疫力低下や気分の変動に関連する可能性があるため、ビタミンDを意識的に摂取することが重要である。魚類(サーモン、サバ等)、卵黄、キノコ類などを食事に取り入れるほか、必要に応じてサプリメントも検討する。
適度な運動と質の高い睡眠
運動はセロトニン分泌を促進し、ストレス緩和および体温維持に寄与する。屋外でのウォーキング、軽いジョギング、室内でのストレッチやヨガなど、継続可能な身体活動が勧められる。定期的な運動は睡眠の質向上にもつながる。
睡眠
質の高い睡眠は脳と身体の修復プロセスに不可欠であり、冬季はメラトニンリズムの乱れの影響を受けやすいため、就寝前のルーティン(光の調節、電子機器の使用制限、リラックス環境の構築)が重要である。一定の就寝・起床時間の維持も概日リズムの安定化に寄与する。
湿度の管理
冬季は暖房使用による室内乾燥が進み、粘膜機能の低下を通じて感染リスクの増加や睡眠障害を引き起こすことがある。適切な湿度(40〜60%程度)を維持することで、呼吸器粘膜を保護し、快適な睡眠環境を確保する。加湿器の活用、室内換気、観葉植物による湿度調整などが有効である。
対策(湿度の管理)
加湿器の利用
冬季乾燥対策として加湿器を設置し、適正湿度を維持する。定期的な換気
室内空気の循環を保つことでウイルス曝露リスクを抑制する。水分補給の励行
冬季は汗をかきにくいが、水分補給を怠らず、体液バランスを保つ。
今後の展望
冬季不調の改善には、個別の体質や生活環境に応じた対策が求められるべきである。これまでの研究では、光療法、栄養戦略、運動介入、行動療法を組み合わせる包括的アプローチが有効であるという知見が積み重ねられている。将来的には、個別化された概日リズムモニタリングや栄養・運動計画、デジタル健康ツールによる継続的なモニタリングが応用される可能性がある。加えて、冬季うつや免疫低下と関連する臨床マーカー(セロトニンレベル、ビタミンD濃度、睡眠パターン等)の定量的評価を含む研究が進展することで、より精密な予防・介入戦略が確立されると期待される。
まとめ
冬の不調は単なる季節の気分変化ではなく、生理的・心理的要因が絡む現象である。日光曝露、栄養バランス、体温調整、運動・睡眠リズム、室内環境の管理という多角的な視点からのアプローチが、冬季不調の改善に寄与する。これらの対策を日常生活に取り入れることで、冬季の気分や体調の変化に柔軟に対応できるようになる。
参考・引用リスト
National Institute of Mental Health. Seasonal Affective Disorder. (2023)
Nursing Made Incredibly Easy. Seasonal Affective Disorder Mechanisms. (2025)
複数メディア記事および健康サイト 冬季うつ 冬バテと日照時間の関係 等(日本語健康サイト)
The Sun(2026)冬のうつ対策総合記事
The Guardian(2025)冬季のセロトニン影響と光療法の推奨
Le Monde(2025)冬の光不足と健康への影響
Health.com(2024)冬の栄養戦略(ビタミンD、プロバイオティクス等)
追記:冬の不調を克服するための実践的アプローチ
1. 具体的な日別/週間の実践プラン
1-1. 冬季における生活設計の基本原則
冬季の健康管理において重要なのは「意志力に頼らない仕組み化」である。寒冷環境では身体活動量が自然に低下し、抑うつ傾向や疲労感が増大しやすい。そのため、日光、運動、食事、睡眠、体温管理を時間軸に沿って配置し、習慣として定着させる必要がある。
以下では、一般的な就労者を想定した日別・週間のモデルプランを提示する。
1-2. 平日(日別)実践プラン(例)
起床後(6:30〜7:30)
起床後30分以内にカーテンを開け、可能であれば屋外に出て10〜20分程度の日光浴を行う。この時間帯の日光曝露はセロトニン活性化と概日リズムの再同期に有効である。天候不良時は光療法ライトを併用する。
朝食(7:00〜8:00)
タンパク質を中心とした朝食を摂取する。卵、魚、大豆製品、乳製品などを組み合わせ、血糖値の急上昇を避ける構成とする。朝食は体温上昇と覚醒度向上に寄与する。
日中(9:00〜17:00)
1〜2時間に一度は軽いストレッチや立ち上がり動作を行い、血流低下を防ぐ。昼休みには短時間でも屋外に出て自然光を浴びることが望ましい。
夕方(17:00〜19:00)
帰宅後、20〜40分程度の軽度〜中等度運動を行う。ウォーキング、自重トレーニング、ヨガなどが適する。激しすぎる運動は睡眠を妨げる可能性があるため注意する。
夕食(19:00〜21:00)
根菜類や温かい汁物を中心とした食事とし、体を内側から温める。ビタミンDを含む食材(魚類、キノコ類)を意識的に摂取する。
就寝前(22:00〜23:30)
入浴により深部体温を一時的に上げ、その後の体温低下を利用して入眠を促す。就寝1時間前から強い光刺激や電子機器の使用を避ける。
1-3. 週間プラン(リズム形成)
週3〜4日:筋力トレーニングまたは有酸素運動
週1日:活動量を抑えた回復日(ストレッチ・入浴中心)
週末:午前中に屋外活動(散歩、買い物、自然環境への接触)
週間単位で身体活動と休養のバランスをとることで、自律神経の安定化が期待できる。
2. 寒い冬を乗り切る健康術
2-1. 冬季は「防御の季節」である
冬は身体にとって外的ストレスが増大する季節である。低温、乾燥、感染症リスクの上昇、日照不足などが同時に重なるため、健康管理の重点は「攻め」よりも「防御」に置かれるべきである。
2-2. 体温管理と免疫機能
体温が1℃低下すると免疫機能が大きく低下するとの報告があり、冷え対策は感染予防の基礎である。衣服による外的保温だけでなく、以下の要素が重要となる。
温かい食事・飲料による内的加温
血流を促す軽運動
入浴習慣の維持
特に首・手首・足首の保温は効率的な体温保持に寄与する。
2-3. 呼吸器と粘膜の保護
冬季の乾燥は気道粘膜の防御機能を低下させる。適切な湿度管理と十分な水分摂取は、ウイルス侵入に対する一次防御として機能する。
2-4. メンタルヘルスのセルフケア
冬季は気分低下が生じやすく、意欲の減退が行動量低下を招く悪循環が起こりやすい。これを防ぐためには以下が有効である。
朝のルーティンを固定化する
小さな達成目標を設定する
身体感覚(温かさ、心拍、呼吸)に意識を向ける
これらは心理的安定性を高める行動療法的アプローチとして機能する。
3. 冬の筋トレの重要性
3-1. 冬季に筋トレが軽視されやすい理由
寒冷環境では身体活動への心理的抵抗が増し、運動量が減少しやすい。その結果、筋力低下、基礎代謝の低下、体温維持能力の低下が生じる可能性がある。
3-2. 筋肉は「熱を生む臓器」である
筋肉は身体の主要な熱産生器官であり、筋量の維持は冬季の冷え対策に直結する。筋トレによって筋量を維持・向上させることで、安静時代謝量が増加し、体温が安定しやすくなる。
3-3. 筋トレとメンタルヘルス
筋力トレーニングはセロトニンやドーパミンの分泌を促進し、抑うつ症状の軽減に寄与することが示されている。特に冬季うつの予防において、筋トレは有酸素運動と並ぶ有効な手段である。
3-4. 冬に適した筋トレ戦略
頻度:週2〜3回
種目:スクワット、プッシュアップ、ヒップヒンジなど大筋群中心
環境:室内、暖房を適切に使用
時間:20〜30分程度
短時間でも継続することが重要であり、「やり切れる強度設定」が冬季継続の鍵となる。
最後に
冬の不調は単一要因ではなく、環境・行動・生理・心理が複雑に絡み合った結果として生じる。したがって、日光、運動、栄養、睡眠、体温管理を体系的に統合した実践が求められる。特に筋トレを含む身体活動は、冷え対策、免疫維持、メンタル安定の三要素を同時に支える基盤であり、冬季健康管理の中核をなす。
