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コラム:トランプとバイデンの政策、どっちが優れてる?

両政権案の「良い部分を折り合いながら」組む、あるいは中道・安定型を志向する政権が最も実用的かもしれない。
トランプ米大統領(左)とバイデン前大統領(AP通信)

バイデン政権の実績と引き継ぎ

バイデン政権(2021年~2025年)ではコロナウイルス後の回復、インフラ整備、気候変動対応、国内再構築を目指す「Bidenomics(バイデノミクス)」が掲げられてきた。

主要な実績例を挙げると:

  • GDP成長:バイデン政権下で実質GDPは順調に拡大。たとえば、インフラ投資や半導体振興、再生可能エネルギー投資などを通じて成長を支える政策を実施。

  • 雇用創出:政権期間中、総雇用の増加、特に建設業・製造業での雇用増加が報じられている。

  • 物価・インフレ:コロナ後の急速な物価上昇(インフレ)対応が課題となった。バイデン政権はFRBの金融引き締めを前提に対応を図るほか、インフレ抑制策も掲げた。

  • 財政・税制:高所得者や大企業への増税、税務執行強化、株式自社株買いに対するサーチャージ(追加課税)などを導入。

  • インフラ・産業振興:インフラ投資法、CHIPS法、気候投資など、大規模公共投資を展開。

  • エネルギー/環境政策:化石燃料から再生可能エネルギーへの転換促進、温室効果ガス抑制政策、電動車普及支援など。

こうした実績を引き継ぐ形で、トランプ第二次政権はある意味「転換」を目指すとされる。

トランプ第二次政権の公表構想・予想方向性

  • 関税・通商政策の強硬:輸入関税の拡大、特に中国などに対する高関税政策。たとえば、輸入品全体に対して10%、中国製品に対して最大60%程度の関税という構想も報じられている。

  • 減税・規制緩和の再強化:トランプ氏は企業・高所得者向けの優遇税制や規制撤廃を重視する傾向が強い。初期政権での法人税減税などを再び強化する構想がある。

  • エネルギー政策の逆行:化石燃料重視、環境規制の後退、再生可能エネルギー支援の縮小などを志向する可能性が高い。実際、トランプ政権では環境規制緩和、炭素規制撤廃、国内石油・ガス生産支援を重視した。

  • 行政命令・規制運用の積極利用:すでに発足後100日で署名した大統領令数が、初期政権時を大きく上回った。政策の予見性の低さ・変動が高い点が指摘されている。

  • 財政赤字・債務管理:関税収入を財源とする主張もある一方で、減税・支出拡大が重なれば財政赤字は拡大する懸念がある。

  • 国内産業保護・製造業回帰:保護主義志向が強く、輸入制限を通じて国内製造業や雇用を回帰させたい意図が示されている。

CEPRは「第二次トランプ政権の経済的帰結(The economic consequences of the second Trump administration)」と題する予備的評価を行っており、過度な不確実性と政策転換の強さがリスク要因であると指摘する。

さらに、トランプ時代に議論された通商制裁・関税拡大案は経済に対して年間GDPの数パーセント規模の抑制効果をもたらす可能性があるという予測もある。

ゆえに、現時点では「バイデンの中庸・拡張方向 vs トランプの強硬転換方向」という対立構図が見える。


経緯(過去から現在に至る流れ)

比較するためには、まず過去からの政権変遷とその影響を押さえておく必要がある。

トランプ初期政権~2020年

トランプ氏の初期政権(2017~2021年)では、法人税減税、規制緩和、関税政策、外交保護主義展開が特徴だった。これらは「サプライサイド重視/企業支援重視」の政策パラダイムであった。

  • 法人実効税率引き下げ、控除拡充 → 企業収益拡大支援

  • 規制撤廃(環境、金融、労働規制の緩和)

  • 輸入関税強化・通商交渉(NAFTA再交渉、対中国追加関税など)

  • インフラ投資促進(ただし、議会で一定の制約)

  • 移民規制強化、貿易制裁措置など、経済政策と国家主権/安全保障を結び付ける

この初期政権の下で、GDP、雇用、株価は概ね堅調であったという評価もある。ただし、コロナのショックが強く、最終年はパンデミックによって大きな落ち込みを余儀なくされた。

バイデン政権への転換

2020年末~2021年、バイデン政権が発足すると、コロナ対応・景気刺激、公的支出拡大が急務となった。以下の流れで政策実行が進んだ:

  1. 景気刺激・救済パッケージ
     就任直後に予算法案(約1.9兆ドル)を成立させ、失業保険拡充、直接給付、州・地方支援、ワクチン普及支援などを盛り込んだ。

  2. インフラ法案・公共投資
     上下両院調整法案を成立させ、道路・橋梁・鉄道・電力網・インターネット網などへの投資を進めた。

  3. 産業再建・半導体・エネルギー政策
     CHIPS法(半導体振興)、クリーンエネルギー投資、温暖化ガス削減支援、連邦政府のグリーン調達強化策を導入。

  4. 税制・財政改革
     高所得者・法人への増税、株主還元(自社株買い)への追加課税、IRS強化、租税回避対策強化などを実行。

  5. インフレ対応・金融引き締め
     物価上昇圧力が強まり、FRB(連邦準備制度)が利上げを実施。バイデン政権はこれを容認しつつ、インフレ抑制策も並行。

こうした流れを通じて、バイデン政権は「回復基調維持+グリーン/国土強靱化」への政策継続を図った。

トランプ第二次政権への転換予想

以下の流れをたどると予想される:

  • バイデン政権が進めたインフラ・気候政策などを見直し、支出抑制・規制撤廃方向へ舵を切る

  • 通商政策を激化させ、関税拡大や報復リスクを覚悟した構造変更を図る

  • 減税政策を強め、景気刺激を重視する方向に戻す

  • 行政運営を大統領令中心にシフトし、議会依存を減らす

  • 財政赤字リスク・債務増大を許容する方向に傾く可能性

CEPRは、第二次政権下では政策の不確実性が非常に大きく、景気の変動・企業投資の停滞・貿易摩擦リスクが拡大と予想している。

以上を踏まえて、両政権間の「現在の出発点」と「政策転換の流れ」を把握したうえで、以下に細部を比較する。


問題点(双方の政策上のリスク・懸念)

比較を行う際には、それぞれの政策に内在するリスク点を指摘しておく必要がある。

バイデン政権の問題点・限界
  1. 高い財政支出/債務増大リスク
    大規模公共投資や救済支出を行うため、連邦債務累積が増加。将来的な利払い負担が懸念される。

  2. インフレ圧力の抑え込み難度
    供給制約(サプライチェーンの乱れ)、需給の過熱、エネルギー価格上昇など要因が強く、インフレ制御に苦慮。

  3. 政策の実行遅延・議会調整困難
    上下両院・超党派調整により、法案成立や予算配分が遅れることが多い。

  4. 成長抑制リスク
    増税・規制強化が企業投資を抑制する可能性。特に大企業・多国籍企業の投資意欲減少。

  5. 地域格差・再分配課題
    インフラやクリーンエネルギー投資の恩恵が地域によって偏る、再分配政策が十分に機能しないリスク。

  6. グローバル摩擦・競争力低下懸念
    中国や他国との技術競争・貿易摩擦対応が十分ではないとの批判。

  7. 金融政策との調整困難
    FRBとの連携・タイミングが難しく、利上げ・利下げ判断が政策と齟齬を生む可能性。

トランプ第二次政権(予想される)問題点・リスク
  1. 政策不確実性・予測困難性
    トランプ氏は大統領令や突然の方針転換を多用する傾向があり、市場・企業に大きな不確実性を与えうる。CEPRはこれをリスク要因として指摘。 

  2. 通商摩擦・報復リスク
    高関税政策は貿易相手国からの報復関税を招く恐れがある。それが輸出産業・グローバル・サプライチェーンに打撃を与える。

  3. インフレ促進リスク
    関税負担は流通コストを押し上げ、消費者物価を上昇させる可能性がある。中間財輸入コスト増大も懸念。

  4. 財政赤字/債務拡大
    減税+支出拡大が重なれば、債務負荷がさらに増大。利払い・金利ショックリスクもある。

  5. 投資抑制・資金流出リスク
    政策の予測困難性や規制変更の頻度が高いため、企業・金融機関の投資抑制や海外流出リスクが増す。

  6. エネルギー・環境後退リスク
    環境規制の後退により、再生可能エネルギー産業や脱炭素投資が抑制される可能性。

  7. 所得再分配・不平等拡大
    減税政策が富裕層優遇型になりやすく、所得格差拡大を助長する可能性。

  8. 中長期成長への悪影響
    構造改革を軽視する方向に転じた場合、イノベーション・生産性向上のモメンタムが損なわれる可能性。

各側にこうした問題点があるため、単純に「どちらが良い/悪い」と断じるのではなく、バランスやトレードオフを慎重に検討する必要がある。


課題(政策運営上の克服すべきポイント)

両政権・両政策案を比較する上で、それぞれ乗り越えるべき課題を整理する。

バイデン政策の課題
  1. 効率性とコスト管理
    公共投資・支出拡大を行う際、コスト抑制・無駄排除を徹底しないと、過剰な支出拡大になりうる。

  2. インフラ投資の即効性と持続性の両立
    インフラ事業は中長期が前提であり、速やかな景気刺激効果と持続的成長効果を兼ね備えさせる必要。

  3. 規制と支援の最適バランス
    再生可能エネルギー促進、環境規制強化を進めつつ、企業・産業の競争力を損なわないよう制度設計。

  4. 財源の確保と債務管理
    増税・徴税強化で必要財源を確保しつつ、債務負担上昇に備える。

  5. 地方・中小企業への波及
    政策効果が大都市・大企業に偏らないよう、地方・中小企業・低所得層への支援・連携を強める。

  6. グローバル対応と競争力維持
    中国、EU、インドなどとの競争・貿易摩擦に備え、技術政策・同盟戦略を整備。

  7. 金融政策との調和
    FRBとの協調、金利政策と財政政策のズレを避けるために戦略的な調整が必要。

第二次トランプ政権が直面する課題(予想)
  1. 信頼性・透明性の確保
    予測困難性を低減し、政策の一貫性・信頼性を高める必要がある。特に企業・投資家が前提にできる、長期見通しを整備すること。

  2. 通商政策のバランス設計
    関税強化による保護主義的政策と報復リスクとのバランスを取る。輸出産業への打撃を抑える方針設計が不可欠。

  3. 物価抑制対策
    関税導入によるコスト上昇を緩和する施策(たとえば補助金、関税除外リスト設置など)をどう組むか。

  4. 債務リスクの抑制
    減税+支出拡大政策が債務拡大を招かぬよう、歳出抑制や収入増戦略を併設する必要。

  5. 投資誘導政策の明確化
    規制緩和だけでは企業が投資をためらうこともあり得るため、インセンティブ設計や予見性ある制度設計が求められる。

  6. 環境・エネルギー政策との調整
    環境後退政策が国際協調・国内世論に反発を招く可能性。再生可能エネルギー投資を完全に切り捨てない調整が有力。

  7. 長期成長戦略の強化
    短期的な景気刺激・減税政策に偏ると、中長期的な生産性上昇・技術革新への投資が弱くなるため、戦略的研究開発投資・教育投資などの補完が必要。

  8. 連邦制度・州対応の調整
    州政府・地方との調整が必要。特に環境規制、産業政策、交付金制度などで摩擦が生じやすい。

これらの課題をどう克服できるかが、各政権の政策実効性を左右する。


経済に与える影響(マクロ・ミクロの観点から)

ここからは、両政権政策が実際に経済に及ぼす可能性を、マクロ(GDP、物価、所得、雇用など)およびミクロ(企業投資、産業構造、国際競争など)視点から展望する。

GDP成長・実質成長率
  • バイデン政策下:公共投資・インフラ整備・産業振興を通じて潜在成長率を引き上げる効果が期待される。中期的には公共支出が成長を押し上げうる。ただし、増税や規制強化が成長抑制要因となるリスクもある。

  • トランプ第二期仮説:減税・規制緩和により短期的には企業投資や消費を刺激し、成長率を押し上げる可能性がある。一方で通商摩擦や関税コスト上昇、投資不確実性がマイナス要因になる可能性も大きい。

CEPRの評価では、トランプ第二期では政策の不透明性・転換ショックが成長鈍化要因になりうるという見方が提示されている。

例えば、関税政策が年間GDPの1–2%の抑制要因になる可能性も試算されている。

トランプ第二期発足後、米国の実質GDP成長率が第2四半期に3.8%に上方改訂されたが、これは一時要因(輸入縮小・消費拡大など)によるもので、持続力には議論がある。

結論として、バイデン政策はやや中長期重視、トランプ仮説は短期刺激重視、だがリスクも大きいという構図になる。

インフレ・物価動向
  • バイデン政権:インフレ発生の際は、金融引き締め + 供給面政策対応(物流改善、エネルギー供給強化など)を併用する必要があった。需給ギャップが縮小している段階では、過熱を抑制する政策運営が要求される。

  • トランプ第二期:関税導入は輸入価格を押し上げ、消費者物価上昇を誘発する可能性がある。特に中間財・資本財輸入が多い状況ではコストプッシュ型インフレ圧力が高まる。加えて、減税や支出拡大が需要を刺激すれば、需給過熱からインフレ促進リスクが顕在化。

したがって、トランプ第二期では「インフレ管理」が非常に難しい課題になる。特に、FRBとの協調・金利政策との整合性が試される。

雇用・失業率・所得分配
  • バイデン政策:公共投資や産業振興策によりインフラ・建設・製造業分野の雇用創出が期待される。また、中低所得者層への支援、最低賃金強化、労働組合強化などにより所得改善・再分配効果を狙ってきた。

  • トランプ第二期:減税・企業支援による投資拡大・雇用創出を目指す可能性。特に伝統製造業回帰・雇用創出を掲げる政策設計が想定される。ただし、関税摩擦や投資停滞リスクが雇用創出を抑える可能性もある。

所得分配の観点では、トランプ政策は富裕層・企業向け優遇色が強まる可能性が高く、所得格差拡大リスクもある。一方、バイデン政策は再分配・社会保障拡充を重視するため、格差抑制傾向がある。

企業投資・産業構造・イノベーション
  • バイデン政策:半導体、グリーンエネルギー、ハイテク分野に重点投資。CHIPS法などを通じて技術革新促進を図る。国内供給網強化(サプライチェーン再編)や「グリーン産業育成」を戦略目標とする。

  • トランプ第二期:規制緩和・減税でビジネス環境を軽くすることで民間投資を誘発したい意図。だが、関税・通商摩擦リスクや政策不確実性が、長期投資・研究開発投資にブレーキをかける可能性もある。

産業構造面ではトランプ政策は製造業・重化学・資源産業回帰を重視する傾向が強い可能性があるが、これが持続的な付加価値産業へ転換できるかどうかが鍵。

国際貿易・為替・グローバル影響
  • バイデン政策:自由貿易や多国間協調路線を重視する傾向が強い。技術協定、気候協調、国際協力を重視する。輸出促進よりも、サプライチェーン強靱化、国内基盤強化を重視。

  • トランプ第二期:保護主義・関税強化・対外交渉厳格化を志向。これにより通商摩擦増加、報復関税リスク、サプライチェーン再編コストなどが発生しやすい。為替変動・外資流入抑制リスクも高まる。

加えて、円安・ドル高の進展、外貨建て取引コスト増減など、国際資本フローへの影響も重視すべき。


株価・金融市場への影響

株価・金融市場は政策予想・期待感・リスク認識に敏感に反応する。以下に予想される影響を整理する。

バイデン政権時代の株価傾向(実績含む)
  • バイデン政権下でも株式市場は比較的堅調推移。実際、政権発足以降のS&P500等はプラス圏で推移してきたという評価も多い。

  • ただし、インフレ懸念や金利上昇局面では株式の押し下げ圧力がかかる。特定業種(グリーンエネルギー、半導体、再生可能エネルギー関連など)が政策支援を受け、相対優位となる可能性。

トランプ第二期への市場反応(予想)
  • 初期段階では「減税+規制緩和」期待が株式市場を上振れさせる可能性がある。特に金融・資源・素材・製造業セクターには追い風かもしれない。

  • しかし、通商政策の激化・関税拡大懸念・政策不確実性が強まると、投資家がリスクプレミアムを要求し、株式価値の割引要因となる可能性もある。

  • また、インフレ加速リスク・金利上昇圧力が強まれば、債券利回り上昇 → 資本コスト上昇 → 株価圧迫という逆風も生じる。

  • 為替変動リスク(ドル高・変動性拡大)や海外投資家流出・資本コスト上昇なども市場リスク要因となる。

  • 特に、政策変更のたびに予測誤差が生じ、市場の揺れ幅(ボラティリティ)が高まる可能性が高い。

  • 長期的には、安定的な規制環境・政策予見性・技術革新支援が整わなければ、成長期待低下、株価の天井圏圧迫も起こりうる。

実際、トランプ第二期が始まってからの四半期データで、米国GDP成長率がQ2に3.8%に上方改訂された。これは楽観的な市場材料となる可能性。

ただし、Q1には年率換算で-0.3%落ち込み、変動性の大きさを示している。


実例・データ比較:どちらの経済政策が優れているか?

ここでは可能な限り実証的データを引きながら比較検討し、「バイデン政策 vs トランプ第二期仮説」の有利不利を比較してみる。

GDP成長率比較

投資系メディアなどでは、トランプ初期政権 vs バイデン政権でのGDP成長率比較がしばしば行われている。たとえば、フォーブスは以下を指摘する:

トランプ政権の最初の3年間の年率実質GDP成長率はおおよそ2.7%(コロナを除く期間ベース)であった。一方、バイデン政権の初中期(コロナ回復期を除く)では、実質成長率は3.5%程度と試算されている。

ただしこれにはコロナ前後のベース効果などを調整する必要がある。全期間を単純比較すると、トランプ政権通算ではコロナの影響を受けて年率成長率が押し下げられたため、平均成長率はやや抑制される。

また、インベストペディアによると、歴代大統領別の平均年率GDP成長率では、オバマ・トランプ・バイデン期ともに2%台前半〜中盤で推移しており、大きな差異があるわけではないとする分析もある。

このことは、外部ショック要因(パンデミック、供給制約、地政学リスクなど)が成長率に強い影響を与えることを示唆しており、政策だけではなく環境対応力も重視される。

インフレ率・物価上昇比較

スマートアセットによる比較では:

  • トランプ初期政権(2017–2020 年)におけるインフレ平均率は約1.9%程度であった。

  • バイデン政権期間(特にパンデミック後)では、急激なインフレ上昇が見られ、平均インフレ率は5%前後と高くなる局面があった。

この差異は、パンデミック起因の需要抑制・供給制約ショックなど外部要因が大きく影響した可能性が高い。ただし、インフレ耐性・抑制方策の選択という観点では、バイデン政権は利上げ・規制調整・物流改善など対応政策を組んできた。一方、トランプ第二期では関税誘発型インフレへの対応が難しくなる構図が想定される。

株価パフォーマンス比較

フォーブスの分析では、株式市場について以下を述べている:

バイデン就任以降、S&P500の年率リターンは約12.6%と算出される。一方、トランプ政権期(初期期)は約16.3%の年率リターンを記録したとする試算もある。

ただし、これらは時期・ベース・市場循環要因を強く受けるものであり、単純比較は注意が必要である。たとえば、トランプ初期期は好景気局面・金融緩和期が含まれており、バイデン期は金利上昇期・インフレ収束期を含む。

また、証券市場は政策の予想や期待に先行反応するため、政策発表・法案通過期待・サプライズ要因などが株価変動を誘発する。したがって、トランプ第二期への期待・懸念が市場センチメントに強く影響する可能性が高い。

通商・関税コスト試算例

たとえば、ファイナンシャルタイムズや報道で次のような試算がなされている:

  • トランプ構想の関税案をすべて導入した場合、年間5000億ドル規模のコスト(国内購買者負担、消費者負担)になる可能性があるとの予測。

  • 既存関税+追加関税を合算すると、GDPの1.8%前後が圧迫を受けるという見方もある(ペーターソン研究所分析)。

こうした関税コストが実際に企業の原材料コスト上昇、利潤圧縮、価格転嫁問題を引き起こすと予想される。

不確実性・ボラティリティ試算

CEPRはトランプ第二期において大統領令の乱発など政策不確実性を重視しており、企業・市場がリスクプレミアムを引き上げざるを得ない可能性を指摘している。

実際、トランプ第二期発足直後には、大統領令数が非常に多く、政策の「振れ幅」が拡大しているとの報道もある。

これにより、企業は長期投資を控えたり、キャッシュ保有を重視したりという行動をとる可能性が高まる。


総合評価・展望:どちらの政策が優れているか?

上記の比較を踏まえて、両者の有利不利を整理する。

強み比較まとめ
項目バイデン政策(実績基準)第二次トランプ仮説政策
成長支援公共投資・産業振興・技術投資で中長期成長基盤強化減税・規制緩和で短期刺激効果強め
インフラ・産業基盤強化インフラ法案・半導体・グリーン投資で構造強化規制撤廃による生産性改善期待
所得再分配・格差是正再分配・社会保障強化で底支え志向富裕層優遇傾向強く、格差拡大リスク
政策安定性比較的議会調整型で予見性はやや高め大統領令中心・変動性高く予測困難性大
インフレコントロール金融引き締めとの協調が可能関税・需要刺激の組み合わせでインフレ圧力大
通商/外交政策多国間協調・自由貿易・技術協調重視保護主義・関税強化・通商摩擦リスク高
環境・エネルギー政策クリーン政策・再生可能エネルギー支援強い環境規制後退リスク、将来的評価リスク高

このように、バイデン政策は構造強化・安定性重視型、トランプ仮説政策は短期刺激型・リスクテイク型という対照構図になる。

見通し・予測
  • トランプ第二期は、政策ショック・通商摩擦・不確実性を抱える中で、短期的には景気刺激・マーケット反応の上昇も見込まれる。ただし持続性が弱く、コスト増・インフレ圧力・投資抑制リスクが顕在化すれば、成長率低下や市場逆風に転じる可能性がある。

  • バイデン政策は中長期視点で構造強化を図る性質が強く、成長鈍化局面や金利上昇局面にも比較的耐性を持たせる設計が可能。ただし増税・支出拡大による財政リスク、規制強化による投資抑制リスクを慎重にマネジメントする必要がある。

  • 実際には、政策の「バランス感覚」が勝負になる。即効性を求めすぎてインフレやリスクを拡大するか、安定性重視で勢いを欠くか。そのトレードオフをどう設計できるかが鍵。

  • 企業・投資家は政策の予測性・透明性を重視するため、トランプ仮説路線が予測困難性を強めるなら、慎重姿勢を強める可能性がある。一方で、「減税・規制緩和」の見込みが強い政策発表には好反応を示す部分もある。

  • 通商摩擦や関税反撃リスクも、国際分業・サプライチェーン重視時代には重い逆風となる可能性。特に、輸出産業や中間財を輸入に依存する企業では脆弱性が高まる。

  • また、グリーン政策・環境対応を後退させる政策を取るなら、国際資本・投資家のESG(環境・社会・ガバナンス)指向との対立もあり得る。

したがって、「どちらが優れているか」は一概には言えないが、現時点での予測としては次のように整理できそうだ:

  • 持続性と安定性を重視するなら、バイデン政策のほうがリスク耐性が高い可能性がある。

  • 短期刺激・成長ブーストを重視するなら、トランプ政策が有利に出る可能性もあるが、コスト・リスクとのバランスに苦しむ可能性も高い。

  • 株価・金融市場は初期にはトランプ第二期期待に沸く可能性があるが、関税リスク・不確実性が顕在化すれば反落リスクも無視できない。

  • 通商・国際リスクを重く見るなら、バイデン路線が相対的に堅牢性を持つ可能性が高い。

将来予測には不確実性が伴うが、政策の方向性・設計の巧拙次第で結果は大きく変わる。両政権案の「良い部分を折り合いながら」組む、あるいは中道・安定型を志向する政権が最も実用的かもしれない。

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