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コラム:ジャンクフードを止めらないあなたに...

ジャンクフードの多くは「超加工食品」に相当し、砂糖・塩分・脂質が高く添加物が多い点で健康リスクがある。
工業的に加工されたジャンクフードの代表格たち(Getty Images)
ジャンクフードとは

「ジャンクフード」という言葉は日常的に使われているが、学術的には一義的な定義がない。しかし、栄養学や公衆衛生の分野では「超加工食品(ultra-processed foods:UPF)」という概念が広く用いられており、これがジャンクフードの中核をなすと考えられている。超加工食品は工業的に大量生産され、砂糖、塩、油脂、添加物(乳化剤、保存料、香料など)が多く含まれ、原料としての「生鮮」や「最小限の加工食品」がほとんど残っていない製品群を指す。ポテトチップス、スナック菓子、清涼飲料水、インスタント麺、ファストフードのセットメニューなどは典型的な超加工食品に該当する。学術レビューや政策文書でもNOVA分類を使って超加工食品を説明することが多い。

身体に悪い理由(概観)

ジャンクフードが健康リスクを高める主要因は複数ある。まず、エネルギー密度が高く(少量で大量のカロリー)、過剰エネルギー摂取を招きやすい点がある。次に、飽和脂肪酸やトランス脂肪、過剰な食塩、添加糖が高濃度で含まれていることが多く、これらが高血圧、脂質異常、糖代謝異常、心血管疾患、2型糖尿病、肥満のリスクを高める。さらに、超加工食品には人工甘味料や乳化剤などの添加物が含まれ、腸内微生物叢(マイクロバイオーム)や代謝・炎症反応に悪影響を与える可能性が指摘されている。疫学研究はUPFの高摂取と心疾患、がん、早期死亡率の上昇と関連しているという結果を示しているが、因果の解明にはさらなる研究が必要である。WHOや各国の保健機関は砂糖・ナトリウム・飽和脂肪の過剰摂取を問題視しており、糖飲料課税や塩分削減の政策的介入を推奨している。

ハンバーガー大好き

ハンバーガーは手軽で満足感が高く、社会的にもポピュラーな選択肢だ。だが典型的なファストフードのハンバーガーは、加工肉(パティ)、高脂肪の調味料、精製小麦のバンズという構成になっているため、飽和脂肪・塩分・精製炭水化物が同時に摂取されやすい。これらは食後血糖の急上昇、血中トリグリセライドの増加、慢性的なインスリン抵抗性や内臓脂肪蓄積につながる危険性がある。さらにファストフードは通常サイドメニュー(フライドポテト)や砂糖入り飲料と一緒に消費されるため、1食での総エネルギーと糖質量が非常に高くなる傾向にある。長期的には肥満や2型糖尿病、心血管疾患のリスク増加につながる可能性がある。疫学的には加工肉の高摂取は一部のがん(大腸がん)リスク増加と関連づけられている。

フライドチキンは?

フライドチキンは高温の油で揚げる過程と衣の影響で、総エネルギーと脂質(特に飽和脂肪と場合によってはトランス脂肪)が高くなりやすい。揚げ物の頻繁な摂取は冠動脈疾患や心不全のリスクと関連するという報告がある。さらに、揚げる際に形成される一部の化学物質(例えばアクリルアミドや酸化した脂質の生成物)は長期的に見て健康に負荷をかける可能性がある。もちろん、自宅でオイル管理をしっかりして適切な頻度で食べる分にはリスクは低下するが、外食やチェーン店系の頻繁な摂取は注意が必要だ。

ピザとコーラはどうですか?

ピザは種類によって差が大きいが、チーズや加工ソーセージ、厚めの生地、そして追加でトッピングされる高脂質・高塩分の要素により、1食でのカロリー・脂質・塩分が高止まりしやすい。飲み物としてのコーラなど砂糖入り清涼飲料は、短時間で多量の「遊離糖」を摂取させるため、インスリン応答を乱し、肥満や2型糖尿病、虫歯を招く主要因となる。WHOは砂糖摂取の削減や糖飲料への課税を提言しており、実際に課税実施国では消費量の低下や糖分摂取の抑制が報告されている。清涼飲料はエネルギー密度が高いが満腹感を生みにくいため、追加のカロリー摂取につながりやすい。

スナック菓子は大丈夫?

ポテトチップスやスナック菓子は典型的な超加工食品であり、精製炭水化物、高脂質(しばしば過酸化しやすい油脂)、高塩分が含まれる。食感や味付け(うま味と塩味)が嗜好性を引き上げ、少量で満足しにくくエンドレスに食べ続けてしまう「過食」を誘発する設計になっていることが多い。さらにスナック菓子は保存性を高めるための添加物を用いることが多く、これらの物質と腸内環境や代謝の関連を示唆する研究も生まれている。長期的には肥満や高血圧、脂質異常のリスク増大が懸念される。

カップラーメンは?

カップラーメンは利便性が高く、世界的にも広く消費される食品だが、ナトリウム量が極めて高い点、加工油脂や調味料のうちの添加糖や粉末スープ内の脂質が問題となる。疫学的にはカップラーメンの頻回摂取は血圧上昇やメタボリックリスク、女性における血圧上昇との関連が示された研究がある。さらにインスタント麺を主体とした食事パターンは、野菜・果物・魚などの摂取不足につながりやすく、栄養の偏りを通じて長期的な健康リスクを高める。

俺たちのドーナツは?

ドーナツは高脂質・高糖質の典型例で、しばしば飽和脂肪や精製糖が多く含まれる。朝食代わりにドーナツと甘いコーヒーをとる習慣があると、1日の総エネルギー摂取が過剰になりやすい。加えて、揚げ後の酸化した油脂やトランス型脂肪酸の影響を受ける可能性があり、これが慢性的な心血管リスクの一因になることがある。とはいえ、適度な頻度や家庭での調理法を工夫することでリスクを下げることは可能だ。

身体に悪いものがうまい理由

ジャンクフードが「旨い」と感じられるのは偶然ではなく設計された結果だ。塩味、脂質、糖、うま味(グルタミン酸や核酸系調味料)、そして香りや食感が絶妙に組み合わされ、人間の報酬系(ドーパミン報酬回路)を強く刺激する。さらに、超加工食品は咀嚼負担が少なく速く食べられるため、短時間で大量に摂取しやすい。食品企業は消費者の嗜好を分析して満足度を最大化するフォーミュラを作り上げており、これが「やめられない」感覚を生む構造的原因になっている。行動経済学や神経科学の観点からも、繰り返し報酬を与える刺激は習慣化しやすいと示されている。

やめられない人のために

やめられない人のための実践的方法は個人レベルと環境レベルに分かれる。個人レベルでは、食事の「ルール化」(食事の時間を決める、間食を記録する、代替となる低加工食品をストックする)が有効だ。また、砂糖や塩を急に完全に断つのではなく段階的に減らすことで味覚適応を促すのが現実的だ。行動的介入としてはデフォルトの選択肢を変える(例:外食でサイドをサラダに替える、飲料を無糖にする)といった小さな意思決定を簡単にする工夫が効果的だ。環境レベルでは販売規制、学校給食の改善、砂糖飲料課税、広告規制などの政策介入が消費を下げる実績を示している。WHOは砂糖飲料対策や塩分削減を推奨しており、税やラベリング、マーケティング規制が政策ツールとして有効だとするエビデンスがある。

対策(個人・社会)

個人が取りうる対策は次の通りだ:①加工食品のラベル読みを習慣化し、添加糖・飽和脂肪・ナトリウムの量を確認する、②調理や弁当作りで全体の食事バランスを管理する、③清涼飲料を水や無糖茶に替える、④間食の量と頻度を決める。社会/政策的対策は次の通りだ:①砂糖入り飲料や高塩分食品に対する課税、②子ども向けマーケティングの制限、③学校や公的機関での健康的食事提供基準の強化、④食品産業との対話によるレシピ改良(塩分や糖分の段階的削減)である。実際に課税やラベリング、学校給食改革により消費パターンが変化した事例が複数の国で報告されている。

課題

ジャンクフード対策には多くの課題がある。第一に定義の不一致だ。超加工食品の概念は有用だが、政策に落とし込む際の法的定義が国や機関で異なるため、規制の設計が難しい。第二に経済的格差の問題だ。安価で利便性の高いジャンクフードは低所得層にとって現実的な選択肢になりやすく、食の健康格差を拡大する危険がある。第三に食品産業の利害で政策が難航することがある。さらに科学的課題として、観察疫学が示す関連の一部は交絡の可能性を完全に排除できておらず、長期間の無作為化介入試験が不足している点も挙げられる。最新の研究は強い関連を示すが、政策決定には慎重な総合評価が必要だ。

今後の展望

今後は次の方向が重要になる。第一に超加工食品に関する国際的に整合した定義作りと、その上でのモニタリング体制の整備が進むだろう。米国の行政機関や国際機関は定義整備と政策評価に注力しており、食品表示や課税、広告規制などのエビデンスに基づく介入が増えると予想される。第二に食品の製法改良(塩分・糖分の段階削減、代替原料の開発)とともに、消費者行動を変える行動経済学に基づく介入が普及する見込みだ。第三に、腸内環境や添加物の長期影響に関する基礎的研究や大規模コホート研究が進み、より具体的なメカニズム解明が期待される。最近の国際的な研究はUPF摂取と早期死亡や慢性疾患リスクの関連を示しており、各国は公衆衛生的対策を強化し始めている。

まとめ
  • ジャンクフードの多くは「超加工食品」に相当し、砂糖・塩分・脂質が高く添加物が多い点で健康リスクがある。

  • ハンバーガー、フライドチキン、ピザ、コーラ、スナック菓子、カップラーメン、ドーナツなどはそれぞれ異なる機序で心血管疾患、糖尿病、肥満、歯科疾患、がんリスクに寄与する可能性がある。

  • WHOや各国機関は砂糖飲料課税、塩分削減、広告規制などの政策を推奨しており、実施例では消費削減の効果が確認されている。

  • 対策は個人の行動(ラベル確認、代替選択)と社会的介入(政策・学校給食改革)の両輪で行う必要がある。

参考・出典
  • 超加工食品に関するレビュー(NOVA分類と政策的課題)。

  • WHO:砂糖入り飲料に関する勧告(2016)および塩分削減のファクトシート。

  • 日本:厚生労働省の食環境づくりに関する文書(2025)。

  • インスタント麺と血圧等の関連研究。

  • 揚げ物消費と心血管リスクに関する疫学研究。

  • 超加工食品と早期死亡・慢性疾患リスクに関する最近の国際研究と報道。

① ベジタリアン向けハンバーガー(高たんぱく・低脂質タイプ)

栄養バランス(1個あたり目安)

栄養素含有量備考
エネルギー約420 kcal通常ハンバーガー(600kcal前後)より約30%低い
たんぱく質約24 g豆腐・大豆ミート由来
脂質約12 gオリーブオイル・アボカド由来の不飽和脂肪酸中心
炭水化物約45 g全粒粉バンズ使用
食物繊維約6 g野菜・全粒粉による
ナトリウム(食塩相当量)約1.2 g通常の半分以下

レシピ

〈材料(1個分)〉

  • 全粒粉バンズ 1個(約80g)

  • 大豆ミート(ミンチタイプ) 80g

  • 木綿豆腐 50g(水切り)

  • 玉ねぎみじん切り 30g

  • 片栗粉 小さじ1

  • オリーブオイル 小さじ1

  • 無塩トマトソース 大さじ1

  • アボカドスライス 1/4個分

  • トマトスライス、レタス 適量

  • 塩 ひとつまみ(0.2g程度)

  • コショウ 少々

〈作り方〉

  1. 大豆ミートを熱湯で戻し、軽く水気を切る。

  2. 豆腐・玉ねぎ・片栗粉・塩・こしょうを加えて混ぜ、成形する。

  3. フライパンにオリーブオイルを熱し、両面を中火で焼く(3分ずつ程度)。

  4. トマトソースを加えて軽く絡め、バンズにレタス・トマト・アボカド・パティを挟む。

栄養的メリット

  • 飽和脂肪酸が約70%減少。心血管疾患リスク低下に寄与。

  • 食物繊維が2倍以上。血糖上昇抑制・腸内環境改善。

  • 大豆たんぱく質はLDLコレステロール低下効果があるとWHO報告(2019)。


② 低塩カップラーメン(家庭再現型・だし活用)

栄養バランス(1食分)

栄養素含有量備考
エネルギー約380 kcal通常品(450~500kcal)より控えめ
たんぱく質約14 gゆで卵・鶏むね肉・豆腐などを追加
脂質約9 gごま油少量使用
炭水化物約55 gノンフライ麺使用
食物繊維約5 g野菜追加
ナトリウム(食塩相当量)約1.8 g市販の半分以下(厚労省推奨は1食あたり3g未満)

レシピ

〈材料〉

  • ノンフライ中華麺 1玉

  • 鶏むね肉(皮なし) 50g

  • ゆで卵 1/2個

  • 小松菜 30g

  • 干ししいたけ 1枚

  • しょうがスライス 1枚

  • だし汁 300ml(昆布+かつお節)

  • しょうゆ 小さじ2

  • みりん 小さじ1

  • ごま油 数滴

〈作り方〉

  1. 干ししいたけを戻してだし汁に加え、香りを出す。

  2. しょうゆ・みりんで味を調整(塩分1.5〜2gを目安に)。

  3. 麺をゆで、具材(鶏むね肉・小松菜・卵)をトッピング。

  4. 最後にごま油を香り付け程度に垂らす。

栄養的メリット

  • だしのうま味」を利用することで、塩分を30〜50%減らしても満足感を保てる。

  • ノンフライ麺で脂質を半減。

  • 野菜ときのこでカリウム補給、ナトリウム排出を促進。


③ 家庭での揚げ物の低リスク調理法(酸化脂質・アクリルアミド対策)

栄養・科学的背景

  • 高温(180℃以上)での長時間加熱により脂質が酸化し、酸化ストレス源となる。

  • 澱粉質食品(ポテトなど)+高温で「アクリルアミド」が生成される。国際がん研究機関(IARC)はアクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある(Group 2A)」と分類している。

低リスク化のポイント

対策効果科学的根拠
揚げ油温度を170℃前後に保つ酸化物質生成を抑制日本油脂検査協会報告(2021)
1回の使用量を守り、油を再利用しない酸化脂質・過酸化物質蓄積防止厚労省「油脂類の衛生管理指針」
揚げ前に食材の水分を十分にふき取る発泡防止・油温安定化家庭科調理学(柴田書店)
レモン汁や酢を少量添加(衣に)酸性環境でアクリルアミド生成を抑制EFSA報告書(2015)
オリーブオイル・キャノーラ油など一価不飽和脂肪酸が多い油を選ぶ酸化安定性が高いFAO脂肪酸安定性データ(2018)

例:低脂質チキンカツ(1人分)

  • 鶏むね肉(皮なし)100g

  • パン粉(全粒粉タイプ)10g

  • 卵白 1個分

  • 小麦粉 小さじ2

  • オリーブオイル 大さじ1(揚げ焼き)

調理

  1. 鶏むね肉を薄くたたき、下味をつける(塩0.2g、こしょう少々)。

  2. 小麦粉→卵白→パン粉の順に衣をつける。

  3. フライパンにオリーブオイルを熱し、中火で両面3分ずつ揚げ焼きする。

→ 油吸収量が通常の半分以下(約5g減)。
→ 総エネルギー約280kcal、脂質10g、たんぱく質27g。


総括:健康的な“ジャンクフード風”改革

対象改善方法効果
ハンバーガー大豆ミート+全粒粉バンズ+アボカド飽和脂肪減・食物繊維増
カップ麺だし活用+ノンフライ麺+具材追加塩分・脂質減、栄養バランス改善
揚げ物温度管理+油選択+揚げ焼き酸化脂質・アクリルアミド減
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