コラム:トランプ関税パート2発出、知っておくべきこと
2026年2月20日以降のトランプ政権の関税政策は、司法、立法、行政が複雑に絡む変動局面にある。
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現状(2026年2月時点)
2026年2月20日、米連邦最高裁がトランプ政権の関税措置(いわゆる「相互関税」等)を違法と判断した。これにより、「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠として実施されていた広範な関税措置が失効した。即座に、トランプ大統領は1974年通商法第122条を根拠に、世界各国からの輸入品に対して一律の追加関税を発動すると表明した。この新たな関税は、発効日を2026年2月24日午前0時1分(米東部時間)と定め、当初10%であったが、翌21日に15%へ引き上げられた。その有効期間は150日間とされた。
この政策混乱は国際市場、二国間貿易協定、世界経済全体に強い衝撃を与えている。
連邦最高裁による違憲判決(2026年2月20日)
2026年2月20日、米連邦最高裁は多数意見(6対3)で、「IEEPAに基づく相互関税は違法」と判断した。同裁はIEEPAが本来、国家安全保障や金融制裁、資産凍結等の緊急措置を想定しており、平時における一律関税付与権限を認めていないと解釈した。この判決は、トランプ政権が強引にIEEPAを「関税付与の法的根拠」として利用してきた点を否定したものだった。
同日、関税措置は収集停止となり、トランプ政権は迅速な対応を迫られた。
トランプ大統領の即座の報復的措置
最高裁判決を受け、トランプ大統領は即座に代替措置として通商法122条に基づく関税措置を宣布した。当初は10%の追加関税であったが、22日には15%へ引き上げると表明した。適用開始は2月24日午前0時1分(米東部時間)であり、税率は世界一律である。これにより米国の輸入品価格は上昇圧力を受けることになる。
2026年2月20日の激震:構造の変化
この一連の動きは、米国の対外経済政策の「根本構造」を揺るがすものとなった。
大統領の権限の限界
従来のIEEPAに基づく広範な関税付与は、行政権限の範囲として越権的であるとの司法判断が示された。法的基盤のシフト
米国は今後、IEEPAではなく、通商法122条、301条、232条等の商務関連法規を組み合わせて関税政策を進める必要が出てきた。国際法・通商協定との摩擦
この急激な税率変更は、多国間協定や二国間交渉の安定性に影響を及ぼすリスクをはらむ。
主要な法的根拠(国際緊急経済権限法(IEEPA))
国際緊急経済権限法(IEEPA)は1977年制定の法律で、米国大統領に緊急時の経済措置権限を付与するものである。金融制裁、資産凍結、輸出入規制等を通じて、国家安全保障にかかわる経済措置を可能にする法律として位置づけられている。しかし、広義の関税付与権限を認めるものではなく、平時における関税措置を法的根拠とするには不十分であるとの最高裁の判断が確定した。
関税の性質(国別の「相互関税」)
「相互関税」とは、本来は特定の国が米国に不当な貿易慣行を行った場合、対抗措置として追加関税を課す措置である。トランプ政権は、IEEPAを根拠としてこれを世界各国に課してきたが、今回の判決で無効となった。なお、今回発動された通商法122条による関税は「世界一律」であり、特定国を狙い撃ちする性質ではない。
基本税率
当初、トランプ政権は通商法122条に基づく一律10%の追加関税を発動すると表明したが、翌21日には15%への引き上げをSNSで公表した。この税率は世界各国からの輸入品すべてに適用される基本税率である。
有効期間(無期限)
通商法122条による措置は、原則として150日間の暫定措置として位置づけられている。要するに、米議会が延長しない限り150日後に終了するという制約がある。
検証:なぜ「通商法122条」なのか
通商法122条は1974年制定の法律であり、米国が「甚大な国際収支上の問題」に直面した場合に輸入制限措置を講じる権限を付与する。トランプ政権は米国の大規模な貿易赤字を根拠にこれを発動したが、専門家からは「国際収支赤字があるとの具体的根拠が不十分」など違法性の指摘も出ている。
判決への回避策
トランプ政権内部では、最高裁判決への法的回避策として通商法122条の活用が検討された。上智大学教授の分析でも、同条は大統領行使が比較的可能な法律として位置づけられているとの指摘がある。他にも、通商法(301条、232条)を並行使用する案が検討されている。
10%から15%への急変(2026年2月21日)
トランプ大統領は当初10%で始めた通商法122条に基づく世界一律関税を、翌21日にSNSで15%に引き上げると公表した。税率変更に関する詳細な発効時期は明示されなかったが、実質的には15%が適用される見込みとなっている。
発効日(米東部時間2026年2月24日午前0時1分)
新関税は2026年2月24日午前0時1分(米東部時間)に施行された。同日午前以降、旧来のIEEPAに基づく関税は停止され、122条に基づく新たな15%の関税が課されている。
分析:日本および世界経済への影響
日本への影響:実質的な負担増
一律15%の追加関税は、日本からの輸入品にも適用される。これにより、日本企業の米国向け輸出コストが増加し、実質的な負担増が懸念される。
二重課税の懸念
既存の二国間合意に基づく税率と122条による追加税が重複し、事実上の二重課税を招く可能性があるとの指摘がある。
供給網(サプライチェーン)の混乱
関税率の急激な変化は、サプライチェーンの混乱をもたらす。企業は輸送計画や価格設定を再検討する必要があり、短期的な混乱が予想される。
除外品目の限定
一部種類の重要鉱産品や医薬品、食品などは関税の対象外としている(ただし詳細は未確定)。
デ・ミニミス特権の廃止
従来の関税制度で可能であった少額取引の免税(デ・ミニミス)は、今回の一律税率には適用されない可能性がある。
トランプ関税パート2
ベースレイヤー(一律15%)
一律15%が基盤となり、全輸入品に課される。
戦略レイヤー(301/232)
通商法301条(不公正貿易対応)および232条(安全保障関連)による追加措置を併用する案が政権内部で検討されている。
交渉レイヤー(相互主義)
対象国との交渉状況に応じて、関税緩和や個別措置を検討する可能性がある。
今後の展望
米国の関税政策は、短期的な法的制約と国際協定とのバランスを取りながら展開される可能性が高い。米議会の動向、国際機関の対応、貿易相手国の報復関税などが今後の焦点となる。
まとめ
2026年2月20日以降のトランプ政権の関税政策は、司法、立法、行政が複雑に絡む変動局面にある。最高裁判決によるIEEPA関税の失効は、米国の経済政策に法的制約が存在することを鮮明にし、通商法122条による暫定措置への移行は新たな不確実性を生んだ。世界経済、日本経済への影響は短期的な混乱を伴いながら、中長期的な交渉と法整備の行方に左右される。
参考・引用リスト
- Reuters: Trump tariffs & Supreme Court (2026年2月20日)
- Reuters: Reaction & new 15% tariff (2026年2月23日)
- AP News: Latest tariff announcement (2026年2月23日)
- The Guardian: market turmoil and response (2026年2月23日)
- Americas Quarterly: Latin America reaction (2026年2月23日)
- Bruegel: EU strategy after tariff ruling (2026年2月23日)
- Mainichi: legal reaction (2026年2月21日)
- FNN: Trump new tariff 15% and timing
- Asahi Japan article on 15% tariff from Feb 24
- TV Asahi news on legal & policy reactions
- Sponichi article on tariff instability
- FNN trade analysis article
- Analysis of Section 122 legal concerns
- GlobalTradeAlert Section 122 tariff regime analysis
通商政策の最大の転換点:法体系の抜本的再構築
1. 「最大の転換点」とは何か
2026年2月20日以降の一連の動きは、単なる関税レートの変更ではなく、米国通商政策の根本構造を変える断絶を生む出来事である。従来、トランプ政権は国際緊急経済権限法(IEEPA)を法的根拠として貿易交渉や関税付与を強行し、広範な対象を“相互関税”と称して含めていた。しかし、連邦最高裁がこれを違法と判示したことで、従来の“超法規的・大統領権限重視”の通商政策は行き詰まった。 そのため大統領権限は、より伝統的な1974年通商法122条に“強制的に回帰した。この回帰自体が、米国通商政策の方向性を変える“最大の転換点”である。
2. 法的根拠と構造の書き換え
従来のトランプ政権は、IEEPAを商務行為そのものの法源に拡大解釈し、「広範な緊急関税措置を平時でも可能」と主張してきた。しかし最高裁判決でIEEPA条文の平時関税付与権限の適用が否定されたことで、米国通商政策は平時であれば通商法本来の機能に従うしかなくなった。 1980年代以降も301条(不公正貿易措置)、232条(安全保障)、122条(国際収支改善措置)といった具体的条項は存在したが、その活用は限定的だった。今回122条が初めて大規模な「世界一律関税」の法基盤として用いられ、政権の通商権限の根本構造が法律に強く縛られる形に“書き換えられた”。
3. 通商法122条をめぐる構造的特徴
暫定措置の立法的制約
122条は、大統領に150日まで輸入制限措置(関税含む)を課す権限を与えるのみで、延長には議会承認が必要となる制約を置く。一般的な輸入制限措置としての位置づけ
「国際収支の甚大な不均衡」を理由に輸入制限を認める規定であり、もはや単なる安全保障措置や緊急措置ではなく、戦略的経済政策として再利用される法的構造転換を意味する。
ドル不信と為替市場の反応:ドル安・円高の背景と構造
1. ドル不信の形成要因
2025年以降、トランプ政権の“予測不能な貿易政策”は、財政・通商政策の不透明性を高め、市場のリスク評価を変えつつある。これにより、ドルの“安全資産”としての地位への信頼が揺らぎつつあるとの動きが確認されている。複数の金融機関が、世界的な投資家のセンチメントとして「ドルの安全資産性が低下している」と指摘している。
2. ドル安の実態
複数の市場報告によると、2025年~2026年にかけて米ドルは対主要通貨で実質的に価値を落としており、ドル指数は2025年に約10%下落したとされる(ING報告)。これには、トランプ関税政策による貿易不確実性が影響しているとの分析がある。
また、欧米の市場予想では、今回の関税政策による米ドルへのネガティブセンチメントが短期的にはドル圧力を弱める要因として作用するとの見方も存在する。
3. ドル安と円高の関係
ドル安不信は、合せて「安全通貨」とみなされる円やスイス・フランへの資金シフトを誘発し得る。一部市場観測では、ドル円レートが一時的に153円台付近で推移し、円高圧力が確認される局面も観測されている(FX市場報道)。
4. 為替と通商政策の相互作用
従来の理論では、関税政策は輸入需要と貿易収支に影響し、結果として通貨価値を支える可能性がある。しかし、現実には米国の政策不確実性が「金融市場の心理的リスク」として作用し、投資家がドルから他通貨・資産へ移行する動き(いわゆるアメリカ売りトレード)が観測される。これは、単なる関税レベルの影響だけではなく、政治的・政策的信頼性そのものへの疑問が為替に影響していることを示唆している。
自動車産業へのコスト試算:関税・為替を織り込んだ影響
1. 直接的な関税負担
日本の自動車産業は米国市場への輸出が重要であり、関税率の上昇は直接的なコスト増加につながる。2025年の報道等の集計では、追加関税による自動車7社の利益圧迫額は年間で約2兆7000億円と試算され、自動車関税が引き上げられた場合の影響が明確に示された。
この数字は「25%追加税を含めた場合」の試算であり、今回の通商法122条による一律15%追加関税はこれより低率ではあるが、対象が全輸入品であることから、利益圧迫や価格転嫁の影響は依然として大きく残る。
2. 為替効果の重層的影響
為替による円高は、輸出企業にとって単純に利益率を削減する。例えば、1ドル=139円の円高圧力が進行した局面では、日本企業の輸出収益ベースでの円換算額が目減りし、利益圧迫が増幅するとの観測があった。
3. 半導体供給網への影響
半導体製造装置や部品、原材料の多くはグローバルな調達網で形成されている。関税が上昇し、15%の追加コストが米国向け輸出の段階で発生することで、供給網全体のコストが増加する。例えば、半導体関連機器輸出で1,000億円規模の輸出がある場合、関税負担だけで約150億円の上乗せコストとなる可能性がある。これにドル安・円高が加わると、為替換算上でも利益が圧迫される。
4. 供給網全体の影響試算(事例仮定)
自動車や半導体の場合、輸入部品・原材料価格の15%関税上乗せ+為替変動による実質的な円高が同時に進行すると、総合的なコスト増は輸出単価ベースで20~30%超の負担増につながる可能性がある。これは単なる関税増加だけではなく、価格転嫁の難易度、競争力低下リスク、投資計画見直しなどの二次的コストを含めた試算である。
追記まとめ
今回の通商政策動向は、単なる関税率変更ではなく、米国通商法体系の根本的な枠組み変更と世界経済の信認構造そのものを揺さぶる転換点である。ドル不信が為替へ波及し、実質的なドル安・円高が進行する可能性がある中で、日本の主要輸出産業は関税負担と為替影響を同時に被る複合的リスクにさらされている。企業はこのような複合コスト構造を見据え、価格戦略の見直し、供給網再構築、為替リスクヘッジ強化などの総合対応策を迫られている。
参考・引用(追記分)
- 米ドル失われる安全資産の一部:INGレポート (Reuters)
- トランプ関税による株価・ドル反応(FT / Guardian)
- ドル円相場の変動とトランプ関税警戒(IG証券)
- 日経平均とドル安懸念(IG証券週報)
- Yale Budget Lab 為替と貿易関係の研究レポート
- 野村證券尾畑秀一 為替分析(Nomuraレポ)
- Market FX Weekly(MUFG GMR)
- 実証研究「Sell America」現象(Wikipedia関連記事)
